高齢者の健診のあり方に関する科学的エビデンスを構築するための研究

文献情報

文献番号
201315028A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の健診のあり方に関する科学的エビデンスを構築するための研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院 栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 大学院 医学系研究科 健康社会医学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では高齢者の割合が急増する中で、高齢者の健康増進、疾病の予防、早期発見・早期治療を目指すことが求められている。しかし現在行われている健診は中年層をターゲットにして、がんや生活習慣病に対する検査項目が設定され、判定基準が決められてきた。本研究ではふたつの長期にわたって追跡されている既存の大規模コホートを用いて、高齢者の健診のあり方を示すエビデンスを構築することを目的とした。
研究方法
本研究では(1)膨大な一般健診データを有するコホート、(2)高齢者に特有の疾患や病態に関しての詳細な検査データを有する一般住民コホートの、ふたつの長期にわたって追跡されている既存の大規模コホートを用いて解析を行った。
結果と考察
(1)大規模健診データ解析
1) 平成23年の検査結果23,793人及び平成24年の検査結果23,552人のデータを整理確認し、データベースの構築を行った。
2) 生活習慣病を中心とした既存の健診対象疾患の中から高齢者健診でターゲットにすべき疾患を選定するため、65歳以上で有病率が高い疾患について洗い出しを行った。その結果、高血圧症が65歳以上の38.8%、脂質異常症26.6%、糖尿病11.7%、痛風8.9%、不整脈8.5%、緑内障7.9%、白内障16.3%、前立腺疾患13.1%(男性のみ)であった。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、痛風は65歳未満でも罹患者は多かったが、高齢者の方が有病率は高かった。
3) 血圧測定や血清脂質、血糖、HbA1c、心電図等の一般検査は高齢者健診でも重要であり、これらに加え眼科検診や腰椎レントゲン撮影なども高齢者のスクリーニング検査に必要であると判断された。
(2) 地域住民コホート研究
1) 第7次調査を平成24年7月に2,330名の調査で終了し、データの整理確認を行った。平成9年からの15年間の調査で総計3,983名、延べ16,338件の調査を行い、そのデータ整備を行った。
2) 骨粗鬆症、認知症、ADL低下、鬱、低栄養など、高齢者に特徴的でありながら健診でのエビデンスの乏しい病態について全国での65歳以上患者数推計や将来予測を行った。その結果、軽度認知機能障害は1,280万人、鬱518万人、骨粗鬆症962万人、低栄養212万人、ADL低下896万人であった。これら高齢者に高頻度にみられる疾患は将来推計でも急速に患者数が増加していくことが確認された。
3) 認知症の発症には比較的年齢が低い高齢者では過栄養やメタボリックシンドロームが、年齢が高い世代ではアルブミンやマグネシウムの低下など低栄養がリスクとなっていた。頭部MRIは認知症を予見する優れた検査であった。高インスリン血症や過栄養、骨粗鬆症や脳血管障害の併存は高齢者のADLを低下させる危険があり、マグネシウムや亜鉛、アルブミン、歩行、高齢期の適度な栄養は高齢者のADL低下には予防的に働くと考えられた。
 本研究により高齢者にとって重要な疾患や病態が選定され、認知機能障害、抑うつ、低栄養、脆弱などは、数百万人の患者がいて、将来、少なくとも2030年から2040年頃までは患者数が急増していくことが明らかとなった。また、これらの疾患のそのスクリーニング方法や予測の可能性が示された。疾患重視の今までの健診とは異なり、高齢者に高頻度にみられる疾患、高齢者に特有な疾患だけでなく、抑うつや閉じこもり、認知機能障害などの「こころの健康」や骨折、転倒、難聴、低栄養、ADL低下など高齢者の健康維持やQOLに深く関わる問題を潜在的に有するハイリスク者の早期発見が可能となると期待される。
結論
今年度までの結果から、血圧測定や血清脂質、血糖、HbA1c、尿酸、心電図等の一般検査は高齢者健診でも重要であり、これらに加え眼科検診や腰椎レントゲン撮影なども高齢者のスクリーニング検査に必要であると判断された。また、調査で実施されている多数の老化・老年病関連の検査項目のデータから、これらの疾患のスクリーニングに必要な検査項目を抽出した。骨密度検査、腰椎レントゲン検査、鬱スクリーニング検査、FFQ等の簡易栄養調査、認知機能検査などが高齢者健診では重要であると判断された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,600,000円
(2)補助金確定額
8,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,609,970円
人件費・謝金 771,453円
旅費 112,080円
その他 1,106,497円
間接経費 0円
合計 8,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
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