病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201318027A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 淳(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 八柳 潤(秋田県健康環境センター 細菌班)
  • 甲斐明美(東京健康安全研究センター 微生物部)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部細菌課)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター 細菌科)
  • 世良暢之(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村上耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 藤井克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 朴 英斌 (パク ヨンビン)(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 三瀬敬治(札幌医科大学医学部衛生学 医療人育成センター)
  • 鈴木善幸(名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科)
  • 朴三用(横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科)
  • 佐藤裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
32,955,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因ウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、高度な解析能を有する手法を標準化して利用した病原体解析を行う。また、原因解明のために解析結果を関連機関において共有して当該感染症の予防や制御に資する情報が提供可能なネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベース(DB)をオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) BioNumerics(BN)とBNサーバーを活用し、腸管出血性大腸菌(EHEC)に関する菌株解析情報DBの検討・構築・整備を行う。菌株解析情報としてはパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)、IS-printing system(ISPS)などが含まれる。当該サーバーおよび研究班ネットワーク並びに食中毒支援システム(NESFD)を利用した情報共有ネットワーク化を進める。
2) ノロウイルスにおいて、病原性と関連する遺伝子産物のクローン化、大腸菌における発現および精製、精製タンパクの結晶化、並びに構造解析を行う。国際的なNoronetと共同作業を進め、新規タイピング法を整備する。ロタウイルスのサブタイピングを目的としたポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)によるタイピングを検討する。上記解析情報をCaliciWebと統合したGatVirusWebの構築・整備し、流行予測プログラムの開発等を行い更なる充実を図る。
結果と考察
細菌では、パルスネットを有効に機能させるため継続的な精度管理を実施するとともに、BNサーバーを利用したPFGEのDB構築を継続した。当該PFGE-DBは6分担研究者がオンライン利用できるようになっている。さらに、EHEC O157のISPS-DBを改良し、入出力・取り込み機能ならびに検索機能を強化した。平成25年7月に発生したPFGE TN#h406広域事例などにおいて上記ネットワークおよびNESFDを通じた情報共有を行った。ウイルスでは、立体構造のデータ、タンパク質の機能も加味した分子疫学ツールである、GatVirusWebの構築を目指し、ノロウイルスの機能タンパク質RpRdのクローン化、発現精製、タンパク質結晶化に成功し、構造解析に至っている。また、ノロウイルス流行株のゲノム解析から、その多様性と、キャプシドタンパク質コード領域における安定性とが見出された。ノロウイルスの新規国際基準に協調したタイピングシステムの構築を行った。ロタウイルスの分子疫学基盤構築のため、RNA-PAGEによる簡便かつ網羅的スクリーニング手法に適した機種を選定およびシステムの構築を進めた。
結論
効率的な食品由来感染症探知システムを構築するために、病原体解析情報DBとして細菌ではパルスネット、ウイルスではCaliciWebを継続的に稼働させている。CaliciWebはロタウイルスなどのDBを実装させ、さらにGatVirusWebとして発展させることを計画している。これらのシステムではそれぞれのDBに正確な病原体解析情報が蓄積されることが必須であることから、解析手法の精度管理とともに、より解析能力が高く簡便迅速な手法を採用してゆくことが重要である。また、効果的な情報共有を進めるためのインターフェースや情報共有ルートの開発・検討なども必要となってくる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318027Z