B型肝癌における自然免疫の機能解明とその制御による発癌抑止法開発

文献情報

文献番号
201321007A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝癌における自然免疫の機能解明とその制御による発癌抑止法開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 直也(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 横須賀 收(千葉大学 大学院 医学研究院 消化器・腎臓内科学)
  • 小池 和彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 松田 浩一(東京大学 医科学研究所)
  • 地主 将久(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス肝炎の終末像は肝癌であり、肝癌は多くの尊い命を奪っている。その原因の2割がB型肝炎ウイルス(HBV)であり、HBVによる肝発癌抑止は肝臓病学の最重要課題である。我々はゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、C型肝炎において、NK細胞の標的分子であるMICAの遺伝子多型が肝発癌と関連していることを明らかにした(Nat Genet 2011)。MICA遺伝子多型はB型肝癌とも関連していた。HBV感染によりMICA発現が誘導されるが、MICA遺伝子多型によりMICA発現量が異なり、その差が肝発癌リスクを規定している。このことはHBV感染肝細胞とNK細胞を中心とした自然免疫系との攻防がB型肝炎における肝発癌に深く関わっていることを示す。そこで、HBVによる発癌における自然免疫系の役割を明らかにし、自然免疫系の制御、特にMICAの発現調節による肝発癌抑止法開発を目的とする。
研究方法
1. MICA発現調節機構の解明
MICAプロモーターの機能的SNPを探索した。また、microRNA(miRNA)、転写因子によるMICA発現制御を検討した。
2. MICAの発現調節薬剤の探索
米国食品医薬品局承認薬剤を用いた。
3. 新規B型肝癌関連自然免疫分子の探索
B型肝癌約200例のゲノムワイドタイピングを進めている。
4. 肝癌感受性遺伝子MICAのmiRNAによる発現制御
miRNAによるMICA発現調節、MICAのレセプターであるNKG2Dとの結合を検討した。また、miRNAの肝細胞へのデリバリーを検討した。また、初代培養ヒト肝細胞のHBV感染によるmiRNA発現変化を解析した。
5. 肝発癌における自然免疫関与の解析
NF-B活性化に対するHBVの影響、NF-B活性化がHBVに及ぼす影響を検討した。また、HBVがmiRNA発現に及ぼす影響を検討した。
6. B型肝癌におけるNKG2D依存免疫システムのインパクトについての検討
腫瘍マクロファージのNKG2Dを介した免疫機能を検討した。また、B型肝癌モデルマウス、NKG2D KOマウスでのNKG2D免疫システムが発癌や抗腫瘍応答に与える影響を検討した。
結果と考察
1. GWASで同定されたSNPと強い連鎖にあるSNPのアレル特異的SP-1結合が示され、機能的SNPであることを明らかにした。MICAの発現調節にmiRNAを介した制御の関与が示された。
2.複数のMICA発現増強剤を同定した。最強だったものはHDAC阻害剤で他癌腫に使用されており早期の肝癌治療への応用が期待される。また、本スクリーニング系によるハイスループットスクリーニングが視野に入った。
3.新規B型肝癌感受性遺伝子同定を進めている。
4. MICAの発現調節にはmiRNAによるmRNAの安定性調節もしくは蛋白翻訳効率の調節が重要だった。MICAはmiR-93、 -106bにより発現が制御されていた。また、MICA発現量に応じてNKG2D結合量が変化した。さらに、ヒト肝細胞においてHBV感染に伴MICA発現調節に関与するmiRNAの発現が変化しMICA発現量も変化した。また、bionanoparticle封入によりmiRNAを肝細胞にデリバリー可能であった。
5. HBVはNF-Bを活性化し、この効果は炎症性サイトカインで増強された。また、IFNα/TNFは肝細胞でRIPK2発現を増加、肝細胞内HBV DNAを低下させた。また、慢性HBV持続感染でもmiRNAが宿主免疫反応を修飾していた。
6. NKG2D陽性マクロファージによる新たな抗腫瘍免疫制御機構の存在を明らかにした。とくに肝癌において有効とされる白金系抗癌剤やIFNの治療効果を高める可能性が示唆された。
結論
・MICA SNPによるMICA発現の違いはプロモーター上のSNPによる転写活性の相違により規定されていた。
・MICAの発現調節にmiRNAを介した制御の関与が示された。
・強力なMICA発現誘導効果を有する薬剤を見出した。
・新規B型肝癌感受性遺伝子同定を進めている。
・MICA蛋白発現量はmiRNAおよびそのanti-senseの発現により調節可能であった。さらにbionanoparticleを用いてmiRNAを肝細胞特異的に導入することが出来た。
・HBVはMICAを標的とするmiR-93の発現量を変化させMICA発現量を変化させた。
・RIPK2はHBVの増殖複製に関与し抗HBV薬の標的となりうる。
・HBVによりmiRNAの発現が変化しHBV感染に対する自然免疫が変化した。
・NKG2D陽性マクロファージの腫瘍監視メカニズムを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201321007Z