T細胞誘導を主とする予防エイズワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
201319033A
報告書区分
総括
研究課題名
T細胞誘導を主とする予防エイズワクチン開発に関する研究
課題番号
H25-エイズ-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 立川  愛(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
  • 小柳  円(熊本大学 エイズ学研究センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 寺原 和孝(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
42,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界のHIV感染者数は3千万人を超えており、アフリカを中心とする感染拡大を抑制することは、国際的最重要課題の一つであるとともに、毎年約1500人の新規HIV感染者・エイズ患者が報告される本邦の感染拡大抑制のためにも必要である。そのためには、感染者の早期診断・治療の推進に加え、切り札となるワクチンの開発が切望されている。我々はこれまで、優れた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導能を有するセンダイウイルス(SeV)ベクターを用いた予防エイズワクチン開発研究を推進してきた。平成25年には、このT細胞誘導ワクチンの国際共同臨床試験第1相が国際エイズワクチン推進構想(IAVI)主動でルアンダ・英国等にて開始されており、次の有効性評価のステップ(第1ー2相)への進展には、発現する抗原の最適化が求められている。そこで本研究では、このT細胞誘導ワクチンの実用化に向け、HIV持続感染阻止に結びつくよう最適化した抗原発現系設計を目指すこととした。
これまでの我々の研究で、GagおよびVifが有効なCTLの標的抗原候補であることが示されたことから、Gag・Vif蛋白質内の標的領域断片を繋いだ最適化抗原を設計する計画として、(1)CTLエピトープ情報を基に設計した最適化抗原発現ワクチンのエイズモデルにおける有効性の検証、および(2)HLA遺伝子型とCTLエピトープ情報の収集に基づくHIV最適化抗原設計を推進することとした。平成25年度には、エイズモデルでのウイルス複製制御に結びつくGag・Vif特異的CTLの標的領域の同定と腸管免疫反応解析系の確立、ユニバーサルHLAアレルの一つB*07:02拘束性エピトープ特異的CTL反応のデータ収集、およびガーナHIV感染者のHLA遺伝子型同定等を行った。
研究方法
エイズモデル実験で得られたリンパ球サンプルを用い、ワクチン接種によりウイルス持続感染が阻止された群で感染急性期に誘導されるCTLの標的領域同定を進めた。一方、小腸よりリンパ球を分離し、免疫学的解析を行う方法を検討した。また、HLA-B*07:02に拘束される16種類のエピトープに対するCTL反応を、B*07:02陽性HIVサブタイプB・C感染者のリンパ球を用いて測定した。さらに、ガーナ野口記念医学研究所の協力により得られたガーナHIV感染者血液由来DNAを用いて、HLAクラスIアレルのタイピングを行った。
結果と考察
持続感染阻止群において、感染急性期に誘導されたCTLの標的領域をGagあるいはVif蛋白質内に各々同定した。同定した標的領域特異的CTLについては、感染急性期に逃避変異選択が認められたことから、強力な複製抑制能を発揮したと考えられた。本研究では、このような有効なGag・Vif特異的CTLの標的領域の情報蓄積を進める予定である。一方、エイズモデルにおいて、小腸粘膜固有層よりのリンパ球分離プロトコールを確立し、腸管免疫解析系を確立した。HLA-B*07:02拘束性エピトープの解析では、HIVサブタイプB・C感染者群の各々10%以上に誘導されるB*07:02拘束性CTLエピトープを4種類見出した。このうちp24 GL9エピトープ特異的CTLについては、高いHIVサブタイプC複製抑制能を有していると考えられた。ガーナHIV感染者の解析では、HLA-Aアレルのうち、A*23:01、A*03:01、A*30:01、A*02:01、A*33:03の頻度が高いことが判明した。このうちA*30:01およびA*33:03は、アジアおよび西アフリカに高頻度に分布するものであった。今後、これら対象地域に特有のHLAアレルを中心に関連HIV変異解析を推進する予定である。
結論
エイズモデルにおいてウイルス複製制御に結びつくGag・Vif特異的CTLの標的領域を同定した。一方、HIV最適化抗原設計のためのHLA遺伝子型とCTLエピトープの情報収集に向け、ユニバーサルHLAアレルの一つB*07:02拘束性エピトープ特異的CTLに関する情報を蓄積し、p24 GL9エピトープ特異的CTLの高いHIVサブタイプC複製抑制能を示す結果を得た。これらの情報蓄積は、T細胞誘導エイズワクチンの最適化抗原設計およびその検証系構築に直結するものとして重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319033Z