C型肝炎から発がんにいたる病態進展の解明とその制御に関する研究

文献情報

文献番号
201320020A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎から発がんにいたる病態進展の解明とその制御に関する研究
課題番号
H25-肺炎-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 政夫(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 出沢 真理(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 杉山 和夫(慶応義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
27,468,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後、登場するC型肝炎ウイルス(HCV)治療薬は安全性と有効性に優れており、治療によって高率にHCVを排除すると考えられる。しかし、我が国におけるHCV感染患者数は多く、これからも多数のHCV関連肝がんの発生が予想される。そこで、本研究は慢性C型肝炎から肝細胞がんにいたる病態を明らかにし、その進展を阻止する新たな治療法を開発し、実用化を目指す研究を行う。
研究方法
我々がこれまで解析してきたHCVの炎症・脂肪化・線維化・発がんの過程がみられるトランスジェニックマウスに、病態の進展に重要と考えられる遺伝子改変マウスを交配し動物実験モデルを作製する。脂肪化・線維化・肝発がんに於けるサイトカイン・増殖因子の役割やインターフェロン応答と肝発がんの関わりなどを解析する。これまでに作製し研究をすすめてきたHCV感染培養系を用いて宿主因子との関連を解析するとともに、標的分子に対する薬剤のスクリーニングを行う。幹細胞の解析を行い、感染から発がんがみられるヒト臨床サンプルを用いて標的分子、および幹細胞の動態を解析し、実験モデルから得られた結果の検証を実施する。
結果と考察
1)HCVマウスにPDGF-Cトランスジェニックマウス(PDGF-Cマウス)を掛け合わせHCV/PDGF-Cマウスを作成した。腫瘍数、腫瘍径、肝重量共にHCV/PDGF-Cマウスに於いて他マウスより有意に上昇していた。
2)卵巣摘出(ovariectomy, OVX)を行ったHCVトランスジェニックマウス(TgM)を用いて、OVXならびにHCVタンパクが酸化ストレスに及ぼす影響とその機序を検討した。C57BL/6、TgMに関係なくOVXにより血清レプチンの上昇とともに摂餌量が増加し、体重、肝重量が増加した。血清ALT値はTgMでのみOVXで有意に上昇した。
3)動脈硬化高脂肪食NASHマウスモデルを用いて、ペレチノインの脂肪化抑制及び肝発がん抑制効果について検討した。ペレチノイン0.03%による腫瘍発生率は有意に抑制されていた。ペレチノインは容量依存性に肝線維化・脂肪化・炎症シグナルを有意に抑制した。
4)EVG染色を行った肝生検標本をデジタル化し、コラーゲンとエラスチンの定量的な解析を行った。各線維成分の組織占有率は、Fステージと相関することが示された。さらに、発癌の有無との比較解析を行い、エラスチンが発癌リスクの指標として有用である可能性が示唆された。
5)SCID マウスの腹腔内に四塩化炭素1.5 ml/Kg 投与し急性肝障害モデルを作成した。GFP陽性ヒト骨髄間葉系幹細胞をSSEA-3を用いてFACSでMuse細胞とMuse細胞以外の間葉系幹細胞(非Muse細胞)とに分け、四塩化炭素投与後2日の時点で尾静脈から投与した。移植30日後、Muse細胞がHeppar1, human albumin陽性の肝細胞マーカー陽性細胞として肝臓内に生着していた。
6)全長HCV-RNAの長期複製による細胞機能の変化を引き続き解析するとともに、同定した9種類の宿主遺伝子のうち顕著な発現抑制が観察されたBASP1とCPB2遺伝子について解析した。
7)NS5A発現細胞の抽出液を用いてアフィニティークロマトグラフィー/質量分析法により新規NS5A結合宿主因子候補として同定されたSMYD3が、HCV感染細胞やHCVレプリコン細胞内で実際にNS5Aと結合していることを実証した。
8)感染持続可能なHCV持続感染培養細胞(HPI細胞)を樹立した。HPI細胞では脂肪滴の著明な蓄積、コレステロールおよびデスモステロールの増加、脂肪酸の増加、ペントースリン酸経路促進によるNADPHの増加、TCA回路の促進を伴うアミノ酸増加など全体的な代謝亢進状態が認められた。
結論
HCVマウスに肝線維化をきたすPDGF-Cトランスジェニックマウス(PDGF-Cマウス)を掛け合わせHCV/PDGF-Cマウスを作成した。掛け合わせによる発癌率の亢進と腫瘍サイズの増大がみられた。動脈硬化高脂肪食NASHマウスモデルを用いて、ペレチノインの脂肪化抑制及び肝発がん抑制効果について検討した。卵巣摘出(ovariectomy, OVX)を行ったHCVトランスジェニックマウスにおいて有意な肝障害の進展がみられた。新規の薬剤による発癌抑制の実験を開始した。これらのモデルの解析をさらに進める計画である。また、これまでに作製し研究をすすめてきたHCV感染培養細胞系を用いて宿主因子との関連を解析した。最新のゲノミクス技術に加え、幹細胞の解析を行なった。研究計画は順調に進捗している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320020Z