性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201318026A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 谷畑 健生(厚生労働省国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 松本 哲朗(産業医科大学 医学部)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学 東医療センター)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学 大学院医学研究科)
  • 川名 敬(東京大学 医学部)
  • 伊藤 晴夫(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 白井 千香(神戸市保健福祉局)
  • 小森 貴(日本医師会)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 田中 一志(神戸大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,697,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者変更(新研究者) 伊藤 晴夫(平成25年9月5日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の性感染症罹患者は、2010年で下げ止まり、社会的脅威となる懸念あり。本研究班では2012年~2015年までの3年間に、特定指針に沿い、多方面の研究に取り組む。
研究方法
(1)発生動向調査から見た性感染症
 性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症及び梅毒の最近の動向を解析。
(2)性感染症全数把握調査(センチネルサーベイランス)から見た動向
 全国7県データから、人口10万人対人年値を、5歳刻み毎に推計。
(3)淋菌の微量液体希釈法での薬剤感受性(MIC)測定結果について
 兵庫県下で2012年度臨床分離された淋菌78株の各種抗菌薬MICを測定。
(4)M. genitalium検査の実用化
 multiplex PCR法と、real-time PCR法とを用いで、検出率を比較。
(5)HPVと子宮頸癌についての啓発
 性感染症者または既往者について陰茎・子宮頸部より擦過細胞を採取しHPV検査を施行。
(6)C. trachomatisの変異検索と有効な治療法確立に向けて
 STFXとAZM (2g)について、C. trachomatis, M. genitalium, U. urealyticum感染に対する有効性を評価。
(7)性感染症の若者が受診しやすいシステムの構築~HPVワクチンアンケート調査~
 婦人科を検診受診の20~37歳、月経異常で受診の20歳未満の性交渉を有する女性57名を対象にHPVハイリスク型ウイルスジェノタイピング施行。
(8)淋菌の分子タイピング、耐性検索に関する研究
 AZM、CTRX耐性淋菌の解析を行うことにより、その動向を考察。
(9)耳鼻咽喉科外来における咽頭の淋菌・クラミジア検査結果
 口内炎、咽頭炎、扁桃炎、咽喉頭異常感の患者、咽頭の性感染検査希望者に咽頭と上咽頭の淋菌・クラミジア検査を実施。
(10)若年者の口腔内クラミジア・淋菌感染に関する研究
 保健所HIV検診若年者に口腔内保菌検査と、性行動アンケート調査。
結果と考察
(1)性器クラミジア感染症は、減少が鈍化。性器ヘルペスは、男女ともに増加傾向。尖圭コンジローマは、男女ともに微増。淋菌感染症は、男性では小幅な増減。梅毒は2013年1226例で2000年以降最多。
(2)男性でのクラミジア感染症は増加。淋菌感染症は同等。前年度より 5歳若年化。女性での5種性感染症の頻度は同様。性感染症の実数発症者は全国でほぼ横ばいもしくはクラミジア感染症が増加。これらは定点動向調査の結果と符合。
(3)SPCMおよびCTRXに対する耐性株はなし。PCGで全株耐性。LVFXの多くが耐性もSTFXは全株0.5μg/mL以下。MINOの多くが耐性。AZMには1株耐性。CFIXには0.12と0.25μg/mLが大多数。MRPMでは全株が0.25μg/mL以下。
(4)M.genitaliumは16S rRNA法で17例(12.4%)、RT法で16例(11.7%)が検出。前者の陽性一致率94.4%、陰性一致率98.3%。
(5)HPV陰性者は7例(男性1例、女性6例)、HPV陽性者は21例(男性7例、女性14例)。尖圭コンジローマタイプHPVが8例(女性7名)、ハイリスクHPVが13例(女性10名)。約30%が尖圭コンジローマ不顕性感染、約50%がハイリスクHPV感染。
(6)STFXとAZM (2g)の非淋菌性尿道炎に対する有効性から、ガイドラインの推奨治療薬に加えることが妥当。
(7)HPVハイリスク型が2株以上検出される症例約20%。HPVワクチン株保有者38.6%、HPV非ワクチン型のハイリスク型38.6%。HPVハイリスク株はワクチン株45.3%、非ワクチン株54.7%。HPV16/18型は細胞診異常に強く関連。HPV16/18型以外のハイリスク型の一部に細胞診異常あり、これらウイルス型に対するワクチン開発必要性が示唆。
(8)AZM耐性のMLST型1901 / NG-MAST型 1407株に、CTRX耐性株の変異が導入されると、CTRX/AZM2剤併用療法無効菌株の出現が危惧。
(9)男性112、女性97計209人が対象。21人の咽頭から淋菌、4人の咽頭からクラミジア検出。1人は淋菌・クラミジアが同時検出。淋菌の検出は中咽頭スワブで最多、淋菌陽性者は21人中18人の咽頭スワブから淋菌が検出。21人中10人うがい液も陽性。クラミジア陽性4人全員の上咽頭スワブでクラミジアが検出、4人中2人のうがい検体から検出。
(10)クラミジアと淋菌の咽頭保菌をうがい液核酸増幅法検出するには、さらに要検討。
口腔性交は腟性交と同様、日常的な性行動であるが、一般にコンドームによる感染予防行動はなされていない。
結論
 各テーマの今後継続的検討が肝要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318026Z