動物由来感染症に対するリスク管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
201318028A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来感染症に対するリスク管理手法に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(千葉科学大学 危機管理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 門平 睦代(帯広畜産大学 畜産フィールド科学センター)
  • 井上 智(国立感染症研究所)
  • 今岡 浩一(国立感染症研究所)
  • 濱野 正敬(一般社団法人予防衛生協会)
  • 八木 欣平(北海道立衛生研究所)
  • 前田 健(山口大学 農学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
26,039,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、メインテーマとして、階層化因子一対比較法(AHP法)を用いて重要度に応じて序列化した約100種の人獣共通感染症のうち、早急に対応の必要な5種類の感染症(Bウイルス病、リッサウイルス感染症(狂犬病を含む)、エキノコックス症、高病原性鳥インフルエンザHPAI, カプノサイトファーガ症)と緊急課題キンカジュー回虫症について、有効なリスク管理方法を開発する研究を進めた。これまでのように感染症リスクの警鐘、教育・啓蒙だけでなく、疫学調査等に基づくリスクシナリオを作成し、重要管理点を絞り込み、現実的にリスク回避する方法を研究することを目指した新しい試みである。
研究方法
研究統括班(研究代表者を含む司令塔)は、基本的に月1回検討会を開催し、各研究グループの進捗状況の把握、個々の研究の方向性と戦略について検討した。さらに研究統括班会議に研究分担者等を順次招聘し、個別の研究の進捗状況と総括班の戦略をハーモナイズし、材料採取のためのコーディネーターとしての機能も果たした(フィリピンでのコウモリ採取、Bウイルス・フリー研究のための動物園との交渉、イノシシ等の野生動物の材料収集など)。また、2回の総合班会議を開き、全体で研究班の目的を確認し、各研究に関する情報交換を行った。個別課題については、カプノサイトファーガ症、エキノコックス症は、臨床家と共同研究を進めた。他の感染症は、国内での発症例がなく、ヒトに来る前のリスク回避方法の検討に重点を置いた。
結果と考察
輸入キンカジュー回虫の汚染状況把握、駆虫の有効性評価、実験感染によるリスク評価を終えた。安全指針のドラフト案を作成した。26年度指針として公表する予定(吉川、宇根、杉山)。北海道、関東の動物園サル山の調査を進めた。陽性個体を間引き、ウイルス再活性化の頻度・ウイルスゲノムの体内分布の解析を進め、Bウイルス・フリー動物園にするための検討を進めた。他の動物園にも広げていく予定 (濱野、門平、宇根、吉川)。国内犬狂犬病発生時対応のガイドライン2013を作成し関係機関に配布。52年ぶりに野生動物で狂犬病が発生した台湾の研究者と協力し、これまで準備されなかった野生動物での狂犬病統御の指針作成のための検討を開始した。また、intrabodyが細胞内シグナル分子と結合した「キメラ受容体」を用いて病原体検査法の開発を行うことを目指している(井上、加来、河原)。蝙蝠、アライグマ、猪のインフルエンザウイルス抗体、抗原調査を進め、陽性例を確認。ウイルス分離を試みるとともに、北海道の放牧豚についてHPAIの疫学調査を進める(前田、門平)。北海道庁と共同でエキノコックス・フリーモデル区域の作出を試みる。終宿主であるキタキツネのベイトによる駆虫とエゾヤチネズミの原頭節形成阻止方法の有効性を評価する(八木、神谷他)。カプノサイトファーガでは、患者血清を用いた遺伝子検査に成功した。新しいプライマーを設計し、また遺伝子解析を進め、カプノサイトファーガ属菌の遺伝的多型を認めた。より高精度・高感度の迅速診断法の開発、新規治療法の開発を目指す(今岡他)。
結論
行政への貢献として、国内犬狂犬病発生時の危機管理対応マニュアル(指針2013)を配付した。時間がかかるが台湾の事例を共同研究し、野生動物での狂犬病発生時の指針を作成する予定である。緊急課題として取り組んだキンカジュー回虫症では、必要な研究成果が全て得られたので、ガイドラインを作成し公表する。民間への貢献としては、Bウイルス・フリー動物園サル山、エキノコックス・フリー北海道地域等、特定病原体フリーのコロニーやゾーンの作成手順が確立されれば、動物由来感染症の危機管理上、新しい方法として普及できる。研究班の成果は、2013年11月の厚労省主催技術研修会で、吉川(蝙蝠由来感染症)、井上(台湾の野生動物狂犬病事例)、今岡(カプノサイトファーガ等、伴侶動物由来細菌感染症)が講演を行い、研究成果の普及に努めることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318028Z