文献情報
文献番号
201318013A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザウイルス複製に関与する宿主因子とウイルス因子のインターフェースを標的とした新規抗ウイルス薬探索の基盤研究
課題番号
H23-新興-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
永田 恭介(筑波大学 永田特別研究室(医学医療系))
研究分担者(所属機関)
- 朴 三用(横浜市立大学 生命医科学研究科)
- 夏目 徹(産業技術総合研究所 創薬分子プロファイリング研究センター)
- 信澤 枝里( 国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,974,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存の抗インフルエンザウイルス薬は、変異率の高いウイルス遺伝子を標的としたものが主体であり、薬剤耐性株が出現しやすい。この問題を克服する一案として、高度に保存されたウイルス因子、もしくはウイルス因子に作用する宿主因子とウイルス因子の相互作用を標的とした新規抗ウイルス薬を開発することが挙げられる。宿主因子に変異が入ることは無く、そのために宿主因子と相互作用するウイルス因子側の相互作用面にも変異は入りにくい。このような新規抗ウイルス薬開発には、ウイルス因子と宿主因子の機能および構造を明らかにすることが必須である。
研究方法
リバビリンはGTPのヌクレオチドアナログであり、細胞内では(1)プリンのde novo合成系を阻害、(2)ウイルスポリメラーゼに取り込まれて伸長阻害、(3)ウイルスゲノムの新規合成鎖に取り込まれて変異を誘導することで、ウイルスの増殖を阻害すると考えられている。そこで、ウイルスポリメラーゼの機能ドメインを明らかにするため、リバビリンに耐性を示すウイルスポリメラーゼの活性中心サブユニットであるPB1の変異体の単離を行った。
感染細胞核内で複製されたウイルスRNP複合体は、核外輸送後、細胞膜まで輸送されてウイルス粒子として出芽する。しかし、ウイルスRNP複合体の細胞内動態を制御する機能分子はほとんど明らかにされていない。これまで、ウイルスRNP複合体に結合する宿主因子として、Y-box binding protein-1(YB-1)を同定している。本年度では、感染細胞でのYB-1の詳細な局在を超解像顕微鏡を用いて明らかにした。
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはPB1を中心として、PB1のN末端にPA、およびC末端にPB2がそれぞれ結合した複合体を形成する。これまでに、PB1とPAの相互作用部位の部分結晶構造を決定することに成功している。そこで、抗ウイルス薬候補のスクリーニング系を確立する目的で、PB1-PA相互作用部位を標的として、in silicoスクリーニング→低分子化合物ライブラリー→ウイルスポリメラーゼを阻害する候補化合物探索のシステムの構築を行った。
感染細胞核内で複製されたウイルスRNP複合体は、核外輸送後、細胞膜まで輸送されてウイルス粒子として出芽する。しかし、ウイルスRNP複合体の細胞内動態を制御する機能分子はほとんど明らかにされていない。これまで、ウイルスRNP複合体に結合する宿主因子として、Y-box binding protein-1(YB-1)を同定している。本年度では、感染細胞でのYB-1の詳細な局在を超解像顕微鏡を用いて明らかにした。
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはPB1を中心として、PB1のN末端にPA、およびC末端にPB2がそれぞれ結合した複合体を形成する。これまでに、PB1とPAの相互作用部位の部分結晶構造を決定することに成功している。そこで、抗ウイルス薬候補のスクリーニング系を確立する目的で、PB1-PA相互作用部位を標的として、in silicoスクリーニング→低分子化合物ライブラリー→ウイルスポリメラーゼを阻害する候補化合物探索のシステムの構築を行った。
結果と考察
リバビリンに耐性を示すウイルスポリメラーゼの活性中心サブユニットであるPB1の変異体を単離した結果、PAサブユニットとの結合ドメイン(1~14 a.a.)に近接したAsp27のAsnへの点変異が耐性変異として同定された。また、Asp27はA型インフルエンザウイルスで特異的に保存されている部位であった。プリン合成を阻害するメソトレキサートを用いて、細胞内のプリンヌクレオチド量を低下させた場合でも、Asp27Asn変異は耐性を示した。
感染に応答して、YB-1は核内ドメインの1つである、PMLボディでウイルスRNP複合体と共局在し、感染後期に移行すると複製されたウイルスRNP複合体と共に核外輸送され、細胞質で微小管合成中心(Microtubule organizing center; MTOC)に集積した。さらに、MTOCに集積したYB-1の詳細な細胞内局在を超解像顕微鏡で観察したところ、YB-1は中心体の構成因子として、中心小体の周囲でプロペラ様の局在を示すことも明らかにした。
PB1-PA結合ドメインの結晶構造データより、PAは非常に大きなドームを形成し、そこにPB1のN末端が挿入される構造を形成することが明らかになっている。本年度では、PAのドームを空間的に充填することで、PB1との結合を阻害するような化合物をin silicoで探索できる方法(Q-site finder法)を構築し、データベースから化合物をスクリーニングした。その結果、303種類の化合物が選定され、その抗ウイルス活性を検討したところ、IC50値が1 M前後の非常に阻害活性が高い化合物を取得することに成功した。
感染に応答して、YB-1は核内ドメインの1つである、PMLボディでウイルスRNP複合体と共局在し、感染後期に移行すると複製されたウイルスRNP複合体と共に核外輸送され、細胞質で微小管合成中心(Microtubule organizing center; MTOC)に集積した。さらに、MTOCに集積したYB-1の詳細な細胞内局在を超解像顕微鏡で観察したところ、YB-1は中心体の構成因子として、中心小体の周囲でプロペラ様の局在を示すことも明らかにした。
PB1-PA結合ドメインの結晶構造データより、PAは非常に大きなドームを形成し、そこにPB1のN末端が挿入される構造を形成することが明らかになっている。本年度では、PAのドームを空間的に充填することで、PB1との結合を阻害するような化合物をin silicoで探索できる方法(Q-site finder法)を構築し、データベースから化合物をスクリーニングした。その結果、303種類の化合物が選定され、その抗ウイルス活性を検討したところ、IC50値が1 M前後の非常に阻害活性が高い化合物を取得することに成功した。
結論
PB1はウイルスポリメラーゼの酵素活性中心であり、RNA合成の基質となるヌクレオチドの認識に関与する部位を決定することは重要である。本研究から、プリン塩基の認識に関与する部位としてAsp27が同定された。今後、さらにヌクレオチドの認識機構を解明することで、よりウイルスポリメラーゼに特異的な抗ウイルス薬の設計につながる可能性がある。
感染特異的にMTOCへとリクルートされたYB-1は、中心体の構成因子として特徴的な細胞内局在を示したことから、YB-1は中心体の機能制御に関与することが推測される。
本年度、Q-site finder法によって新たに抗ウイルス活性をもつ化合物を同定することに成功した。今後さらに誘導体展開を行う。
感染特異的にMTOCへとリクルートされたYB-1は、中心体の構成因子として特徴的な細胞内局在を示したことから、YB-1は中心体の機能制御に関与することが推測される。
本年度、Q-site finder法によって新たに抗ウイルス活性をもつ化合物を同定することに成功した。今後さらに誘導体展開を行う。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
-