文献情報
文献番号
201318017A
報告書区分
総括
研究課題名
予防接種に関するワクチンの有効性・安全性等についての分析疫学研究
課題番号
H23-新興-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(大阪市立大学 大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
- 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
- 菅野 恒治(菅野小児科医院)
- 星 淑玲(筑波大学医学医療系)
- 小島原 典子(東京女子医科大学公衆衛生学・衛生学第二)
- 砂川 富正(国立感染症研究所感染症疫学センタ)
- 浦江 明憲((株)メディサイエンスプラニング)
- 鈴木幹三(名古屋市千種保健所)
- 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
- 出口 昌昭(市立岸和田病院)
- 吉田 英樹(大阪市健康局)
- 大藤 さとこ(大阪市立大学大学院医学研究科)
- 中野 貴司(川崎医科大学附属川崎病院)
- 小笹 晃太郎(公益財団法人放射線影響研究所)
- 入江 伸(医療法人相生会九州臨床薬理クリニック)
- 都留 智巳(医療法人相生会ピーエスクリニック)
- 岡田 賢司(福岡歯科大学)
- 井手 三郎(聖マリア学院大学)
- 伊藤 雄平(久留米大学医療センター)
- 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
90,412,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
(1)季節性インフルエンザワクチンの免疫原性、有効性、安全性をハイリスク集団別に提示。
(2)百日咳(DPT)と高齢者肺炎(肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチン)について、ワクチン有効性と発病関連因子を提示。
(3)医療経済モデルを構築し、費用効果的選択肢(公費助成額など)を提示。
(4)上記研究のため、微生物学者による支援体制を確立し、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
(5)厚労省指導による追加研究
①妊婦でインフルエンザの健康影響を調査し、接種制度化の要否判断の基礎資料を得る(WHOは妊婦を最優先接種対象に指定)。
②インフルエンザワクチンの有効性モニタリングを継続的に実施し、有効性を要約提示。
(2)百日咳(DPT)と高齢者肺炎(肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチン)について、ワクチン有効性と発病関連因子を提示。
(3)医療経済モデルを構築し、費用効果的選択肢(公費助成額など)を提示。
(4)上記研究のため、微生物学者による支援体制を確立し、病原体特性を考慮した堅固な結果を得る。
(5)厚労省指導による追加研究
①妊婦でインフルエンザの健康影響を調査し、接種制度化の要否判断の基礎資料を得る(WHOは妊婦を最優先接種対象に指定)。
②インフルエンザワクチンの有効性モニタリングを継続的に実施し、有効性を要約提示。
研究方法
疫学、小児科、臨床薬理学、微生物学などの専門家が、以下7つの分科会において共同研究:(1)インフルエンザ、(2)百日咳、(3)高齢者肺炎、(4)新規ワクチン、(5)費用対効果、(6)微生物検索・病原診断、(7)広報啓発。加えて、(8)厚労省指導による追加研究を実施。
結果と考察
主要な結果を示す。
(1)インフルエンザ
①保育園児629人では、ワクチン接種(1回以上)の「インフルエンザ診断」に対する相対危険は0.42(0.23-0.76)。
②小学生(4校:2,333人)では、ワクチン接種の調整ORは「A型インフルエンザ」に対して0.55(0.38-0.80)、「B型インフルエンザ」に対して0.85(0.48-1.50)。
③重症心身障害者101人(平均41.9歳)のうち、前シーズンにインフルエンザを発病した者では、非発病者に比べて、接種前抗体価が高く、接種後の抗体保有率(sP:HI価≧1:40の割合)も有意に高い(88% vs. 41%)。
④へき地在住高齢者124人(平均76.9歳、男43人)では、インフルエンザワクチン2回接種後のsPは、接種4週後でH1:56%、H3:57%、B:31%、接種22週後(流行後)でH1:36%、H3:52%、B:22%。
(2)百日咳分科会
多施設共同・症例対照研究を実施(対照はBest-friend methodにより選択)。症例72人、対照97人を蓄積。調整ORは、DPT接種で0.20(P=0.045)。ステロイド投与歴(OR=3.98)、周囲に咳患者(4.62)でリスク増。居住スペース1m2増(0.99)でリスク低下。
(3)高齢者肺炎
多施設共同・症例対照研究を実施(対照は性・年齢が対応する同一医療機関受診患者)。症例157 人、対照248人を蓄積。調整ORは、インフルワクと肺炎球菌ワクの「両方接種なし」に比べて、「インフルワクのみ接種」0.64(P=0.211)、「肺炎球菌ワクのみ接種」0.60(P=0.356)、「両方接種」0.26(P=0.008)。
(4)新規ワクチン
保育園児632人では、肺炎球菌ワクチン接種の調整ハザード比(HR)は、急性中耳炎に対して0.41(0.31-0.55)、肺炎に対して0.26(0.14-0.52)。
(5)費用対効果
1歳児に対するムンプスワクチンを定期接種化した場合の費用効用分析を実施。1回接種のプログラムは費用効率的。2回接種のプログラムは、2回目接種を3~5歳に受ける場合が、費用対効果に優れる。
(6)微生物検索・病原診断
インフルワクで誘導されたA(H3)野生株に対する抗体測定(2012/13、32人)。2012/13の野生株[A/大阪/12/2013、A/大阪/24/2013]に対して、抗体上昇倍数1.1~1.3倍、抗体保有率25%。2011/12シーズンより成績低下。
(7)広報啓発
インフルエンザワクチンに関するUS-ACIPの勧告2013年版を翻訳、(財)日本公衆衛生協会より出版。
(8)厚労省指導による追加研究
①妊婦におけるインフルエンザの健康影響調査
大阪産婦人科医会の協力を得て、妊婦20,208人を対象に、インフルエンザの健康影響を調査中。
②インフルエンザワクチンの有効性モニタリング
6歳未満児では、迅速診断陽性インフルエンザに対するワクチン接種(1回以上)の調整オッズ比(OR)は0.32(95%CI:0.12-0.83)であり、接種回数が増えるほどORは低下傾向。
(1)インフルエンザ
①保育園児629人では、ワクチン接種(1回以上)の「インフルエンザ診断」に対する相対危険は0.42(0.23-0.76)。
②小学生(4校:2,333人)では、ワクチン接種の調整ORは「A型インフルエンザ」に対して0.55(0.38-0.80)、「B型インフルエンザ」に対して0.85(0.48-1.50)。
③重症心身障害者101人(平均41.9歳)のうち、前シーズンにインフルエンザを発病した者では、非発病者に比べて、接種前抗体価が高く、接種後の抗体保有率(sP:HI価≧1:40の割合)も有意に高い(88% vs. 41%)。
④へき地在住高齢者124人(平均76.9歳、男43人)では、インフルエンザワクチン2回接種後のsPは、接種4週後でH1:56%、H3:57%、B:31%、接種22週後(流行後)でH1:36%、H3:52%、B:22%。
(2)百日咳分科会
多施設共同・症例対照研究を実施(対照はBest-friend methodにより選択)。症例72人、対照97人を蓄積。調整ORは、DPT接種で0.20(P=0.045)。ステロイド投与歴(OR=3.98)、周囲に咳患者(4.62)でリスク増。居住スペース1m2増(0.99)でリスク低下。
(3)高齢者肺炎
多施設共同・症例対照研究を実施(対照は性・年齢が対応する同一医療機関受診患者)。症例157 人、対照248人を蓄積。調整ORは、インフルワクと肺炎球菌ワクの「両方接種なし」に比べて、「インフルワクのみ接種」0.64(P=0.211)、「肺炎球菌ワクのみ接種」0.60(P=0.356)、「両方接種」0.26(P=0.008)。
(4)新規ワクチン
保育園児632人では、肺炎球菌ワクチン接種の調整ハザード比(HR)は、急性中耳炎に対して0.41(0.31-0.55)、肺炎に対して0.26(0.14-0.52)。
(5)費用対効果
1歳児に対するムンプスワクチンを定期接種化した場合の費用効用分析を実施。1回接種のプログラムは費用効率的。2回接種のプログラムは、2回目接種を3~5歳に受ける場合が、費用対効果に優れる。
(6)微生物検索・病原診断
インフルワクで誘導されたA(H3)野生株に対する抗体測定(2012/13、32人)。2012/13の野生株[A/大阪/12/2013、A/大阪/24/2013]に対して、抗体上昇倍数1.1~1.3倍、抗体保有率25%。2011/12シーズンより成績低下。
(7)広報啓発
インフルエンザワクチンに関するUS-ACIPの勧告2013年版を翻訳、(財)日本公衆衛生協会より出版。
(8)厚労省指導による追加研究
①妊婦におけるインフルエンザの健康影響調査
大阪産婦人科医会の協力を得て、妊婦20,208人を対象に、インフルエンザの健康影響を調査中。
②インフルエンザワクチンの有効性モニタリング
6歳未満児では、迅速診断陽性インフルエンザに対するワクチン接種(1回以上)の調整オッズ比(OR)は0.32(95%CI:0.12-0.83)であり、接種回数が増えるほどORは低下傾向。
結論
主要な結論は以下の通り。
(1)高齢者のインフルエンザ抗体保有率は、流行後でも接種後レベルの65%程度を維持する。
(2)百日咳に対しDPTの予防効果は約80%、ステロイド投与はリスクを上げる。
(3)高齢者へのインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン両方接種は肺炎のリスクを1/4に低減。
(4)インフルエンザワクチンの有効性モニタリングを6歳未満児で試験的に実施し、流行期間中に70%程度の有効性を検出。
(1)高齢者のインフルエンザ抗体保有率は、流行後でも接種後レベルの65%程度を維持する。
(2)百日咳に対しDPTの予防効果は約80%、ステロイド投与はリスクを上げる。
(3)高齢者へのインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン両方接種は肺炎のリスクを1/4に低減。
(4)インフルエンザワクチンの有効性モニタリングを6歳未満児で試験的に実施し、流行期間中に70%程度の有効性を検出。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
-