様々な依存症の実態把握と回復プログラム策定・推進のための研究 

文献情報

文献番号
201317067A
報告書区分
総括
研究課題名
様々な依存症の実態把握と回復プログラム策定・推進のための研究 
課題番号
H25-精神-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学 2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 小泉 典章(長野県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでわが国では不足している、依存症の回復支援を普及・均てん化することが本研究の目的である。研究対象は1)薬物依存、2)インターネット依存、3)病的ギャンブリング、4)行政機関連携の4つで構成される。
研究方法
薬物依存:すでに効果が確認され普及の取り組みが行われているSMARPPをベースに、実施構造の改訂(回復者のコ・ファシリテーター迎え入れ、関係機関・団体の人的交流、連携強化)とその効果の検証を行う。またCRAFTワークブックを作成する。これらをもとに包括的薬物依存治療プログラムを開発する(1年目)。さらに治療効果の検証、均てん化を実施する(2・3年目)。
インターネット依存:専門外来通院患者対象調査から臨床特性を見出す。先行研究の文献reviewを行う。WHOとの共同プロジェクト、わが国初の縦断的研究の準備に着手する(1年目)。さらにこれらを継続し、診断・治療ガイドライン、スクリーニングテストの開発を実施する(2・3年目)。
病的ギャンブリング:適切な早期介入手法と回復プログラム策定のために、債務問題関連機関における調査、家族を対象とする研究を開始する(1・2年目)。これらの調査をもとに債務問題関連機関における介入のあり方、家族らへの適切な本人への関わり方について検討を行う(3年目)。
行政機関間連携:精神保健福祉センターと保健所の連携体制に関して実態把握と意見集約を行う(1年目)。小泉らが作成したガイドライン運用による精神保健センターと保健所職員への連携意識調査を実施し(2年目)、それに基づきセンター及び保健所職員対象研修を実施、効果を評価する(3年目)。
結果と考察
薬物依存:SMARPPをベースにした、包括的な薬物依存治療プログラムを開発する、という本分担研究班の最終的な目的に従い、今年度は、SMARPP実施構造の改訂とその効果の検証を行った。具体的な改訂内容としては、回復者をコ・ファシリテーターとして迎え入れるとともに、人的交流を通じて、SMARPP運営スタッフと地域の精神保健福祉センターやダルクとの連携体制の強化を行った。こうしたプログラム実施構造の改訂により、患者1人あたりの平均セッション参加回数が増加するなど、治療継続性の向上を示唆する効果が認められた。また今年度、本研究分担班では、家族支援プログラムであるCRAFTワークブックの作成も行い、次年度の施行の準備を整えた。さらに、SMARPPに準拠した薬物依存症治療プログラムの普及を進め、プログラムを実施中もしくは準備中の施設は、2014年1月末現在、全国35箇所の精神科医療機関、15箇所の保健・行政機関、15箇所の民間機関となった。
インターネット依存:専門外来患者対象調査から、若年者が多いこと、男女比5.4対1、使用機器はパソコンが多いこと、80%以上がオンラインゲームに依存していること、母子家庭の割合が高く、昼夜逆転、ひきこもり、暴言・暴力などの症状が、学生には欠席、成績不振、留年などが多くの者に認められた。文献reviewからは縦断的調査が十分ではないこと、うつ病、ADHD、社会不安、攻撃性がインターネット依存の予測因子として挙げられた。疾患概念、診断、治療ガイドライン策定のためのWHOとの共同プロジェクト、縦断的研究開始に資する結果を得ることができた。
病的ギャンブリング:病的ギャンブリングは配偶者や子どもや家族の関係性に大きなダメージを与えていることが示された。病的ギャンブラー当事者と家族の語りの質的分析により、病的ギャンブラーがギャンブリングを開始してから治療や相互援助(自助)グループに繋がるまでには7つの段階があり、家族にとってこうした問題の認識がより早めにできることで、ダメージが大きくなる前に適切な対応ができる可能性があることが示された。債務問題支援機関を対象とする調査が開始された。ギャンブリングの問題を持つ本人が、過度な抵抗感を持たずに支援機関との関わりを持ち続けることのできる早期介入手法の素案を提示した。
行政機関間連携:薬物依存症支援における精神保健福祉センターと保健所の連携について、連携の基盤となる要素を検討した。長野県精神保健福祉センターでは、既に、「長野県薬物依存症対策推進事業」と刑務所出所者への地域支援を行っており、その報告をまとめた。また刑務所出所者への地域や家族支援と、刑の一部執行猶予制度施行を見据えた地域における薬物依存症支援、今後の薬物依存症対策において保健所が担える役割を整理した。
結論
薬物依存、インターネット依存、病的ギャンブリングの回復のために、援助の手法を開発、標準化、普及、均てん化を目指す上で、重要な知見をえることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317067Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,800,000円
(2)補助金確定額
20,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,872,690円
人件費・謝金 4,293,647円
旅費 546,640円
その他 9,287,023円
間接経費 4,800,000円
合計 20,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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