結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201318033A
報告書区分
総括
研究課題名
結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター)
  • 慶長 直人(公益財団法人結核予防会結核研究所 生体防御部)
  • 前田 伸司(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部 結核菌情報科)
  • 岩本  朋忠(神戸市環境保健研究所)
  • 和田 崇之(長崎大学熱帯医学研究所 国際保健学教室)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
  • 吉山  崇(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 徳永  修(独立行政法人国立病院機構南京都病院 小児科)
  • 小林 典子(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
36,079,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は結核の予後,感染性,菌特有の性質等に関する革新的な診断法や新抗結核薬を用いた画期的な治療法の開発に寄与すること及び現行の対策の強化を目的としている。
研究方法
 新しい治療法については結核診療施設に対する質問票調査,新薬に関する情報収集を行った。健常者及び患者のgranulysin及びksp37を測定し臨床像との比較をした。結核の病態に関するバイオマーカーとして期待されるマイクロRNAについて,細胞性免疫に関わる代表的な遺伝子群のmRNA発現量を測定した。結核菌の生死判定法の開発のために,PMAを用いたTaqMan MTBによる生菌数の定量、2Auramine O–CTC二重染色による生菌数の割合の算出、及び37H10培地における生菌数の計数を行った。集団感染事例については,4株をスポリゴタイピング,Large sequence poly- morphisms(LSP)及び次世代シークエンサーを用いたSNPs部位の特定を行い,比較検討した。結核菌株の遺伝背景と臨床・疫学・細菌学的特徴との関連性の解明のために,多剤耐性菌98株のrpoB領域の変異とrpoC領域の変異の関連性を解析した。広域拡散性クラスター株(M株)の次世代シークエンサーによる解析結果から共通の固有変異を決定し,M株をゲノムにより定義した。この定義によるM株52株の系統分類を行った。結核菌の形態学的特徴の解析のため,超薄連続切片の透過型電子顕微鏡を用いた観察より三次元構築を行い,形態計測を行った。QFT-3Gの予測価値の解析のため,接触者健診におけるQFT-3Gの判定結果と追跡結果を分析し,発病率を計算した。小児結核に関しては,コッホ現象報告書の解析,QFT-GIT及びT-SPOT TB反応性の比較等を行った。DOTSの強化・向上に関しては,治療継続・連携に関する分析,患者のリスク項目に関する調査・分析,結核患者の喫煙習慣の検討を行った。薬剤耐性の実態調査については,前回調査のRFP耐性を元に必要検体数を算出し,調査方法を検討した。院内感染対策に関しては,前年に作成した手引き(案)を関係団体の意見に基づいて修正した。
結果と考察
新しい治療に関しては,新抗結核薬及び既存薬の有用性が示唆された。国内のみでの新薬の多剤耐性結核に対する治療研究は該当症例数が少ないため困難と考えられた。予後診断法開発のため,granulysin及びksp37の新知見が得られた。マイクロRNAは潜在性結核感染症に特有な軽微な免疫炎症応答を制御している可能性が考えられた。生菌と死菌の判定法開発では関してPMAを用いた方法と従来のAuramine-CTC染色と一致した結果が得られた。次世代シークエンサーを活用した結核菌ゲノム解析法に関して,接触者健診における分析の限界が示唆された。また,多剤耐性菌におけるrpoC遺伝子変異の出現状況とその意義に関する新知見が得られた。さらに,全国的に広範囲に検出される菌株(M株)に関してSNPsに基づく新しい定義とその活用に関する新知見が得られた。結核菌に関する超微形態に関して,超薄連続切片による再構築による観察法を確立し,菌体長・細胞質直径・リボソーム数の計測が可能であった。以上のように革新的な診断・治療法の開発を目指した研究については,いずれも有望な成果が得られつつある。
 現行の対策の強化に関する主な成果は以下のようなことである。QFT-3Gの判定結果とその予後(発病)に関する調査からIGRAは発病予測に有用と考えられた。小児結核についてはコッホ現象の報告は2005-09年の調査時と大きな差はないことが明らかになった,一方で,報告の意義や対象を明らかにする必要性が示された。小児におけるIGRAについては,QFT-3GとT-SPOTの比較等からより積極的な適用の方向が示され,「接触者健康診断の手引き(改訂第5版)」に反映された。DOTSの強化・向上に関しては,これまでの検討結果が予防指針の目標の一つであるDOTS実施率算定方式に反映された。またDOTSにおける脱落・中断リスク評価の現状と課題,結核患者の喫煙習慣の調査に基づく患者指導の課題を明らかにした。DOTSガイドライン(案)を策定した。
 薬剤耐性実態調査については新しい方式による薬剤耐性全国調査のプロトコール(案)を作成した。「院内(施設内)感染予防の手引き」を刊行し,結核研究所のweb siteに掲載した。
結論
本研究班は画期的な診断・治療法の開発と現行の対策の強化のために,多様なアプローチを取っているが,それぞれの研究課題において着実な成果を上げ,研究論文にまとまられる,または,国の基準や手引きの内容に反映され対策に貢献した

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,402,000円
(2)補助金確定額
45,402,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,270,863円
人件費・謝金 6,945,009円
旅費 4,049,089円
その他 9,814,233円
間接経費 9,323,000円
合計 45,402,194円

備考

備考
収入支出の差異は、受取利息194円分の支出が支出額に含まれる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-28
更新日
-