受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201315035A
報告書区分
総括
研究課題名
受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学  産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 雅規( 産業医科大学  産業生態科学研究所 健康開発科学研究室 )
  • 江口 泰正( 産業医科大学  産業生態科学研究所 健康開発科学研究室 )
  • 中村 正和(大阪がん循環器病予防センター 予防推進部)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部 衛生・公衆衛生学)
  • 河井 一明( 産業医科大学  産業生態科学研究所 職業性腫瘍学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1の目的は、受動喫煙防止対策として建物内~敷地内の全面禁煙化を推進することにより受動喫煙に起因する健康被害を抑えることである。
第2の目的は、喫煙しにくい環境をつくることにより、喫煙者の禁煙企図を高め、禁煙実行者を増やし、喫煙率を減少させることによって喫煙関連疾患の減少に寄与することである。
最終的には、受動喫煙防止対策の最善の方法として「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO FCTC)」第8条「たばこの煙にさらされることからの保護」で示され、すでに43ヵ国で実施されているようにサービス産業を含むすべての屋内施設を全面禁煙とする受動喫煙防止法を成立に寄与することである
研究方法
1)先行研究を引き継ぎ、全国の主要な121自治体(47都道府県庁、46道府県庁所在市、23特別区、5政令市)の喫煙対策について通算6回目となる調査票(建物内・敷地内禁煙の実施、屋内・屋外の喫煙場所、勤務時間中の喫煙禁止措置、公用車の禁煙化、職員の喫煙率など)を郵送し、回答を求めた。
2)WHO FCTCのホームページの各国情報からG8、G20を含む60ヵ国の受動喫煙防止の法規制の精査を行った。
3)自治体における受動喫煙防止条例の成立した過程/不成立となった過程について精査を行った。
4)職業的な受動喫煙による遺伝子障害の指標の検討を行った。
5)無煙タバコなどの新規タバコ製品の情報についてPubMedによる文献検索を行った。
結果と考察
1)121自治体の喫煙対策状況調査は、通算6回目であり、100%の回答が得られた。
・平成25年度末時点で33道府県、20府県所在市、4特別区であった。20の政令市(府県所在市と重複)では、10市が禁煙化されていた。平成25年度に新たに禁煙化された自治体は3市のみと少なく、建物内・敷地内禁煙化が進む自治体と喫煙室を残す自治体が二極化し始めたことが観察された。
・建物内・敷地内禁煙化と勤務時間中喫煙禁止を実施した自治体では、その前後で男性職員の喫煙率が約10%低下しており、喫煙対策が遅れている自治体に還元すべき情報であると思われた。
2)G8、G20だけでなく、中~低所得国でも、FCTC第8条に準じて、屋内施設の全面禁煙化が進んでいることがわかった。
3)神奈川県、兵庫県における受動喫煙防止条例の検討過程でタバコ産業側からの介入が働いたため、喫煙室の設置を容認せざるを得なくなったこと、除外規定が多く盛り込まれたこと、また、大阪府では条例案が取り下げられた経過が明らかとなった。
4)フリーラジカルを介して生成するDNA塩基のメチル化を、新たなリスク指標として検討した。
5)無煙タバコも有害である、という科学的エビデンスを国民に開示する資料を収集した。
結論
地方自治体の喫煙・受動喫煙対策は、「受動喫煙防止対策について」(健発0225第2号、平成22年2月25日)、「受動喫煙防止対策の徹底について」(健発1029第5号、平成24年10月29日)により一定の進捗が認められたが、「検討の上、喫煙室を残す」という決定をした自治体も存在している。多くの地方自治体がすでに建物内・敷地内禁煙を実施していること、また、勤務時間中の喫煙を禁止した自治体では喫煙率が大幅に下がっていることをメールマガジンなどを通じて周知することで、喫煙対策を強化する自治体を増えていくことに期待したい。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315035Z