文献情報
文献番号
201321015A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的な動物モデルや培養技術の開発を通じたHBV排除への創薬研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 瀬谷司(北海道大学 大学院医学系研究科)
- 加藤博己(京都大学 ウイルス研究所分子遺伝学分野)
- 立野知世(向谷知世)(株式会社フェニックスバイオ)
- 山本卓(広島大学 大学院理学研究科)
- 田原栄俊(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 )
- 丸澤宏之(京都大学 大学院医学研究科)
- Aly Hussein Hassan (アリ フセイン ハッサン) (国立感染症研究所ウイルス第二部)
- 坂口剛正(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
- 阿部弘美(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
148,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は、ヒトの免疫細胞とヒトの肝細胞をもちいてB型肝炎のマウスモデルおよびヒト肝細胞によるHBVの完全なライフサイクルを再現する継代培養系を構築した。これによりHBVの持続感染メカニズムと免疫反応に関する広範な研究が可能となった。昨年HBVのエントリーレセプターとしてNTCPが見出されたことによりNTCP安定発現株を用いて新規のin vitro HBV感染培養系も構築された。本研究ではこれらのモデル動物、細胞培養系を用いて肝炎モデルの改良と感染肝細胞の排除に関する研究、HBV感染マウスと新規培養系を用いた創薬研究、cccDNAの排除、転写制御に関する研究を行った。
研究方法
従来のuPA/SCIDマウス由来のヒト肝細胞キメラマウスをNOG-scid, NOD-scidを背景としたマウスを用いてヒト肝細胞、ヒト免疫細胞を移植し慢性B型肝炎モデルを作製し、ヒトのB型肝炎発症を再現するモデルを作製した。また、移植するヒト肝細胞をヒトiPS細胞から誘導した成熟肝細胞も用いてヒト肝細胞キメラマウスを作製しHBV感染モデルとして利用可能か検討する。また、Cre-loxPシステムを利用した肝細胞特異的にHBs抗原蛋白を発現しヒトの肝炎を模倣するモデルマウスを作製する。さらにHBVを産生するトランスジェニックマウスの作製を行う。これらのモデルを用いて肝炎の発症機序、HBV感染細胞内での自然免疫応答、HBV粒子形成機構について研究を行った。
結果と考察
NOG-scidを背景としたマウスを用いてヒト肝細胞、ヒト免疫細胞を移植し慢性B型肝炎モデルを作製した。NOG/SCIDマウス由来のヒト肝細胞キメラマウスは従来のuPA/SCIDマウス由来のヒト肝細胞キメラマウスに比べるとヒトアルブミンの産生量はuPA/SCIDの方が高いが、NOG/SCIDマウス由来のヒト肝細胞キメラマウスの方がヒト肝細胞への置換率が低くてもHBV感染効率が良好で、死亡率も低かった(Kosaka et al., BBRC, 2013)。(阿部班員、茶山班長)。また、uPA/SCIDマウスを用いたヒト肝細胞キメラマウスでは長期飼育を行った場合、uPA遺伝子の欠失が起こることが知られていた。HBV感染による慢性肝炎モデルの作製に向けてuPA遺伝子の欠失が起こらないシステムにするためcDNA-uPA/SCIDマウスを作製し、ヒト肝細胞を移植してヒト肝細胞キメラマウスを作製したところ20週間の長期飼育が可能となった(立野班員)。このHBV感染ヒト肝細胞キメラマウスの長期飼育によりHBV感染させなかったヒト肝細胞キメラマウスHBV感染マウスに比較してアポトーシス関連の遺伝子の発現の上昇、細胞増殖に関連する遺伝子の発現低下、細胞の肥大化が認められた(立野班員)。
宿主側の解析では、マウスへHBV 発現プラスミドをhydrodynamics法により導入した実験系でISG20がHBVの複製を阻害していることを証明した。ISG20の発現誘導機序としては、HBV感染を感知した分子が細胞質内のIPS-1, TICAM-1の両者を介してIRF3を活性化しtype Ⅰ インターフェロンを誘導させIFNARを介してISG20の発現が誘導されることが証明された(瀬谷班員)。また、①HBV感染からの肝臓癌への進行症例、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例の3グループでそれぞれ非癌部、癌部組織からmicroRNAを調製し次世代シーケンサーライフテクノロジーズIon PGMを用いた網羅的発現解析を行った結果、非癌部と比較して発現が上昇しているmicroRNAとして①HBV感染からの肝臓癌への進行症例では41個、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例では10個、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例では29個、非癌部と比較して発現が減少しているmicroRNAとして①HBV感染からの肝臓癌への進行症例では21個、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例では11個、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例では23個のmicroRNAが認められ3グループに共通して非癌部と比較して発現が上昇するmicroRNAとしてmiR-221を含め3個が同定された(田原班員)。
宿主側の解析では、マウスへHBV 発現プラスミドをhydrodynamics法により導入した実験系でISG20がHBVの複製を阻害していることを証明した。ISG20の発現誘導機序としては、HBV感染を感知した分子が細胞質内のIPS-1, TICAM-1の両者を介してIRF3を活性化しtype Ⅰ インターフェロンを誘導させIFNARを介してISG20の発現が誘導されることが証明された(瀬谷班員)。また、①HBV感染からの肝臓癌への進行症例、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例の3グループでそれぞれ非癌部、癌部組織からmicroRNAを調製し次世代シーケンサーライフテクノロジーズIon PGMを用いた網羅的発現解析を行った結果、非癌部と比較して発現が上昇しているmicroRNAとして①HBV感染からの肝臓癌への進行症例では41個、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例では10個、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例では29個、非癌部と比較して発現が減少しているmicroRNAとして①HBV感染からの肝臓癌への進行症例では21個、②HCV感染からの肝臓癌への進行症例では11個、③ウイルス感染なしで肝臓癌への進行症例では23個のmicroRNAが認められ3グループに共通して非癌部と比較して発現が上昇するmicroRNAとしてmiR-221を含め3個が同定された(田原班員)。
結論
肝炎モデルの改良、HBV Tgマウス、iPS細胞由来肝細胞移植マウス、cDNA-uPA/SCIDマウスをホストとしたヒト肝細胞キメラマウス、in vitro HBV感染培養系の構築が進み、HBVの各ライフサイクルを標的とした創薬研究が可能となった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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