肝細胞への取り込み機構に着目したC型およびB型肝炎治療薬新規奏功因子の同定

文献情報

文献番号
201320035A
報告書区分
総括
研究課題名
肝細胞への取り込み機構に着目したC型およびB型肝炎治療薬新規奏功因子の同定
課題番号
H25-肝炎-若手-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
降幡 知巳(千葉大学 大学院薬学研究院 薬物学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 寛(千葉大学 大学院薬学研究院 薬物学研究室 )
  • 坪田 昭人(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業では、難治性肝炎の奏功率を向上させるため、B型およびC型肝炎治療薬の取り込みトランスポーターの機能に着目することにより、肝炎治療に貢献する新規宿主因子を明らかにすることを目的としている。これに準じ、平成25年度は、治療薬肝取り込みトランスポーターの解析、肝炎治療薬の薬物トランスポーターを介した薬物間相互作用プロファイルの解明、肝取り込みトランスポーター薬理ゲノム学的解析の基盤となる遺伝子構造解析、肝炎患者の臨床的知見の的確な把握と治療応答性の特徴解明をおこなった。

研究方法
B型肝炎治療薬であるテノホビルを対象とし、肝細胞内取り込みに関する予備的解析をトランスポートアッセイによりおこなった。薬物相互作用解析は、対象として第二世代直接作用型C型肝炎治療薬シメプレビル、アスナプレビル、ダクラタスビル、ソフォスブビルを用い、肝薬物トランスポーターに対する阻害能を解析した。薬理ゲノム学的解析基盤解析は、リバビリントランスポーターに着目し、種々の分子生物学的手法を用いた解析をおこなった。また、日本人C型肝炎患者を従来併用療法に対する部分応答または不応答患者群に分け、テラプレビルを含む三剤併用療法の治療期間を全24週間または全48週間として治療奏功関連因子解析をおこなった。本解析では、今後の研究計画に照らし、特に「従来の治療効果予測因子が新規治療法においても有効であるか」「前治療歴が新規治療法の効果に対してどの程度影響するか」に焦点をあて解析をした。
結果と考察
テノホビル肝取り込み機構については、トランスポーターの関与を示唆する知見が得られた。この実体については未だ同定しきれていないものの、少なくとも核酸トランスポーターや有機アニオントランスポーティングポリペプチドの基質とはならないことが明らかとなった。これら知見を踏まえて、次年度以降テノホビル肝取り込みトランスポーターの同定を進める。
 また、多くの第二世代直接作用型C型肝炎治療薬は肝薬物トランスポーター阻害能を有することが明らかとなった。この阻害能を用いてin vivoにおける肝薬物トランスポーターを介した薬物間相互作用リスクを推測したところ、ダクラタスビルおよびソフォスブビルについてはそのリスクは低いと考えられたが、シメプレビルおよびアスナプレビルについては薬物間相互作用リスクがあることが明らかとなった。肝薬物トランスポーターの基質となる薬物は多岐に渡ることが知られており、今後臨床においてさらなる検証を進める必要があると考えられる。これら成果は併用注意・禁忌の喚起やより適切な治療薬選択など新規の治療ガイドラインの策定にかかわる実験的基盤情報となると考えられる。このような新たな治療ガイドラインが設計できれば、個別化治療の発展による治療奏効率の向上や副作用の回避、医療費削減につながると期待される。
 さらに、本研究ではリバビリン肝取り込みトランスポーター遺伝子について、その新たな発現制御領域を同定した。これは新たな解析対象領域を提示するものであり、本成果はリバビリン薬効発現における薬理ゲノム学的解析の基盤となると考えられる。さらに、本研究で得られた視点は他の肝炎治療薬取り込みトランスポーター遺伝子にも応用可能であり、そのような視点から得られた研究成果は、新たな治療効果予測因子の同定につながる可能性が期待される。
 一方、患者臨床情報解析からは、テラプレビルを用いたC型肝炎三剤併用療法の治療奏功に影響する要因として、全48週間治療、前治療応答、Interleukin 28B遺伝子野生型、extended rapid virologic responseを明らかとした。これら三剤併用療法による治療結果と有力な治療効果規定因子に関する知見は、次世代直接作用型C型肝炎治療薬による治療へ活かせるとともに、説明できない治療効果に影響する機序や副作用機序の解明につながると考えられる。
結論
 以上、当該年度研究では当初目的に沿った成果として、肝炎治療薬の肝細胞内取り込み機構の一端、肝炎治療薬の薬物相互作用リスク、治療効果予測因子同定のための治療薬トランスポーターの薬理ゲノム学的基盤情報、を明らかとした。さらに、患者を対象とした解析から、新規治療法において患者層に応じた治療効果予測、治療方針が必要であることが明らかとなった。今後本研究を継続・発展させることにより、さらにB型・C型肝炎治療の質の向上に貢献する成果が得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,800,000円
(2)補助金確定額
7,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,984,460円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 15,540円
間接経費 1,800,000円
合計 7,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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