障害者への虐待と差別を解決する社会体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201317021A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者への虐待と差別を解決する社会体制の構築に関する研究
課題番号
H25-身体-知的-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 寿広(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 憲司(社会福祉法人 愛光)
  • 佐藤 彰一(國學院大學 大学院 法務研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)の適用となる事例以外として、障害者虐待にはどのような事例が存在しどの程度発生しているのかを知る目的で、地方公共団体の窓口に寄せられた相談件数を調査した。法以外の事例のうち、医療における障害者虐待事例の発生状況を把握するとともに法に規定された相談体制の整備状況を知る目的で、医療機関における取り組みを調査した。さらに、障害者虐待事例への対応の質の向上に向けて、実施された対応に被虐待者の障害種別や虐待の類型による特徴があるか確認することを目的として、事例ごとに対応に関与した専門職の人員数と時間数を試行的に測定した。
研究方法
全国の地方公共団体の都道府県権利擁護センターならびに市区町村虐待防止センターを対象として、厚生労働省の調査項目を参考に作成した質問紙を郵送し、法施行後半年間に経験した法以外の事例の相談件数と、当該事例に対して実施した機関連携の内容を調査した。また、医療の提供を業務とする独立行政法人(国立病院、労災病院等)および地方独立行政法人合計233施設を対象として質問紙を郵送し、障害者虐待防止法に規定されている相談体制等の取り組み、障害者雇用率、実施している合理的な配慮について、それぞれ現況を調査した。障害者虐待事例への対応に関する情報は、先進的な取り組みを行っている地方公共団体を対象として、担当者から障害者虐待防止の取り組みをめぐる課題についての意見を聴取し、個人情報は含まずに記録から対応にかかった時間と人員に関する情報の提供を受けた。各調査の実施に当たり独立行政法人国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
都道府県は33団体、市町村は708団体から回答があり、都道府県権利擁護センターでは「養護者虐待として市町村虐待防止センターに連絡した事例」が22箇所で合計50件(1箇所あたり平均2.27件)、市町村虐待防止センターでは「養護者虐待の判断に至らなかった事例」が169箇所で合計411件(1箇所あたり平均2.43件)と、それぞれ経験した団体数が最も多かった。機関連携について、相談者に適当な窓口を紹介することから始まり事案が解決したか確認することまで実施した団体は、市町村における「養護者虐待の判断に至らなかった事例」については21団体であった。また、相談マニュアルの導入の状況は、都道府県では「既存のマニュアルと個別ケース会議の併用」が9団体、市町村では「個別にケース会議で検討」が191団体と、それぞれ最も多く、無回答の104団体と合わせると回答した市町村の約半数334団体(47.18%)で成文化されたマニュアルを導入していることが明示されていなかった。相談の質を確保しより広い範囲の虐待事例に対応するためにも、手順を定め地域の諸機関を活用した相談体制を構築することが必要と考えた。医療における障害者虐待事例は、都道府県権利擁護センターでは8箇所(回答した33団体の24.24%)で合計14件(1箇所当たり平均1.75件)、市町村虐待防止センターでは21箇所(2.97%)で合計25件(平均1.19件)であった。医療機関については40の施設から回答があり、専門的な職員の確保(50.00%)と地方公共団体等が主催する研修への参加(52.50%)は、回答した施設のうち半数で実施していることがわかった。一時保護のための居室の確保に協力していると回答した施設は1割(10.00%)であった。医療の事例については、発生している事例数が少ないとは考えにくく、地方公共団体の窓口は相談先として利用されていないものと考えた。医療機関の取り組みとして、一時保護のための居室の確保は市町村の担当者からの要望が高く、先進的な取り組みが期待される。調査結果を踏まえて、医療機関における合理的配慮に関する冊子を制作した。虐待事例の記録に基づく調査には合計15の団体・施設から協力を得ることができ、対応に関する情報を数量化する際に検討すべき事項を整理し、調査が実施可能であることを確認した。
結論
障害者虐待防止法の施行後半年間の実績に関する調査からは、地方公共団体の窓口には法以外の事例の利用もあることが確認できたが、他方、法以外の事例について適切な窓口へつなぎ地域の諸機関で対応する機関連携の確立と、相談マニュアルの整備が課題となっていた。医療の障害者虐待事例については、より適当な調査方法を引き続き検討する必要がある。また、障害者虐待事例への対応について、記録をもとに事例単位で数量化することは実施可能であり、対応の均てん化に向けて、より多くの事例を収集することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,900,000円
(2)補助金確定額
6,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 301,537円
人件費・謝金 507,792円
旅費 442,522円
その他 4,058,149円
間接経費 1,590,000円
合計 6,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-04-09
更新日
-