不活化ポリオワクチンの有効性・安全性の検証及び国内外で進められている新規腸管ウイルスワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
201318048A
報告書区分
総括
研究課題名
不活化ポリオワクチンの有効性・安全性の検証及び国内外で進められている新規腸管ウイルスワクチン開発に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 智((財)東京都医学総合研究所 ウイルス感染プロジェクト)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 藤本嗣人(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 染谷雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
25,972,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2012年9月から、海外ですでに広く使われているcIPV含有単独IPVが、2012年11月からは日本で新たに開発されたsIPV含有4種混合ワクチンが定期接種に導入された。さらに、複数メーカーによりsIPVおよびcIPV抗原を含む4種混合ワクチン開発が進められている。sIPVは世界で始めて定期接種に導入された新たなIPVとして、導入後も有効性、安全性、品質管理等に関する検討が必要とされている。一方、IPV導入・移行期におけるOPV接種率の低下が危惧されており、IPV導入後の集団免疫とワクチン接種率の動向を継続的に把握する必要がある。IPV導入後における、ポリオウイルスを含む腸管ウイルス病原体サーベイランスは、きわめて重要であり、国内外の実験室ネットワーク基盤を強化する必要がある。sIPVは、日本が世界に先駆けて開発・導入した新たな不活化ポリオワクチンだが、近年、アジア諸国では、不活化EV71ワクチン等、新規腸管ウイルスワクチン開発が積極的に進められている。本研究では、腸管ウイルス感染・病原性発現機構の分子的基盤の理解に基づいた感染動物モデルの開発、ウイルス抗原性の分子進化等、新規腸管ウイルスワクチン開発のための研究基盤整備に関する研究を行う。
研究方法
1. IPV導入後の集団免疫とワクチン接種率の動向について、感染症流行予測調査事業等のデータをもとに解析・評価を行う。
2. 複数の異なるメーカーにより導入・開発が進められているsIPVおよびcIPV抗原含有ワクチンの中長期的有効性解析手法を検討する。
3. 野生株のDUとセービン株のDUを比較し相互変換可能にするため、強毒株由来ワクチンの抗原量測定試験に用いる抗体、および、セービン株由来ワクチンの試験に用いる抗体の互換性を検討する。
4. IPV導入後にも持続可能な高感度病原体サーベイランス体制を整備するため、国内地方衛生研究所による実験室ネットワークを基盤とした腸管ウイルス病原体サーベイランス体制を整備する。
5. EV71受容体発現トランスジェニックマウス等、腸管感染ウイルスの感染増殖・病原体発現機構の解明に基づいた新たな感染動物モデルを検討し、腸管ウイルスワクチン開発への応用を検討する。
結果と考察
1. 5歳未満のワクチン接種状況を検討した結果、年長になるとともにOPVのみ接種者の割合は増加し、IPV含有ワクチンのみ接種者の割合は減少する傾向がみられた。累積接種率調査によると、IPV2、3回目累積接種率は生後24ヵ月で78%以上に達しており、IPVへの切り替えは順調に進んでいると推定された。
2. sIPVの国家検定が将来的にD抗原定量試験に置き換わる可能性があるため、cIPVおよびsIPVのD抗原定量試験方法を比較し、試薬、機器等の共通化に向けての検討を行った。
3. 地方衛生研究所で2013年春よりポリオ環境サーベイランス調査を開始したが、2014年1月現在、ポリオウイルスの検出は見られていない。臨床検体や環境水から、より迅速にポリオウイルスを検出・同定するため、培養細胞を用いないポリオウイルス検出システムの開発研究を開始した。
4. EV71病原性研究、ワクチン・抗ウイルス薬のin vivo評価系としてhSCARB2-Tgマウスを作製し、EV71感染モデルとしての有用性を評価した。EV71感染・病原性発現機構解析のため、EV71-受容体結合の構造学的基盤を明らかにし、PSGL-1受容体結合に関与するEV71カプシドアミノ酸VP1-145を同定した。
結論
1. 世界で始めて開発・導入されたsIPVは、定期接種導入後も品質管理等に関する検討が必要とされている。cIPVおよびsIPVのD抗原定量試験方法を比較し、試薬、機器等の共通化に向けての検討を行った。
2. IPV導入後のポリオ集団免疫状況を調査し、IPV導入後のキャッチアップ接種の必要性・有効性を検討した。OPV、IPV、DPT-IPVの接種による有効性の比較、特にIPVとDPT-IPVを接種した場合の有効性について、抗体保有状況から比較・検討を開始した。
3. 地方衛生研究所で2013年春よりポリオ環境サーベイランス調査を開始した。2014年1月現在、ポリオウイルスの検出は見られていない。野生株ポリオウイルスが侵入あるいはVDPVが伝播した場合にも、早期に検知することが可能となる。
4. EV71病原性研究、ワクチン・抗ウイルス薬の評価系として小動物モデルが必要であることから、ヒトSCARB2発現トランスジェニックマウスを作製した。EV 71感染・病原性発現機構解析のため、EV71-受容体結合の構造学的基盤を明らかにし、PSGL-1受容体結合に関与するEV71カプシドアミノ酸を同定した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318048Z