重度身体障害者のGH等や一般住宅での生活を可能にする建築的条件に関する研究

文献情報

文献番号
201317097A
報告書区分
総括
研究課題名
重度身体障害者のGH等や一般住宅での生活を可能にする建築的条件に関する研究
課題番号
H25-身体・知的-若手-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松田 雄二(国立お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 障害者自立支援法の成立に伴い、障害者に対するサービスは「日中活動」と「住まいの場」に分けられ、「住まいの場」として「グループホーム・ケアホーム(以下「GH等」とする)が創設された。当初知的・精神障害者のみが利用者とされたGH等は、その後身体障害者も利用可能となった。しかし厚生労働省の資料1)によれば、知的・精神障害者のGH等の利用者がそれぞれ5万人強、2万人弱であるのに対し、身体障害者の利用は4千人強にとどまっている。これは、身体障害者が既存の住宅で生活する場合、風呂場・トイレや段差解消に多大な改修費用を要する事が大きな理由であろう。本研究は、重度身体障害者が生活するための既存住宅の改修方法、また新築住宅の設計要件に関する指針を求め、法の目指す「施設から地域へ」の具体的な方策を示すことを目的とする。
研究方法
 初年度は研究代表者がこれまで知り得た重度身体障害者施設や重度身体障害を持つ障害当事者、並びに家族へのヒアリングを行い住宅環境を明らかにする。加えて、それぞれの住宅・施設等において入浴や排泄などの基本的生活行為の現状を把握し、介助者を含めた利用者の動作範囲や、設備的要件の違いによる諸基本的生活行為の遂行のされ方(本人の不安の多寡、介助者の負担の有無等)について、定量的な検証を行う。
 2年度は、初年度の検証に基づき重度身体障害者の住空間の一部、特にトイレ・浴室などの実物大モックアップの設計・作成を試みる。一般に重度身体障害をもつ人びとは、緊張の有無・麻痺の有無などによって、求められる機能的空間の様相は多様に変化する。そのような人びとの生活行為を許容する生活空間は、一定の骨組み(スタンダード)を持ちながらも、個別性(カスタマイズ)を許容することが求められると考えられる。この2つの視点から検証が可能なモックアップ空間の設計・製作を試みる。
 最終年度である3年度については、本モックアップを実際の重度身体障害を持った当事者によって検証して頂き、具体的な建築設計にフィードバックするためのデータを収集する。またこの結果より、既存住宅を改修等により重度身体障害者でも利用可能にするための技術的な課題を検討し、新築住宅に於いては重度身体障害者が利用可能な面積等諸条件の整理を行う。
結果と考察
 平成25年度の研究によって、重度身体障害者の地域居住の場が不足していること、並びにその原因には重度身体障害者が利用可能な既存建物が不足していること、また新たに施設を建設することが経済的に困難であることが明らかになった。これは、今後身体障害者総合支援法の精神にのっとり進展すべき「地域から施設へ」との施策的目標が、現状では極めて困難なことを示している。
結論
平成25年度の研究では、重度身体障害者グループホーム、並びに旧法上の身体障害者入所授産施設においてヒアリング調査を行うことによって、身体障害者のグループホーム利用が進まない大きな理由にグループホームがバリアフリーであることが明らかになり、研究当初の想定が確かめられた。加えて重度身体障害者グループホームの調査結果からは、重度身体障害者であっても、脱衣室・浴室に充分な面積・設備が備えられれば入浴可能であることが明らかに成り、身体障害者入所授産施設での調査結果からはグループホームに移行した事例でも、重度身体障害者が利用できないものがあることも判明し、併せて当初計画での想定の妥当性が確認された。今後はこれらの特に浴室・トイレのモックアップ等の設計・製作を実施、加えてモックアップの実証実験により、結果に基づき重度身体障害者が利用可能な生活空間、重度身体障害者が居宅的環境で暮らすための諸条件を明らかにすることを予定している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317097Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,100,000円
(2)補助金確定額
1,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 580,260円
人件費・謝金 110,700円
旅費 127,540円
その他 31,500円
間接経費 250,000円
合計 1,100,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-