水疱性口内炎ウイルスを用いたアレナウイルス感染中和抗体開発に関する基盤研究

文献情報

文献番号
201318067A
報告書区分
総括
研究課題名
水疱性口内炎ウイルスを用いたアレナウイルス感染中和抗体開発に関する基盤研究
課題番号
H24-新興-若手-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
谷 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルスのエンベロープ蛋白質に対する中和抗体薬は、特に出血熱ウイルス感染症のような急性期に劇症化する疾患の場合、ウイルスの生体内への感染そのものを阻止することができ、非常に効果的である。ラッサウイルスをはじめ各種南米アレナウイルス、近年新たに同定された重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) ウイルス (SFTSV) においては、未だ効率良くウイルスの感染を中和できるような抗体は得られておらず、治療薬としての開発が必要とされている。
 初年度、各種アレナウイルスのGPを外套したシュードタイプVSVを大量調整し、マウスへ免疫し、抗体の中和活性の存在を各ウイルスGPシュードタイプVSVの感染阻害を指標に評価したが、コントロールのVSVGに対しては中和抗体価が認められたものの、アレナウイルスGPに対しては認められなかった。これは、粒子中に取り込まれているGPの量に影響するものと考えられ、本年度は、免疫抗原としてラッサウイルスとフニンウイルス、また追加抗原に、SFTSVのGPを発現させた細胞を用いて免疫を行う。エンベロープ蛋白質(GP)を検出できる抗体が作製できれば、こうしたウイルス感染症対策に関する基礎研究の有用なツールとして活用できるだけでなく、抗原検出のための迅速診断法への開発にも応用することが期待できる。
研究方法
免疫抗原としてラッサウイルスとフニンウイルスおよびルジョウイルス、また追加抗原に、SFTSVのGPを発現させた細胞をBALB/cマウスに免疫し、ハイブリドーマの作製を試みる。約1000種類のハイブリドーマ上清から、それぞれの抗原に対するGP発現細胞を用いた蛍光抗体法および、それぞれのGPを外套するシュードタイプVSVを用いた感染中和活性によるスクリーニングを行う。
結果と考察
アレナウイルスGPを外套したシュードタイプウイルスでは、粒子上に存在するGPが少量であるために、免疫原としては非効率的であると考えられた。そのため、量的な優位性を考え、GP発現細胞を免疫原として準備し、再度免疫を試みた。その結果、ラッサウイルスGPを外套したシュードタイプウイルスの感染を中和できる抗体産生細胞は得られなかったものの、ラッサウイルスGPに対して間接蛍光抗体法で検出できる抗体産生細胞が得られた。ラッサウイルスをはじめアレナウイルス感染症に罹患した患者血清中のウイルスに対する中和抗体価は、一般的なウイルス感染症と比較してなぜか低いことが知られており、これらのウイルスGPがなんらかのメカニズムで中和抗体が出来にくい性質を持つことが考えられる。そのため、この研究における実験系がうまく機能するかを検証するためにコントロール抗原として、また必要性も考慮して、昨年より我が国で発生が問題となっている重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTSV) のGPを用いて同様の実験を行った。その結果、SFTSVのGPに対して間接蛍光抗体法やELISA法で検出できる抗体産生細胞が得られただけでなく、シュードタイプウイルスを用いたスクリーニングで感染を中和できる抗体産生細胞も得られた。この結果より、今回用いた実験手法は感染を中和できる抗体産生細胞の作出に有用であることが示された。
結論
本研究で、ブニヤウイルス科のSFTSVに関して、感染を中和できる抗体産生細胞の選別ができた。この抗体はウイルスの感染中和だけでなく、蛍光抗体法やELISA法にも利用できることがわかった。アレナウイルス科においては、ラッサウイルスのGPに対する抗体は得られたものの、感染中和できるものは未だ得られておらず、他のアレナウイルス種のGPに対する抗体とともに今後も継続して抗体の作製に取り組む予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318067Z