血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の長期療養体制の整備に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
201319026A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の長期療養体制の整備に関する患者参加型研究
課題番号
H24-エイズ-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲(公益財団法人エイズ予防財団 )
研究分担者(所属機関)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学、疾病制御学)
  • 照屋 勝治(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター感染症内科)
  • 江口 晋(長崎大学大学院移植・消化器外科)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院感染症内科)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院血液内科)
  • 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター消化器科)
  • 藤谷 順子(国立国際医療研究センター病院リハビリテーション科)
  • 大金 美和(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
  • 中根 秀之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染血友病等患者はHIV/HCVの重複感染の問題に加え、HIV感染自体による、或いは抗HIV療法の副作用による糖代謝異常や脂質異常、長期療養に伴う高齢化とそれに伴う関節症悪化による日常活動能の低下、精神的な問題等々の問題を抱えたまま、その解決策も不十分な状況が続いている。患者参加型で患者の実態とニーズを明らかにし、医療と社会福祉が連携して最良の医療やケアを提供できる仕組みを確立することを目指して研究した。
研究方法
研究方法としては6つのサブテーマに分け、同時並行で研究を行った。今年度は年2回の班会議の他、「患者のための公開講座」、「関節検診」を開催した。【サブテーマ1】 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査【サブテーマ2】 C型慢性肝炎の進行度評価の標準化に関する研究【サブテーマ3】 HIV/HCV重複感染者における新規抗HCV療法の効果予測に関する研究【サブテーマ4】 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究【サブテーマ5】 HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアにおける課題と連携に関する研究【サブテーマ6】 HIV感染血友病等患者に必要な高次医療の連携に関する研究
結果と考察
【サブテーマ1】 WHOのICFスコアの解析から、88名中44名(50%)がスコア10以上を示し、日常生活機能の障害が強い状態であることが示された。特に、無職患者38名(43.2%)のICFスコアが著しく高く、生活機能低下のために就労できていない状況が推定された。全国の拠点病院にアンケート調査を行い、把握できたHIV/HCV重複感染血友病患者430名(全国のHIV/HCV重複感染血友病患者の凡そ60%に相当)の内、約半数でHCV感染が自然治癒もしくはIFN療法で治癒していたが、133例が慢性肝炎、66例が肝硬変、この内肝細胞がん保有例が10例と、深刻な状況であることが示された。【サブテーマ2】 長崎大学付属病院等5施設でHIV/HCV重複感染血友病患者を対象にC型慢性肝炎の進行度を評価する作業を進めており、今年度は123例の登録が得られた。長崎大学でARFIを施行した30例、国立国際医療研究センター(ACC)でFibroscanを施行した16例について予備的に検討したところ、HCV単独感染例と同様、重複感染例においてもAPRI (AST/AST正常上限÷血小板数[×109/L]×100)が良く相関することが確認された。来年度、肝炎の進行度評価法の標準化を目指しガイドラインを作成する予定である。【サブテーマ3】 これまで新規薬による抗HCV療法を受けたことのないHCV単独感染例5例とHIV/HCV重複感染者18例につき、プロテアーゼ阻害薬に耐性となることが報告されている部位のアミノ酸変異を調べた。3例で弱い耐性を示す可能性のある変異が認められ、tailor made医療を目指し、解析中である。C型肝炎の新規治療薬開発状況に関する情報提供を目的として「患者のための公開講座」を開催するとともに、発表画像をはばたき福祉事業団のホームページに掲載した。【サブテーマ4】 装具の使用やリハビリテーションにより、痛みの軽減や歩行障害を改善して行くことが、生活機能の回復にも就労にも重要であることが裏付けられた。日常診療や関節検診等により、血友病性関節症の特徴を明らかにできたので、現場において活用しやすいリハビリテーション診療マニュアルを作成する予定である。関節検診を実施できた。【サブテーマ5】 HIV/HCV感染血友病患者のSF-36の得点は、全国の慢性疾患を2つ有する群の得点と比較しても低く、年齢が高いほど身体的機能の得点が低い関連が見られた。療養アセスメントシートは、看護師から患者への情報提供・包括的な情報収集のツールとしてまた、患者の当事者性を高め、セルフケアに繋げていくツールとして有効であると考えられた。血液凝固因子製剤によるHIV感染被害者の半数以上に何らかの精神医学的問題がある(GHQスコア6以上)ことが示されたので、HIV診療医向け診療補助ツール「HIV診療における精神障害―精神障害の診断治療のためのパッケージ-(暫定版)」を作成した。【サブテーマ6】 HIV感染血友病患者では大腿骨頸部で57例中83%が異常低値を示し、骨折予防が喫緊の課題であることが示された。HIV/HCV重複感染血友病患者の多岐にわたる関連疾患を定期的に漏れなくチェックできるようにするため、診療チェックシートを作成した。
結論
上記の結果から、C型肝炎・肝硬変、関節症、精神的ケアを含めた多彩な医療連携と医療福祉支援が必要であることが浮き彫りになった。セルフ・アセスメントとともに、支援リソースの系統的整理を行い、それらを有効活用できるよう情報提供してゆくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201319026Z