追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベース基盤整備とその活用に関する研究

文献情報

文献番号
201315042A
報告書区分
総括
研究課題名
追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベース基盤整備とその活用に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
玉腰 暁子(北海道大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 磯 博康(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 祖父江 友孝(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内で実施され追跡を終了した複数のコホート研究情報を共通化し、その利用環境を整え、将来にわたって向後終了するコホート研究も組み入れ可能な体制を構築することを目的とする。
研究方法
1.既存コホート研究の情報共通化
1)既存コホート研究の説明・同意、対象地域との関係などの情報を集め、共通化にあたっての問題点の洗い出し、ならびにその対応策について検討する。検討にあたっては、技術的な側面のみならず、各コホート研究の説明・同意の範囲に関する検討、死亡小票等既存統計資料の適切な活用を可能とする基盤整備、社会への広報なども勘案し、社会的に容認可能かつ科学的に妥当な方法を採用する。特に統計法に則る人口動態統計資料と突合したコホートデータの取り扱いに関し検討する。
2)上記結果を踏まえ、それぞれのコホート研究で得られた情報を共通利用可能な形にマッピングする。
2.共通化したデータの利用基盤整備
1)二次利用者に課す研究倫理教育プログラムを開発する。
2)異なる地域・時代、調査方法、質問紙を用いて行われた個別のコホート研究をまとめて解析するための方法を開発する。
3.今後終了するコホート研究組み入れ体制構築
これから終了するコホート研究を新たに共通化データに組み込むための条件や方法について検討し、そのフィージビリティを確認する。
4.共通化データ組み入れならびに利用のためのガイドライン策定
1)1~3のまとめとしてガイドラインを策定、公表する。
結果と考察
アメリカでは、ハードルはあるものの、一定の手続きの下、複数のデータベースから個人単位で情報を連結し検討することが可能である。しかし日本では、個人単位のデータ連結は通常行えず、公的データベースの有効利用にはいたっていない。諸外国のビッグデータ研究に遅れをとらないためにも既存データの統合利用に向けた個人情報の保護と活用のバランス整備が重要である。
今回参加しているコホート研究の開始時期はそれぞれ異なるものの、いずれのコホートでも喫煙、飲酒といった基礎的な情報は収集されており、これらコホートデータを共通して利用すること、ならびに公的外部データとの個人単位での連結が可能な仕組みを構築できれば、日本の疫学研究から今までにない成果を期待することができると考えられた。一方、いずれのコホート研究でも現在のような説明・同意は行われておらず、したがって明示的な共同研究への発展の可能性や他研究へのデータ提供に関する言及は行われていなかった。そのため今後、共通化にあたっては各所属機関の倫理審査委員会での審査を必要とすると同時に、このような場合でも研究終了後には共通化できるような社会的な合意と仕組みづくりを進める必要があると考えられた。
共通化データを制限つきにせよ公開する際の最大の問題点は、アウトカム情報として突合している死因情報が人口動態統計資料より得られていることで、現状では統計法の規定により公開不可であることが判明した。
二次利用に際しては、新たな研究では広範同意であっても開始時点に二次利用の可能性を説明し同意を得ておくことが求められるが、既に実施されている研究では当初の同意の範囲では二次利用がカバーできていないことが多い。そのような試料・情報であっても有効に研究に活用するためには、対象地域や対象者に対する情報公開を多面的かつ十分に行ったうえで拒否権を保障することが求められる。また、二次利用者自身もその責務を意識することが重要である。さらに、特に試料の利用にあたっては、知財に関し、関係者で事前に十分に検討し、ルールを明確にしておくことが必要と考えられた。なお、多くの項目を組み合わせれば一意性があるものとの前提で、二次利用対応を考えていくことが必要である。
結論
統計法の規定から、人口動態統計資料から得られた死因情報をコホート研究のアウトカムとして公開することはできないことが明らかとなった。そのため、コホート研究データをアーカイブ化し二次利用を進めるためには、死因情報のソースとなる人口動態統計調査の統計法内における位置づけを変更することが必要である。公的研究費を得て実施した研究では二次利用のために終了後に公開することが求められていることから、現状を学会あるいは関係省庁に伝え続け、改革を促すことが重要と考えられる。
一方で、このような情報を含まない疫学研究データの二次利用を促進するために、日本疫学会統計利用促進委員会と共同で、アーカイブデータを外部に委託して管理・運営する際に定めておくべき内容を整理し、試験運用を開始した。なお、今後、二次利用に伴う倫理的な問題、知財の配分などを含めた二次利用者に対する研究倫理教育プログラムの開発を有識者とともに進めることも、適切に二次利用が行われる環境整備には必須である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,695,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,171,411円
人件費・謝金 1,942,239円
旅費 2,915,120円
その他 966,870円
間接経費 2,700,000円
合計 11,695,640円

備考

備考
自己資金640円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-