音声言語機能変化を有する進行性難病等に対するコミュニケーション機器の支給体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
201317018A
報告書区分
総括
研究課題名
音声言語機能変化を有する進行性難病等に対するコミュニケーション機器の支給体制の整備に関する研究
課題番号
H25-身体-知的-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井村 保(中部学院大学 リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
  • 巖淵 守(東京大学 先端科学技術研究センター)
  • 伊藤 和幸(国立障害者リハビリテーションセンター(研究所))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 筋委縮性側索硬化症(ALS)等の進行性神経・筋疾患であため、病状の悪化により、携帯用会話補助装置や意思伝達装置を含めた機器本体や入力装置等の変更が必要となってくる。意思伝達装置等の導入によるコミュニケーションの確保は、義肢・装具などの代表的な補装具のような機能障害の代替のための身体適合のような医学的評価だけでは十分な評価が出来ないといえる。そのため、社会モデルに基づいた生活的要素を加味した活動障害に対する評価も必要になるが、それが十分に行われていない。
 そこで本研究では、医学的評価に社会モデルも加味した2軸での判定を行い、適切な用具を効果的に支給することができ、特に新しい技術要素を含めた利用者のQOLの向上に資する福祉用具の供給・利用体制の提案を行うことを目的とする。今年度は、これまで主観的な判断で議論されがちであった支給状況や利用状況、機器の現状調査とともに、現状の不足・問題点の客観的な比較を行うことで課題の明確化を行い、評価方法の論点を整理する。
研究方法
1.重度障害者用意思伝達装置にかかる補装具費支給・利用実態の調査
 厚労省が公表する統計データにより各都道府県における補装具費支給実績を集計・比較するとともに、各身体障害者更生相談所への照会により、判定方法や支給機種などの状況を確認した。また、日本ALS協会会員を対象とした利用実態調査結果および個別のヒアリングから、視線入力方式だけでなく、IT機器全般に対するコミュニケーション機器としての利用ニーズのアンケート調査等を実施した。
2.新しい支援技術の社会的評価に関する調査
 入力装置適合の負担軽減を目的として、「OAK」を利用し、それが備える動きの可視化機能であるモーションヒストリーの観測データに基づいた入力装置適合の有効性を検証した。
3.機器の機能や操作方法についての分類検討
 供給事業者(15社)を対象に、補装具制度の現状の課題を調査した。また、現在市販されている意思伝達装置用の入力装置66個に関して、修理基準に従いに分類した。
結果と考察
1.重度障害者用意思伝達装置にかかる補装具費支給・利用実態の調査
 支給実績の分析から、視線入力方式などの特補装具費支給実態を明らかにした。意思伝達装置の支給状況は、3年単位での利用率を比較することで平滑化でき、変動要因の1つである年次推移を取り除き、地域差の実情を比較することができた。
 また、ALS患者へのアンケート調査では、患者のニーズを定量的に示した。
 これらより、従来型の意思伝達装置に限らないIT機器や視線入力方式へのニーズを顕在化した。
2.新しい支援技術の社会的評価に関する調査
 モーションヒストリーを利用するOAKが、従来の物理的なスイッチの適合と同等レベルの適合をより負担なく実現しうることが示された。また、動作観察は、入力装置の適合のみならず、対象者の微小な動作の可視化を行うことになり、呼びかけや周辺状況変化による、対象者の反応を確認する、有効な支援ツールとなることが示された。
3.機器の機能や操作方法についての分類検討
 現行の補装具制度を早急に見直すものと、制度の在り方や用具の定義を変えるものとして、当面の課題(11項目)と中長期課題(3領域)に集約を行った。
 操作スイッチの分類結果は、データベース化し、操作部位と入力形式による検索機能を持ったWEBサイトを構築した。操作部位と入力形式の組み合わせで、該当するスイッチを検索することができる。
結論
 進行性疾患のALSに対しては、早期支給が音声言語機能喪失後においても、コミュニケーションを肯定的に考えるきっかけとなる。これは、これまでの意思伝達装置の概念を改め、コミュニケーションを通じた社会参加・活動障害を支援するIT機器としての活用も評価することになる。
 また、コミュニケーション環境が不全であるということは、人間にとって大きなストレスとなり、介護者との関係悪化を招く恐れもある。そのため、継続的なコミュニケーション確保や支援者の確保が、良好な療養生活には不可欠である。そのためには、適切な技術を持つ専門職に対する対価の保障も必要な課題といえる。
 今回実施した各調査においては、機能障害の判断(医学モデル)より、活動障害(社会モデル)を意識した課題の整理であったが、基本的には、予想通りの結果が得られた。これは、コミュニケーション障害の評価には、社会モデルを用いた評価の重要性を示唆していると考えられる。
 次年度においては、今年度の結果のような各調査内での集計にとどまらず、相互比較を行うことで、今後の支援策の検討に必要な基礎的なデータとなりうる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,850,000円
(2)補助金確定額
5,850,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,065,277円
人件費・謝金 607,282円
旅費 1,744,526円
その他 1,083,041円
間接経費 1,350,000円
合計 5,850,126円

備考

備考
超過分は、預金利息にて充当。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-