文献情報
文献番号
201317078A
報告書区分
総括
研究課題名
エクソン53を標的としたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップ治療薬の開発
課題番号
H23-神経-筋-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
- 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
- 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
- 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
- 木村 円(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,548,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対する治療法として、アンチセンス・オリゴヌクレオチド(AO)を用いたエクソン・スキップ治療薬の開発が進行している。特にエクソン51スキップ治療薬の開発が先行しているが、DMD患者の遺伝子変異形式は多様なため、その対象患者の割合は全体の13%に留まる。我々はこのような状況を鑑み、次いで対象患者数が多いエクソンの一つとされるエクソン53を対象とした、同様の機序による治療薬の開発に着手した。企業との共同研究を経て有効なモルフォリノAO配列を決定し、国産初のアンチセンス医薬品としての承認を得るべく、平成25年の医師主導治験開始を目標に開発を進めてきたところである。本研究は平成23年度に採択され、最終年度となる平成25年度は、これまでの非臨床試験の実施経過の総括、被験者組み入れ及び有効性評価等に係る技術的検討、並びにエクソン・スキップの応用拡大を目指した探索的研究について実施した
研究方法
(1)これまでの非臨床試験の実施経過についての検討
本研究の実施施設である国立精神・神経医療研究センター病院、同トランスレーショナル・メディカルセンター、及び同神経研究所に所属する担当者、並びに共同開発企業の担当者からなる作業部会において検討を行った。
(2)臨床試験におけるスクリーニング及び有効性評価方法等に係る検討
被験者由来線維芽細胞に筋分化を誘導し、治験薬を導入してエクソン・スキップの有無と短縮ジストロフィンの発現について評価した。また正常、DMD及びBMD患者由来の生検骨格筋検体を用いてジストロフィン/スペクトリン二重蛍光免疫染色を行い、それぞれの蛍光強度を定量した。
(3)エクソン・スキップの探索的技術開発に係る検討
エクソン45-55を欠いた短縮ジストロフィンのみが全身で発現するトランスジェニックマウスを作出し、その表現形・筋機能について解析を行った。メロシン欠損型先天性筋ジストロフィーモデルであるMDC1Aマウスに対し、LAMA2遺伝子変異をインフレームに誘導するモルフォリノAOを投与して解析を行った。
本研究の実施施設である国立精神・神経医療研究センター病院、同トランスレーショナル・メディカルセンター、及び同神経研究所に所属する担当者、並びに共同開発企業の担当者からなる作業部会において検討を行った。
(2)臨床試験におけるスクリーニング及び有効性評価方法等に係る検討
被験者由来線維芽細胞に筋分化を誘導し、治験薬を導入してエクソン・スキップの有無と短縮ジストロフィンの発現について評価した。また正常、DMD及びBMD患者由来の生検骨格筋検体を用いてジストロフィン/スペクトリン二重蛍光免疫染色を行い、それぞれの蛍光強度を定量した。
(3)エクソン・スキップの探索的技術開発に係る検討
エクソン45-55を欠いた短縮ジストロフィンのみが全身で発現するトランスジェニックマウスを作出し、その表現形・筋機能について解析を行った。メロシン欠損型先天性筋ジストロフィーモデルであるMDC1Aマウスに対し、LAMA2遺伝子変異をインフレームに誘導するモルフォリノAOを投与して解析を行った。
結果と考察
(1)検討の結果、DMDに対する治療薬開発は希少疾患であること、臨床的有効性の検証方法が確立されていないこと、また核酸医薬品自体も比較的新規性の高い医薬品であることから、安全性・品質を適切に検証する方法に不確実性が存在することが改めて認識された。本開発プロジェクトでは当初スケジュールのとおり 平成25年に臨床試験開始に至ったが、これは薬事戦略相談制度を活用した当局との対話により、上記の課題に適切に対処し、開発計画の進捗管理に反映させたことが一因と考えられた。
(2)in vitroアッセイの結果、組み入れ予定被験者細胞に治験薬を暴露したところ、エクソン53スキップと短縮ジストロフィンの発現が全例で認められた。新規エクソン・スキップ治療薬開発に際しての、被験者の適格性評価、及び治験薬の事前有効性評価において、本アッセイは有用と考えられた。また正常、DMD及びBMD患者由来の骨格筋検体間で定量したジストロフィンの蛍光強度は、目視で認められる強度と相関し、臨床試験で採取される検体に適用することの妥当性が示唆された。
(3)エクソン45-55を欠失した短縮ジストロフィンは全長ジストロフィンとほぼ同等の機能を有していた。またこの短縮形ジストロフィンはトランスジェニックマウスにおいて細胞内Ca濃度の上昇を促しfiber type構成比の変化を誘導していた。AOを投与されたMDC1Aマウスでは、標的エクソンのスキップとメロシンの部分的な回復が認められ、有意ではないものの生存期間の延長による症状改善傾向が認められた。
(2)in vitroアッセイの結果、組み入れ予定被験者細胞に治験薬を暴露したところ、エクソン53スキップと短縮ジストロフィンの発現が全例で認められた。新規エクソン・スキップ治療薬開発に際しての、被験者の適格性評価、及び治験薬の事前有効性評価において、本アッセイは有用と考えられた。また正常、DMD及びBMD患者由来の骨格筋検体間で定量したジストロフィンの蛍光強度は、目視で認められる強度と相関し、臨床試験で採取される検体に適用することの妥当性が示唆された。
(3)エクソン45-55を欠失した短縮ジストロフィンは全長ジストロフィンとほぼ同等の機能を有していた。またこの短縮形ジストロフィンはトランスジェニックマウスにおいて細胞内Ca濃度の上昇を促しfiber type構成比の変化を誘導していた。AOを投与されたMDC1Aマウスでは、標的エクソンのスキップとメロシンの部分的な回復が認められ、有意ではないものの生存期間の延長による症状改善傾向が認められた。
結論
本課題ではエクソン53スキップ治療薬の実用化を目指し、医師主導による早期探索的臨床試験開始に向けた技術的課題の検討を行って来たが、非臨床試験の実施や臨床試験プロトコールの作成などが順調に推移し、平成25年に治験計画届出を行い、当該臨床試験を開始した(UMIN CTR: 000010964, ClinicalTrials.gov: NCT02081625)。実施最終年度に治験を開始できたことから、所期の目的はおおむね達成されたと考えられる。また個別の被験者における適格性評価、及び治験薬の事前有効性評価において、in vitroによるスクリーニングは有用であった。治験薬投与後のジストロフィン発現の定量的評価に際しても、二重蛍光免疫染色法を適用できる目途が立った。エクソン45-55スキップによる短縮ジストロフィンの機能解明、及びMDC1Aマウスに対するモルフォリノの応用など、エクソン・スキップの今後の展開に繋がる学術的な成果も得られた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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