医療観察法対象者の円滑な社会復帰に関する研究【若手育成型】 医療観察法指定医療機関ネットワークによる共通評価項目の信頼性と妥当性に関する研究

文献情報

文献番号
201317104A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法対象者の円滑な社会復帰に関する研究【若手育成型】 医療観察法指定医療機関ネットワークによる共通評価項目の信頼性と妥当性に関する研究
課題番号
H25-精神-若手-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
壁屋 康洋(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部) 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 共通評価項目は医療観察法医療において治療必要性や治療の進展を測る尺度として、鑑定・入院・通院の局面で一貫して全国で用いることが定められているが、尺度としての標準化が未だなされていない。医療観察法医療の均霑化が共通評価項目の目的の1つでもあるため、科学的な裏付けを持った尺度として標準化することは急務である。本研究は共通評価項目の信頼性と妥当性に関する研究を推し進め、標準化された尺度として改訂することを目的とした一連の研究のうち、共通評価項目の予測妥当性を評価するものである。入院処遇から通院処遇に移行した後の暴力、問題行動等についての予測妥当性の研究を行い、共通評価項目17中項目と61小項目の予測力を明らかにすることを目的としている。
研究方法
 予測妥当性研究のために収集したデータは2008年4月1日~2012年3月31日の期間に入院決定を受けた対象者のものであり、2013年10月1日時点で研究協力が得られた22の指定入院医療機関からのデータを用いた。追跡調査は医療観察法入院対象者が通院処遇に移行した後の問題行動や入院の有無について、指定通院医療機関に情報収集の協力を要請して行った。そのため処遇終了事例は追跡調査の対象から除外し、通院処遇終了時ないしデータ収集時点の2013年10月1日を追跡打ち切り日とした。
 予測妥当性の研究は以下の8種の解析を行い、いずれも共通評価項目の各項目がそれぞれの事象をどの程度できるか評価するため、項目ごとにCox比例ハザードモデルによる解析を行った。Cox比例ハザードモデルにおいて比例ハザード性を確認することができなかった場合にはログランク検定および一般化Wilcoxon検定によって生存曲線の群間比較を行った。
 8種の予測妥当性研究の解析は以下の通りである。
1)医療観察法指定入院医療機関退院後の精神保健福祉法入院の予測
2)症状悪化による精神保健福祉法入院の予測
3)退院後の問題行動の予測(放火、性的な暴力、身体的な暴力、非身体的な暴力、医療への不遵守、Al・物質関連問題の6種のいずれかの問題行動)
4)退院後の自傷・自殺企図の予測
5)退院後の暴力の予測(性的な暴力、身体的な暴力、非身体的な暴力の3種のいずれかの暴力)
6)入院中の暴力の予測
7)入院中の自殺企図の予測
8)通院処遇への移行までの期間の予測
結果と考察
 8種の予測妥当性研究のうち、通院処遇への移行までの期間の予測では、共通評価項目17中項目の合計点、および【自殺企図】【個人的支援】【現実的計画】の3項目を除く14の中項目がそれぞれ高いと通院処遇への移行が遅くなりやすいという結果になった。その反面、退院後の精神保健福祉法入院や問題行動を予測する項目は少なかった。【衝動コントロール】は退院後の問題行動、退院後の暴力、入院中の暴力、入院中の自殺企図を予測、【非社会性】は精神保健福祉法入院、退院後の問題行動、退院後の暴力、入院中の暴力を予測、【個人的支援】は退院後の問題行動を予測、【ストレス】は退院後の問題行動、退院後の暴力、入院中の自殺企図を予測、【物質乱用】は退院後の問題行動を予測、【治療効果】は退院後の問題行動、退院後の暴力を予測した。【非精神病性症状】【自殺企図】【内省・洞察】【生活能力】の4つの中項目は入院中の自殺企図を予測した。反対に【精神病症状】【共感性】【対人暴力】【コミュニティ要因】【現実的計画】【治療・ケアの継続性】の6つの中項目は通院移行までの期間以外には予測できる事象がなかった。
 小項目では、【精神病症状】の小項目は全て通院移行までの期間を予測する一方、【1)通常でない思考内容】【2)幻覚に基づいた行動】【3)概念の統合障害】【5)不適切な疑惑】の4つの小項目は他に何も予測しなかった。 その一方で【衝動コントロール】の全ての小項目は退院後の問題行動、退院後の暴力を予測し、衝動性の問題は大きいと考えられた。【生活能力】の小項目の【3)金銭管理】と【4)家事や料理】は精神保健福祉法入院、退院後の問題行動、退院後の暴力、通院移行までの期間を予測し、基本的な生活能力の不足が通院移行後の暴力や問題行動につながることが示唆された。
結論
 共通評価項目の17の中項目と61の小項目のそれぞれに関し、通院移行後の問題行動、入院中の暴力・自殺企図等の予測力が明らかになった。この結果を基盤とし、今後はROC曲線下面積を用いた解析によって退院後の問題行動や入院中の暴力・自殺企図等を予測する項目の組み合わせを構成する。将来の問題行動等に関して予測力のある項目で共通評価項目を構成することができれば、アセスメントツールを通じて医療観察法医療の均霑化・効率化に寄与することができる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317104Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,550,000円
(2)補助金確定額
4,550,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,879,350円
人件費・謝金 0円
旅費 955,920円
その他 665,000円
間接経費 1,050,000円
合計 4,550,270円

備考

備考
利息270円

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-