C型肝炎の病態の解明と肝癌発症制御法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201320021A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の病態の解明と肝癌発症制御法の確立に関する研究
課題番号
H25-肺炎-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
35,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)に有効な薬剤の開発により、C型慢性肝炎患者からのウイルス排除に関しては良好な成果が得られつつある。しかしながら、HCVのin vivoならびにin vitroの解析系は限定されており、病原性の発症機序の解析は進んでいない。特に、化学療法によってHCVを生体から排除できたとしても肝発癌の危惧は払拭できず、今後は肝癌への進展を制御する新しい治療法の確立が重要となる。本研究では、in vitroおよびin vivoの感染モデルを構築し、HCV感染による慢性持続性感染、線維化、脂肪化、そして発癌のメカニズムを解明し、慢性C型肝炎から肝細胞癌への進展を阻止できる新しい治療法の開発を基礎、臨床の両面から検討することを目的とする。
研究方法
HCVの侵入過程を解析可能なマウスモデルの作製に関する報告がなされているが、本研究班では、感染受容体やmiR-122を発現させることにより、感染性ウイルス粒子を産生し、HCVの病原性を解析可能なマウスモデルの開発を試みる。炎症に関しては、樹状細胞の役割をin vitroおよびin vivoで解析する。分担研究者の鈴木は星細胞株でHCVの複製が可能であることを報告しているが、これに伴い変化する線維化関連因子の発現変化を網羅的に解析する。脂肪化に関しては、コア蛋白質と宿主因子の相互作用による脂肪代謝系への影響を解析する。発癌に関しては、脱ユビキチン化酵素やmiR-122の関与を解析する。In vitroの解析によって得られた成績をマウスモデルで検証する。
結果と考察
オートファジー関連遺伝子をHuh7細胞から欠損させると、オートファゴソーム形成は抑制されるものの、HCVの増殖には何ら影響は認められないことから、HCV感染によって誘導されるオートファジーはこれまでのものとは異なることが示唆された。StatinによってHCV感染で誘発される肝脂肪化、脂肪組成異常、ミトコンドリア機能・形態異常の改善が認められた。HCV感染による肝線維化に関連して、小胞体ストレス依存的なTGFβ2の発現制御機構が示唆された。HCVコア蛋白質発現マウスの肝臓を種々のストレス誘導剤で刺激し、その破砕液とマクロファージと共培養すると、マクロファージの炎症反応が増強された。コア蛋白質発現マウスの肝臓やHCV感染細胞の微量質量分によって、HCVコア蛋白質の発現やHCVの複製によって、脂質全体の変動に一定のパターンが認められた。また、HCVコア蛋白質による過酸化水素消去酵素の分解誘導にユビキチンリガーゼE6APの関与が示唆された。IL28BSNP majorの健常者のBDCA3+の樹状細胞にHCVが侵入すると、IL28BSNP minorのものよりも多量のIFN-λを産生し、肝細胞のISGを誘導することが示された。C型肝細胞癌の初回肝切除症例(97例)の切除組織の解析から、Fatty acid binding protein 5 (FABP5)がAFP-L3を陵駕する細胞癌の悪性度に強く関連する予測因子であることが明らかとなった。VA欠失アデノウイルスベクターはmiR122などのsmall RNAの発現ベクターとして有用性が高いこと証が明された。
結論
本研究により、HCV感染による慢性持続性感染、線維化、脂肪化、そして発癌のメカニズムの解明の糸口と技術基盤が整いつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,780,000円
(2)補助金確定額
43,780,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 31,759,687円
人件費・謝金 3,353,017円
旅費 255,010円
その他 612,286円
間接経費 7,800,000円
合計 43,780,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
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