緑内障統合的分子診断法の確立と実証

文献情報

文献番号
201317030A
報告書区分
総括
研究課題名
緑内障統合的分子診断法の確立と実証
課題番号
H24-感覚-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 和彦(京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学)
  • 田代 啓(京都府立医科大学大学院 医学研究科 ゲノム医科学)
  • 中野正和(京都府立医科大学大学院 医学研究科 ゲノム医科学)
  • 田中光一(東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部 分子神経科学)
  • 長崎生光(京都府立医科大学大学院 医学研究科 統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,849,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
緑内障は発症早期の点眼治療により進行を抑制し生涯にわたり視機能を維持することができることから緑内障の発症リスク保因者を選別する簡便な血液検査体制の構築が急務である。そこで本申請課題では緑内障統合的分子診断法の確立を目指す。申請者らは既に緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、落屑緑内障のバリアントを世界に先駆けて同定している。加えて申請者らは、緑内障患者の血漿中で有意に上昇している4種類のサイトカインを同定し、バリアントのジェノタイプ情報(離散変数)とサイトカイン量(連続変数)を統合した発症予測アルゴリズムを独自に開発している(特願2010-294176)。そこで本研究では、オッズ比が低い広義POAGについて多角的に精鋭バリアントを抽出するだけでなく、白血球の網羅的発現解析による連続変数も加味しながら統合的診断アルゴリズムの強化・至適化を図る。

研究方法
1)高密度全ゲノム関連解析(平成24年度、終了)
2)既報の候補遺伝子バリアントを我々の検体で検証(平成24年度、終了)
3)コピー数の違いのバリアント(CNV)データの取得と解析(平成25年度)
CNVデータに基づく緑内障のゲノムワイド関連解析を実施中である。1000kチップのハイブリ強度を標準化してCNV解析を行う。
4)末梢血中の白血球mRNAの網羅的発現解析(平成25年度、現在進行中)
取得したデータをもとに緑内障の病態を反映した発現プロファイリングの可能性を検討するため、RNAを定量してハイブリ準備を進める。
5)グルタミン酸トランスポーター・重要バリアントマーカー機能解析(平成25年度、現在進行中)
グルタミン酸トランスポーター(GLAST)
の活性低下を伴うミスセンス変異についてTAL effector nucleaseによるノックインモデル動物を作製し解析することでNTGの病態解明の糸口とする。更に、NTGの新規治療薬候補としてGLAST活性化化合物を検索し評価する。加えて、本研究で新規に同定した重要バリアントマーカーについてはその機能解析を実行する。
6)以上の結果に基づく診断チップの有用性の検証(平成26年度)
結果と考察
1)2)については昨年度終了。
3)CNVの解析:アフィメトリクス社のDNAマイクロアレイで取得した広義POAG群824例および対照群
686例についての約200万プローブ/検体の蛍光強度の生データから国際HapMapプロジェクトで公開
されている270検体のコピー数データを基準として、各プローブのコピー数データ(0, 1, 2, 3, 4)を取得した。統計学的な有意水準が上位のバリアントから診断候補バリアントを厳選し、次に機械学習法を用いてこれらのバリアントを用いた判別を試み、最終的に10交差検証により判別精度の検証を行った。その結果、SNP単独でも80%以上の高い正診率が得られたが、CNV情報を加味することにより
更に正診率の向上が認められた。
4)末梢血中の白血球mRNAの網羅的発現解析
取得したデータをもとにRNAを定量してハイブリ準備を進めている。
5)グルタミントランスポーターの解析:緑内障患者群において440例中20例、健常群において450例中2例のヘテロ接合の一塩基置換が見出された。SLC1A3のexon4に1つのサイレント変異1・1つのミスセンス変異、exon6に1つのサイレント変異、exon7に2つのサイレント変異・2つのミスセンス変異、
exon10に1つのサイレント変異を発見した。このうちexon7に見いだされたc945C>T(pA315A)のサ
イレント変異は緑内障患者群とコントロール群の間でフィッシャーの正確確率検定においてp < 0.05
の有意差を見出した。
結論
ゲノムワイド関連解析のp値をもとにSNPは約700個、CNVは約1,000個を解析対象バリアントとして抽出、この中から位置情報とp値をもとにSNPは約300個、CNVは約500個を診断用候補バリアントして選択した。これらのバリアントを用いて機械学習法による判別を試みた結果、SNP単独では80%以上の高い正診率を得ることができた。一方、CNV単独での正診率はSNPより劣ったものの、SNPと更にp値を基に絞り込んだCNVを組み合わせることにより正診率の向上が認められた。これらの情報を活用して診断アルゴリズムの判別精度を検証し、良好な成績を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317030Z