自殺対策のための効果的な介入手法の普及に関する研究

文献情報

文献番号
201317055A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺対策のための効果的な介入手法の普及に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山田 光彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 平安 良雄(横浜市立大学大学院医学研究科・精神医学)
  • 河西 千秋(横浜市立大学大学院医学研究科・精神医学)
  • 大野 裕(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
  • 酒井 明夫(岩手医科大学神経精神科学講座・臨床精神医学)
  • 大塚 耕太郎(岩手医科大学神経精神科学講座・臨床精神医学)
  • 稲垣 正俊(岡山大学病院精神科神経科)
  • 黒澤 美枝(岩手県精神保健福祉センター)
  • 米本 直裕(国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター情報管理・解析部)
  • 池下 克実(奈良県立医科大学精神医学講座)
  • 衞藤 暢明(福岡大学医学部精神医学教室)
  • 太刀川 弘和(筑波大学医学医療系臨床医学域・精神医学)
  • 古野 拓(横浜市立大学大学院医学研究科・精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では自殺者が毎年3万人を超えた状況が続いており、自殺率の減少に向けた取り組みが重要かつ緊急の課題となっている。そのため、エビデンスレベルを強く意識して厚生労働省が平成17年度より実施した「自殺対策のための戦略研究」の成果を、具体的な政策立案に資するものへと拡張し、研究成果を一般化し、全国に普及するための実施体制の検討を行うことは喫緊の課題となっている。
研究方法
① NOCOMIT-Jにおいて収集された地域介入データを詳細に解析し、複合的地域自殺対策プログラムの効果を、性別・世代、地域のサブグループ毎に検討した。
② ACTION-Jにおいて収集されたデータを詳細に解析し、ACTION-Jケース・マネージメントの実施可能性について検討した。さらに、その効果を、性別、年齢層、過去の自殺未遂歴の有無のサブグループ毎に検討した。
③ 救急医療の機能強化とケース・マネージメントの提供を施策化するために必須となる人材育成のための研修システムの開発を進め、パイロット研修を実施した。
結果と考察
① NOCOMIT-Jにおいて収集された地域介入データを詳細に解析した。ところ、複合的地域自殺対策プログラムの効果は、性別・世代、地域によって異なることが明らかとなった。そこで、岩手県及び南九州地域の研究参加地区をモデルとして、他の自治体が参照可能な普及啓発のための資料の改訂作業に着手した。また、都市部でのプログラム実施が困難でありその効果も不明確であったことから、都市部における人的資源や地域ネットワークの不足などが影響している可能性が考えられた。そのため、都市部において効果的な自殺対策を実施するためには、詳細な自殺関連情報を収集解析した上で、地域に応じたポイントを絞ったハイリスクアプローチによる支援(例えば障害者支援など)を積み重ねる必要があると考えられた。複合的地域自殺対策プログラムの介入内容は、地方行政機関向けの地域における自殺対策プログラムとして厚生労働省のホームページに掲載され、自殺対策推進に向けた資料となった。また、地域自治体、民間団体、自殺対策研究者らにより築き上げられたネットワークやその取り組みは、平成23年の震災の際に、直後の危機介入から、その後の復興に際しての地域住民の心の健康の維持のために大きく役立っており、岩手県や宮城県などの被災地支援のモデルとしての役割を果たしている。
② ACTION-Jにおいて収集されたデータを詳細に解析したところ、ACTION-Jケース・マネージメントの実施可能性が確認され、その効果が、性別、年齢層、過去の自殺未遂歴の有無によって異なる可能性が示された。これらの成果は、我が国における自殺未遂者対策をより効果的に進める上で必須のデータとなる。また、平成25年度には、救急医療の機能強化とケース・マネージメントの提供を施策化するために必須となる人材育成のための研修システムの開発を進め、パイロット研修を実施した。平成20年の診療報酬改定で自殺未遂者に対する救急・精神科医療の評価が盛り込まれた。また、厚生労働省において、救急医療従事者向けの自殺未遂者ケア研修が開始された。さらに、平成24年には診療報酬において精神科リエゾンチームに対する評価が新設された。これらの取り組みは、本研究で検証した救急医療施設退院後のケース・マネジメントを施策化するための基盤となる。また、本研究成果は救急医療における精神科連携に関する重要なエビデンスであり、今後、関係施策への反映が期待される。
結論
自殺総合対策大綱には、「地域における複合的な自殺対策」及び「自殺未遂者対策」が当面の重要施策として位置づけられている。本研究で得られた知見及び今後の詳細な解析をもとに、厚生労働省において、自殺対策事業の施策を推進することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317055Z