ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対する認知行動療法の効果:CRAFTプログラムの適用 

文献情報

文献番号
201317106A
報告書区分
総括
研究課題名
ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対する認知行動療法の効果:CRAFTプログラムの適用 
課題番号
H25-精神-若手-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
境 泉洋(徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対して,当事者の受療を促進するための効果的なプログラムを構築することは,自ら支援機関を利用することが少ないとされるひきこもり支援において重要な課題となっている。本研究では,Community Reinforcement and Family Training(以下,CRAFT)プログラムを応用してひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族を支援するプログラムを作成し,その効果を検証することを目的とした。
研究方法
今年度は,①CRAFTの実施者養成として,CRAFTの3つの研修方法を行った。1つ目は,CRAFTマニュアルの訳本を用いた研修である。2つ目は,CRAFTプログラムの開発者であるMeyers氏による2日半の集中型研修である。集中型研修のためにMeyers氏をアルコール依存領域の専門家と連携して招聘した。3つ目は,日本語による1日の集中型研修である。これらの研修を通して,CRAFTを学ぶ際の質疑応答(Q&A)集を作成した。また,②CRAFTの効果検証方法を検討するため,CRAFTの治療プロトコルを作成し倫理委員会に申請し承認を得た。また,そのプロトコルに基づく介入を実施し,パイロットスタディを開始した。
結果と考察
 本研究において3つの研修を行い,70名程度の実施者を養成することができた。実施者養成におけるQ&A集から,CRAFTを学ぶ人が抱きやすい誤解について明確にできた。その一つは,CRAFTプログラムは,マニュアル(Smith & Meyers, 2004)に記載されている順番に沿って実施するのではなく,対象者に合わせて柔軟に運用する必要があるということである。また,多くの人が誤解しやすい点として,CRAFTプログラムで用いられている幸福感尺度について,ひきこもり当事者の「問題」についての幸福感を評定するのではなく,家族自身の「問題」について評定するという点が挙げられる。このことは,CRAFTプログラムが,ひきこもり当事者の受療を促進するプログラムであるため,実践者が抱きやすい誤解である。CRAFTプログラムでは,家族自身を支援することを最優先にしているため,家族自身の「問題」についての幸福感を評定する必要がある。これら以外にも,研修においてなされた質疑応答からCRAFTを実施するうえでのQ&A集を作成できたことは,今後の支援者養成において有益であると考えられる。
 効果検証として3例を対象にCRAFTを開始した。実施期間は,大学臨床心理相談室で2例,行政機関で1例であった。今後ケースを蓄積していくうえで,県外の支援機関とも連携して行く必要がある。
 本年度ケース収集が困難であった要因とその対策について考察を加えたい。一つ目は,研究プロトコルが膨大であり,行政機関に相談に来た家族が研究参加を躊躇するという点である。この点に関しては,研究プロトコルを極力簡略化し,通常の支援業務において実施できる形式を検討したい。二つ目は,家族を対象とした個別の定期的支援を行っている機関が少ないということである。家族支援として,集団による家族教室や数回の個別面接が一般的である。こうした点については,家族を対象とした定期的な個別支援を行っている機関に協力を要請するようにしたい。
結論
ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害へのCRAFTの効果を検証するため,CRAFTの実施者養成を行い,試行的実践を行った。今回得られた知見をもとに,CRAFTの実施マニュアル作成に向けて,事例の収集と実践上の工夫について検討を進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317106Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,080,000円
(2)補助金確定額
2,080,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 121,060円
人件費・謝金 645,250円
旅費 483,320円
その他 350,370円
間接経費 480,000円
合計 2,080,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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