複合予防戦略による多様な若者を対象とした予防啓発手法の開発・普及に関する社会疫学的研究

文献情報

文献番号
201319017A
報告書区分
総括
研究課題名
複合予防戦略による多様な若者を対象とした予防啓発手法の開発・普及に関する社会疫学的研究
課題番号
H24-エイズ-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木原 雅子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会疫学的手法(質的・量的方法、ソーシャルマーケティング、行動理論、社会実験法等を統合した手法)を用いて、サイバー戦略とスクール戦略により、アプローチ困難で支援ニーズの高い若者(性的少数派若者、性行動の活発な非就学・就労の若者)に対する予防啓発モデルの開発・普及を行う。
研究方法
(1)サイバー戦略を用いた予防介入研究
1.セクシャルマイノリティー生徒のためのサイト開発研究: 初年度に実施した国内外のセクシャルマイノリティー向けサイトの帰納的内容分析とネットサーベイの結果を基にピアと協働で、Webサイトの開発をした。
2.開発したサイトについての調査:某社の登録webモニター(18~19歳男女)1,030人を対象にネットサーベイを実施し、開発したサイトについて閲覧後の感想(自由記載)の内容分析を実施した。
3.サイトへのアクセス解析:開発したサイトのURLを学校、保健所で紹介するQRコード付き紹介カード(注:申請者が開発した、配布場所・配布者を標識でき、かつ転送を追跡できるQRコード)を配布し、その効果(アクセスの広がりと深さと波及効果)を、アクセス解析で測定した。
(2)スクール戦略を用いた予防介入研究:申請者が開発した学校におけるエイズ予防教育(WYSH教育)を、最新の青少年の性行動の現状に即して改善するために、某社の登録webモニター(18~19歳男女)1,030人を対象に青少年の性に関するKAP調査(ネットサーベイ)を実施した。
結果と考察
1.セクシャルマイノリティー生徒のためのサイト開発研究: 日本の既存サイトは、ほとんどが思春期若者のみを対象としているわけではないこと、文部科学省の学習指導要領には性的少数者に関しての集団指導が明記されていないことを考慮し、自身のセクシャリティーに揺らぐ児童生徒も入りやすく、かつセクシャルマイノリティーに対する学校の受容的雰囲気(school climate)を高めるために、多くの中学生や高校生が抵抗感なく自然な形でアクセスしやすいサイトの構築を企画した。多くの生徒が興味を持つように、セクシャルヘルスだけに限定せず、いじめや自傷行為、自殺を含むメンタルヘルスの情報も含めた。
2.開発したサイトについての調査:感想を記載した合計1,030人(男性515人、女性515人)の記載内容の帰納的内容分析を実施した。その結果、肯定的意見は626人(61%)、否定的意見は190人(18%)で、全般的に肯定的であった。今後は特に否定的意見を参考に現在のサイト改善を実施する予定である。
3.サイトへのアクセス解析: 高校のアクセス効率2%、平均ページビュー数6.79、平均滞在時間4.51分、直帰率21.0%であった。一方保健所でのアクセス効率11.0%、平均ページビュー数7.68、平均滞在時間7.38分、直帰率23.5%であり、学校、保健所ともニーズの高いユーザーによる訪問であることが示されたが、高校におけるアクセス効率が、携帯電話の時代の若者に比べ、著しく低下していたことから、次年度はその背景を探る必要性が示された。
(2)スクール戦略を用いた予防介入研究
18-19歳男女の性行動の調査結果は、性経験率は、男性では23-26%、女性では29-37%で女性の方が10%前後高く、初交年齢は中央値は男性18歳、女性17歳で、これまでの相手数の中央値は男性1人、女性1.5人、同時期に複数の相手と性関係にあった人は、男性15%、女性19%、直近のコンドーム使用率は男性82%、女性74%、売買春経験率は、男性7%、女性7%であった。本調査の対象では女性の方が性行動が活発でかつ無防備な状況が示された。HIV検査経験率は、1-2%、性感染症の罹患経験は全体で1.3%であった。性感染症の感染と関連する因子は、①生涯パートナー数が多い、②同時に複数の相手がいる、③セックスの頻度が高い、④コンドームを使う頻度が低い、⑤金銭の授受を介したセックスの経験があることが統計的に有意の関連が観察された。また、今回の調査結果を1999年に我々が実施した全国国民性行動調査の同年齢の結果と比較した結果、①性経験率、②生涯パートナー数3人以上の割合、③同時に複数の相手のいる人の割合、④金銭の授受を介したセックスに対する容認度のすべての項目において、男性では15年前に比べ、微増であるのに対し、女性ではすべての項目で大幅な上昇が観察され、女性の性行動の活発化・無防備化を踏まえた性教育の改善が必要であることが示唆された。
結論
多様な若者(セクシャルマイノリティー、活発で無防備な性行動をとる若者)(就学・非就学)に適した科学的予防介入モデルの開発の基礎研究実施という当初の目標を予定通り達成した。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319017Z