補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みの提案に関する研究

文献情報

文献番号
201317016A
報告書区分
総括
研究課題名
補装具の適切な支給実現のための制度・仕組みの提案に関する研究
課題番号
H25-身体-知的-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 児玉 義弘(ナブテスコ株式会社 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,225,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、義肢・装具・座位保持装置の価格を適正に設定する仕組みを整えるとともに、完成用部品の機能・操作性・安全性を評価する方法を確立することで、これら補装具の利用者の社会参加・自立を促進することにある。そのために、課題1:完成用部品の機能区分整備、課題2:製作費用の包括的把握方法と簡便なデータ更新方法の確立にかかる研究、課題3:補装具費支給判定基準マニュアルの作成、課題4:機能区分を踏まえた完成用部品申請手続きの整備 の小課題を設定した。
研究方法
課題1
完成用部品の機能区分を保険制度の中で運用している米国のLコードに着目し、調査を行った。米国義肢協会主催のセミナーへの参加および関係者への聞き取りと意見交換を実施し、機能区分の内容や価格について調査・分析を行った。

課題2
義肢・装具・座位保持装置の製作事業所の業界団体の会員を対象に、人件費単価、事業所全体の収支にかかる調査を実施した。また、直接労務費・直接材料費以外の費用の大きさを把握するため事業所活動の費用構成にかかる調査について、製作事業者を交えた検討を行い、調査を開始した。

課題3
補装具費支給判定に関する先行知見を基に課題の抽出を行った。さらに、多職種の研究協力者からなるワーキンググループの議論を経て、更生相談所での支給判定の最新動向を含んだ基準マニュアルの第一段階となるQ&Aの暫定版を作成した。

課題4
完成用部品指定申請手続きの効率化、正確性の向上を目的として電子申請様式を作成した。本様式を用いて申請手続きを実施し、申請業者、事前審査担当者を対象としたアンケートを行った。また、リハセンター・更生相談所のネットワーク構築を目指して、判定に係るデータのデータベースに関する検討を行い、横浜市、宮城県、兵庫県、埼玉県の更生相談所の書式を比較した。
結果と考察
課題1
米国での現地調査の結果、メディケア・メディケイドの保険制度のなかで、義肢の支給にあたり、Lコードが使用されており、部品の機能区分ごとに価格が割り当てられ、複合機能の部品については、個々の機能に割り当てられた価格の合算により、価格が決定するという構成であることがわかった。また、部品の区分のみではなく、利用者の機能レベルを表すKレベルも規定されており、そのレベルと給付される部品の機能の関連づけができあがっていることもわかった。

課題2
人件費単価および事業所の収支に関する調査については、毎月の給与、賞与、労働時間に占める移動時間の割合、過去3年の事業所の収支等を設問項目として調査を実施した。また、直接労務費・直接材料費以外の費用の大きさを把握する事業所活動の費用構成にかかる調査については、費用を人件費、物品の購入費用、その他の費用に分類し、事業別の費用構成・売上を設問項目とする調査票を作成した。

課題3
制度の理解と判定における課題に関して、先行研究、活動から9つの課題を抽出し、平成23~25年度における補装具判定専門員会の活動で蓄積されたQ&A140問を分類した結果、制度の理解等の一般的な質問75問、更生相談所に特有な費用の算定基準に関する質問40問、その他個別商品・事例25問に分類された。このうち個別商品・事例に関するQ&Aを削除し、内容を簡潔に作り直した。また、不足していると思われる事項のQ&A35問をワーキンググループで新規に追加作成し、結果的に151問で構成した。

課題4
手続きの簡略化のため、旧様式を統廃合して、電子版の新様式を作成した。アンケートの結果、申請業者からは、プルダウン式の入力、セルのリンク等の機能が利用可能になったことで業務量の削減やミスの減少につながったとの回答が得られた。また、事前審査者からは、作業上の課題が指摘され、様式、記入要領の改良が望まれた。
更生相談所の書式の比較では、基本的な項目は共通しているものの、それぞれの更生相談所で、特徴的な項目もみられた。
結論
今年度は、米国のLコードの調査を行い、国内の完成用部品への適用の可能性を確認した。
また、製作費用に関しては、人件費・事業収支、製作費用に関する調査票を作成し、現在調査を実施している最中である。
支給判定基準マニュアルについては、先行研究および更生相談所長協議会補装具判定専門委員会に寄せられたQ&Aを分析することで、151項目のQ&A暫定版を作成した。
申請手続きの整備では、電子版の様式を作成し、アンケートを実施した結果、電子化による効率化、正確性の向上が確認された。更生相談所の判定書類については、異なる書式を使用しているが、共通項目の抽出と電子化により、共通フォーマット作成の可能性が示唆された。
全体として、義肢装具部品の機能と、利用者の状況、部品の価格の三者の関連づけに向けた基礎的な知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317016Z