ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究

文献情報

文献番号
201318031A
報告書区分
総括
研究課題名
ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 友司(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 鈴木 定彦(北海道大学 人獣共通感染症リサーチ センター)
  • 鮫島 朝之(国立療養所星塚敬愛園)
  • 前田 百美(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 牧野 正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 石井 則久(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
34,852,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハンセン病の制圧は、世界共通の目的である。現状では、世界的に新規登録患者数は横ばいであり、加えて薬剤耐性菌による発症、再発・再燃も年々数を増し、新たな問題として浮上している。また、わが国では、症例が極めて少ないため、一般人・医療従事者等に対するハンセン病に関する知識の啓発・教育の必要性が存在する。これら諸問題の解決を目指し以下の研究を行った。
1.らい菌の特性に関する研究(宮本)
2.薬剤耐性獲得機構解明とその迅速感受性試験法開発への応用(鈴木)
3.再燃・再発に関する免疫学的診断法の開発(鮫島)
4.免疫療法の開発(前田)
5.ハンセン病・結核共通ワクチンの免疫学的評価(牧野)
6.ハンセン病ワクチンの開発(向井)
7.ハンセン病の診療ネットワークと啓発に関する研究(石井)
研究方法
1.らい菌代謝関連遺伝子を選別し、Mycobacterium smegmatisの相同遺伝子破壊株を作製し、代謝成分解析を行った。
2.らい菌各種変異導入組換えDNAジャイレースを大腸菌発現・精製し、新規キノロン剤の効果を評価し、感受性試験用マイクロアレイの設計を進めた。
3.各病型の療養所入所者の末梢血単核球のMMP-II、あるいは総らい菌蛋白への反応性を、IFN-γ・IL-10などをELISA, FACSにより測定した。
4.らい菌感染樹状細胞の放出エキソソームに含まれるマイクロRNAを解析した。
5.BCG HSP-70および結核菌由来MMP-II融合蛋白をM.smegmatisに発現精製しそのマウスによる免疫原性の評価を行った。
6.らい菌抗原発現BCGの構築では、強力発現promoterを用いBCG HSP-70とらい菌MMP II融合遺伝子をBCGのゲノム上のurease領域へ置換導入し、さらに薬剤耐性遺伝子を除去した。構築組換えBCGの細菌学的検討を進めた。
カニクイザルによるらい菌感染系の構築では、らい菌を接種してきた幼若もしくは妊娠およびその出生仔ザルの血漿・鼻腔内洗浄液の検討により感染の経過観察を行った。
7.ハンセン病診療に欠けている要素を抽出し、それらを補う資料や情報を提供し、講習会などを開催した。また、新規患者に対する、検査・鑑別・診療を指導した。
結果と考察
1.相同遺伝子変異導入M. smegmatis菌体内のアミノ酸量を解析した結果、一部の変異株で数種のアミノ酸量が野生株とは異なっていた。このことは、偽遺伝子化がアミノ酸代謝形成に影響を及ぼしている可能性を示唆した。
2.らい菌組換えDNAジャイレースを用いた試験より、新規キノロン感受性を明らかにした。さらにこれまでのデータを集約し、3剤感受性試験DNAマイクロアレイをデザインしこれは治療薬の適切な選択を可能とする。
3.IFN-γの産生量は少菌型でらい菌総蛋白刺激でやや多く、また、FACSではMMP-II刺激で、共型にIFN-γ、IL-10陽性細胞比が増加した。
4.菌感染樹状細胞放出エキソソームで発現上昇miRNAはほとんど機能が不明であったが、既知のmiR373はE-カドヘリン蛋白の制御をするものであった。これは新たな抗原性分子探索の可能性を示した。
5.ハンセン病の発症を長期間予防には、メモリーT細胞の機能的維持が必須であり、その際にはブースターワクチンが必要となる。HSP70-MMP-II融合リコンビナント蛋白は、ナイーブマウスT細胞を活性化しメモリーT細胞を効率的に産生した。初回免疫BCGワクチンが産生したメモリーT細胞の機能維持に有効と考えられた。
6.改変BCGの構築では、薬剤耐性遺伝子の除去、細菌学的検討を進めた。構築株は、親株より生育速度は遅かった。高度発現クローンは、培地継代中に抗原発現が不調となった。しかし、中等度発現クローンは発現が維持され、その免疫原性の検討が必要と考えられた。カニクイザルらい菌感染系では、母仔群4頭にらい菌遺伝子が検出された。妊娠期の接種がより早期の菌排出に寄与したと考えられた。
7.ハンセン病診療に主体性を持つべき皮膚科医に対する教育を行い(福岡市博多区、10月27日)、ハンセン病の知識を向上させ、ハンセン病診療が可能になった。また、皮膚科医間でのネットワークの構築を行い、社会で生活するハンセン病回復者が、気軽に受診し、病気について相談できるようにした。
結論
各研究課題は、次年度以降に向けさらなる発展を示す成果であったと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318031Z