発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価

文献情報

文献番号
201317022A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価
課題番号
H25-身体・知的-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(山梨県立こころの発達総合支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 大澤 多美子(広島市こども療育センター)
  • 高橋 脩(豊田市こども発達センター)
  • 高橋 和俊(おしま地域療育センター)
  • 原田 謙(信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部)
  • 山下 洋(九州大学病院)
  • 関 正樹(大湫病院)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部)
  • 内山 登紀夫(福島大学人間発達文化学類)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は,特性の異なるいくつかの地方自治体を選び,3年間でそれぞれの地域における発達障害の支援ニーズの実態の把握を行うとともに,地域の特性に応じた発達障害の支援システムの現状を調査し,具体的な地域支援のあり方についてのモデルを示すことを目的とする。また,地域特性による相違点と共通点の両者に配慮した標準モデルを呈示するための評価指標についても検討した。
研究方法
 一定の制度で発達障害の支援ニーズを集約的に把握できる体制と専門医がすでにいる地域を選び,そこに関わる医師が研究分担者(一部,研究協力者)として研究を行った。
 今回研究の対象となったのは,政令指定都市である横浜市と広島市,中核市である豊田市,函館市,宮崎市,特例市である松本市,人口10万人前後の市である多治見市と糸島市,人口5万人弱の市である山梨市と瑞浪市,その他の小規模自治体(町村)として北海道3町,福島県1町1村,東京都1町,長野県1町,愛知県2町,岐阜県2町,広島県1町,島根県1町,徳島県1町,鹿児島県2町,沖縄県1町,さらに震災被害の影響が残る福島県いわき市である。これらのすべてに対して地域特性に関する調査を行い,小規模町村以外を対象として発達障害の支援ニーズに関する調査を行った。
結果と考察
1. 地域特性に関する調査
 多くの自治体で,すでに幼児期の早期発見と早期支援,および学校教育における特別な配慮の体制づくりが行われていた。具体的な場の設定や連携の仕組みは,それぞれの地域の事情によって異なっていた。

2. 発達障害の支援ニーズに関する調査
 学校への調査と医療機関への調査の報告が集計された。
 医療機関と学校との両者が同じ対象で実態調査を行うことにより,診断の確定している子どもたちだけでなく,発達障害が疑われる子どもたちと診断確定例との関係についても求めた。また,発達障害全体およびICD-10による内訳も算出された。
 今回の調査地域は,いずれもその地域の基幹となる医療機関に関わっている医師が研究分担者・研究協力者として参加していたため,全国の平均的な地域に比べて発達障害の支援ニーズがより掘り起こされている可能性がある。そのことも反映してか,多くの地域で発達障害の支援ニーズが従来の想定よりも高いことが示唆された。なかでも,広汎性発達障害の支援ニーズはどこの地域でも高く,近年の国際誌における有病率の想定よりもさらに高い有病率が出された地域が複数あった。

3. 標準的な評価指標に関する研究
 発達障害の中でも最も中核的な位置を占める自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断はきわめて重要である。またASDは,中核症状に加え,多種類の併存症が高頻度に認められる。そこで神尾は,米国で開発されたThe Baby and Infant Screen for Children with aUtIsm Traits (BISCUIT) の日本語版を作成し,本邦での信頼性・妥当性を検証することを本研究班での課題とし,データ収集を開始した。
 支援ニーズに関する調査では,医療機関と学校の両者が同時に同じ対象について調査するという,これまでなかなか実現できなかった調査を行うことができた。いずれの地域においても,学校では未診断例への支援ニーズが深刻である。一方,早期診断と早期支援が活発に行われている地域では,すでに小学1年生の時点から高い割合で診断を受け,何らかの配慮を受けることが可能となってきていることが示された。
結論
 次年度はまず,地域特性によって研究分担者をある程度のグループに分け,それぞれに固有の利点と課題を挙げるとともに,地域特性に応じた支援体制のあり方を検討していく。支援ニーズ調査は継続して行うことにより,経年的な変化を追っていく予定である。評価指標については,BISCUIT日本語版の作成を進めるため,信頼性・妥当性について検証していく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317022Z