肝星細胞脱活性化剤開発による肝硬変の肝機能改善と肝発がん予防

文献情報

文献番号
201320037A
報告書区分
総括
研究課題名
肝星細胞脱活性化剤開発による肝硬変の肝機能改善と肝発がん予防
課題番号
H25-肝炎-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河田 則文(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 一雄(大阪市立大学 大学院医学研究科 機能細胞形態学)
  • 村上 善基(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 )
  • 松原 勤(大阪市立大学 大学院医学研究科 機能細胞形態学)
  • 祝迫 惠子(京都大学 大学院医学研究科 標的治療腫瘍学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 祝迫 惠子 大阪市立大学 大学院医学研究科 機能細胞形態学( 平成25年9月17日~26年3月31日)→(平成26年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではHSCの脱活性化とMFB制御により脱線維化を誘導し残存成熟肝細胞を再生させて肝機能を回復させ、発がん抑制に繋がる治療法の開発を目指す。申請者は研究過程でミオグロビンと酷似し局所の酸素センサーとして機能するCygbを発見した。Cygb欠損マウスを作製して解析したところ、炎症・線維化反応が増強し易発がん性を示し、逆にCygb過剰発現はHSC活性化を抑制する。これらの事実はCygbが肝保護的グロビンであり微小環境維持に重要でその欠損は肝炎・線維化・発がんを悪化させることを示す。以上より、Cygb活性化薬、Cygbに関連する代謝経路の制御剤は肝機能回復と発がん抑制の鍵となるため2年間をかけてin vitro, in vivo POCを作り、3年目に臨床試験への準備に移る。
研究方法
①Cygbの活性化HSCやMFB機能に対する効果:HSCを野生型マウス、Cygb欠損マウスから分離して機能比較を行う。構築したCygb発現ベクターをCygb陰性MFBに感染させコラーゲンやTGFβmRNA発現抑制などを検討する。一方、GMP準拠のCygb製剤を準備し活性化HSCやMFBへの効果を検討する。また、HSC機能へのCygbのさらなるin vivo機能解析のためLhx2プロモーターを用いたコンディショナルノックアウトマウスを作製し実験を行う②薬物スクリ-ニング: HSCやMFB細胞内のCygbを増加させ得る候補物質を見い出す。例えば東京大学創薬オープンイノベーションセンター等を利用してCygb活性化薬を見出す。スクリーニング法としては染色体上の星細胞活性化指標遺伝子プロモーターの下流にレポーター遺伝子を連結させてヒト星細胞株LX-2またはHHSteCへ 組換み、その蛍光シグナルを指標としたIn vitro評価系を構築する。一方、現在見出しているCygb活性化薬Xについてさらにその効果を詳細に調べると同時に作用機序について受容体、細胞内シグナル伝達、関与する転写因子などを詳細に検討する。また、研究を継続しているmicroRNAについて核酸創薬を念頭に検討する。評価項目として:Cygb遺伝子ならびに蛋白発現増加;MFBの増殖抑制;コラーゲンやTGFβmRNA発現抑制; PPARγ発現誘導など。以上からin vitroでのPOC 取得と構造活性相関を行う。RNAを含む候補物質を2~3へと絞り込み、初期合成を行う。 in vivo POC:候補となる化合物について、ヒト肝硬変に類似のマウスモデルを用いて、完成した線維化の復元がみられ、肝細胞の増殖と機能回復がみられるか、また発がん抑制効果を検討する。一方、リコンビナントCygbについても静脈内あるいは腹腔内投与で検討する。
結果と考察
結果 (1)Cygb-nullマウスをCDAA食で飼育すると全マウスで腫瘍が形成された。Cygb-nullマウスの背景肝ではマクロファージなどの炎症細胞浸潤が著明で、I型コラーゲン沈着が顕著であった。線維化やがん関連遺伝子発現がCygb-nullマウスで有意に高かった。この反応はマクロファージを除去することやN-アセチルシステイン投与で予防できた。 (2)アルンジン酸はヒト星細胞株HHSteCに対して予想通り細胞増殖を抑制し、平滑筋アクチン発現を濃度依存性に低下させ、逆にCygb発現を増加させた。 (3)HHSteCを用いる事で、HHSteC内のCygb量を発現誘導する因子Xを新たに発見した。この因子はペプチドであることを見出し、その同定を急いでいる。アルンジン酸に変わるペプチド性因子によるCygb誘導分子機構を検討することで新たな抗線維化治療戦略が見出される可能性がある。 (4)ヒト肝組織においてCygbを発現する細胞はHSCだけであり、MFBは陰性であった。
結論
肝星細胞の活性化制御に関してCygbが重要な因子であることが解明されつつある。Cygbの発現量を星細胞特異的に変動させ、星細胞をビタミンA貯蔵型に分化させることが肝細胞再生の素地形成にも繋がりうる。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320037Z