認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201317066A
報告書区分
総括
研究課題名
認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究
課題番号
H25-精神-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
研究分担者(所属機関)
  • 古川  壽亮(京都大学大学院医学研究科)
  • 藤澤  大介(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 中川  敦夫(慶應義塾大学医学部)
  • 堀越 勝(独立行政法人精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
  • 岡本 泰昌(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
  • 清水 栄司(千葉大学医学部)
  • 中川  彰子(千葉大学大学院医学研究院子どもの心の発達センター)
  • 中野  有美(椙山女学園大学人間関係学部)
  • 佐渡  充洋(慶応義塾大学医学部)
  • 工藤  喬(大阪大学保健管理センター)
  • 井上  雄一(公益財団法人神経研究所)
  • 菊地 俊暁(杏林大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、厚生労働科学研究事業で開発・使用したマニュアルに準拠して、うつ病、不安障害(パニック障害、強迫性障害)に対する認知療法・認知行動療法を適切に行うための教育用マニュアルの作成及び教育システムの構築とともに、認知療法・認知行動療法の副作用予防のために必要な事項や、医師以外の職種が認知行動療法を行う上での留意点について多角的に検討した。
研究方法
文献的考察では、うつ病に対して認知行動療法と、心理学的プラセボと、無治療を比較した無作為割付比較試験(18本、1153人)を同定し、ネットワークメタアナリシスを適応して、認知療法・認知行動療法に心理学的プラセボを上回る効果があるかを検討した。これまで検討されていなかった認知療法・認知行動療法の有害事象についても検証した。うつ病に対する認知行動療法を対象とした臨床研究では、通常治療を2カ月以上受けても、中等度以上のうつ症状を認めているうつ病患者に対して、通常治療よりも認知療法・認知行動療法を併用した治療の方が、有効性、経済性で上回るかを検証する目的で無作為化比較対象試験を行った。認知行動療法の画像研究も行った。また、臨床家が自分の臨床現場を離れることなく個人認知療法・認知行動療法のスーパービジョンを受けられるようにするためのインターネットを用いたスーパービジョン・システムの構築を図った。社交不安障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害およびトラウマ関連障害、睡眠障害に関しても認知行動療法の効果研究を行った。医師以外の職種が認知療法・認知行動療法を実践できる可能性に関しての調査を行った。
結果と考察
ネットワークメタアナリシスから、うつ病に対する認知療法・認知行動療法は10セッション以上であれば心理学的プラセボおよび無治療無治療群に勝ることが示唆された。認知療法・認知行動療法のスキル評価のために標準化トレーニングビデオを開発した。
精神療法の副作用を検証し、また認知療法・認知行動療法のセッション記録から有害事象を抽出し、それを基にエキスパートの意見を集約して、認知療法・認知行動療法の副作用を評価するツールを作成した。
通常治療を2カ月以上受けても、中等度以上のうつ症状を認めているうつ病患者に対する認知療法・認知行動療法の無作為化比較対象試験を行い、目標症例数の80の登録が終了した。80例のベースライン時の平均年齢は40.6歳で、認知療法・認知行動療法併用群の平均HAMD 21.0、平均BDI 26.1に対して、通常治療群では、平均HAMD 20.8、平均BDI 26.0であった。
脳画像を用いた認知療法・認知行動療法の効果に関する研究から、社会的排斥及び支持的サポートに対する感受性には個人差があり、自己評価やうつ傾向の程度によって影響を受けること、こういった個人特性は、前頭前野の感情制御機能や前帯状回における情動反応に影響を与えることが考えられた。また、MRIによる拡散テンソル画像(DTI)によってうつ病では、脳梁前脚部のFAの有意な低下が認められ、白質における微細構造の変化が示唆された
認知療法・認知行動療法の増分費用対効果比(ICER)は、NICEが推奨する閾値を下回っており、費用対効果的である可能性が示唆された。
認知療法・認知行動療法を医師以外の職種が行う場合、心理医療技術者では、その養成課程で医療心理技術者が医療現場に積極的に参入していくことの重要性を共有することがまず重要であると結論づけられた。看護師に関しては、以下の点が認知療法・認知行動療法を実施ある際に障害となることが判明した:①訓練の充実、②周囲の理解、③人員と場所の確保、④介入側と被介入側の時間の確保、⑤費用(患者側、及び介入側の費用)、⑥資格と責任。
うつ病以外では、SSRI治療によって十分な改善を示さない社交不安障害患者に対して、ランダム化比較試験を継続中である。強迫性障害に対する認知療法・認知行動療法治療者の教育方法に関して、スーパービジョン等を認知行動療法の先進国に学びながら、国内の治療の実態の把握と現場の治療者のニーズを調査し、それを普及させる方法を検討している。心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する持続エクスポージャー療法(PE)指導育成のための基礎的研究を行った。不眠の認知療法・認知行動療法(CBT-I)の効果を検証するための治療プロトコルを作成し,治療効果研究を実施した。
結論
本年度の研究は当初の予定通り順調に進んでいる

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317066Z