日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究

文献情報

文献番号
201315026A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 吉治(山口大 学医学部)
  • 中谷 友樹(立命館大学 文学部)
  • 石川みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 大内 妙子(山本 妙子)(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 西 信雄(国立健康・栄養研究所 国際産学研究センター)
  • 林 芙美(千葉県立保健医療大学 健康科学部)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 草間 かおる(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,364,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本人の食生活に影響する社会経済的要因の有無と程度を明らかにし、それをふまえ日本人におけるフードセキュリティ(食物の安定した入手)の把握のための指標の開発をおこなうことである。平成25年度は、1)成人について既存データベースの解析(研究1)とともに、2)既存のデータが少ない子どもと高齢者については実態調査(研究2)を実施した。
研究方法
研究1:国民健康・栄養調査(平成22、23年度)を用いて、社会経済指標と食品群別摂取量について地区、世帯、個人の3レベルを考慮したマルチレベル分析を用いて分析した。内閣府の食育調査(平成23年度)を用いて、世帯所得および生活のゆとり感と食品選択の基準、今後得たい知識等との関連について、必要な調整をおこないロジスティック回帰分析を用いて分析した。
研究2:1)「子どもの貧困」と2)「高齢者の買い物弱者」に焦点をあてた実態調査をおこなった。1)世帯の社会経済状態と子どもの食生活との関連を検討するため、4県の市町の教育委員会に協力を得て19小学校に在籍する5年生と保護者全数1447人に調査依頼し1196人から回答を得た。調査方法は、保護者へは食生活と社会経済的状況について質問紙調査、児童へは食生活の質問紙調査と4日間の食事記録(写真法併用)、学校健診の身長体重記録利用である。2)食料品店への近接性等と高齢者の食生活との関連を検討するため、4県の6市町に協力を得て、1次調査として住民基本台帳から独居高齢者全数9961人に対し郵送法で質問紙調査を実施し、5386人から回答を得た。その内、2次調査の2日間の食事記録に同意が得られた534人に食事調査を実施した。1)2)共に、一部を解析したが、主要な解析は平成26年度におこなう。
結果と考察
研究1:平成22年23年の国民健康・栄養調査のデータベースを用いた分析より、世帯の年間収入が低い世帯では、穀類、砂糖・甘味料、卵類の摂取量が多く、野菜類、果物類、きのこ類、魚介類等の摂取量が少なかった。また、生鮮食品のみで比較すると生鮮野菜、生果、生魚介類、生鮮肉の摂取量が少なかった。さらに内閣府食育調査のデータベースを用いた分析より、世帯の経済状況や暮らし向きによって、食習慣やその背景にある個人の知識や態度にも違いがあることが示された。以上より、成人については世帯の経済状態が摂取する食品に影響し、その媒介因子として個人の知識や態度が介在する可能性が示唆された。以上より、世帯の経済状態と食物摂取状況との関連があることが確認され、そのメカニズムについても示唆が得られたことは、政策形成上の意義がある。
研究2:1)世帯の社会経済状態の指標の検討をおこない、今後の解析で用いる貧困指標を検討し、貧困基準未満の世帯は経済面のフードセキュリティが低かった。保護者、児童の食生活と児童の体格について、一次集計と全国データとの比較をおこない、対象者が特殊な集団でないことを確認した。
2)食料品店への近接性を示す食環境指標の検討をおこなった。埼玉県A町の分析結果より、食料品店からの距離が遠い人は、男女とも地理的フードセキュリティが低く、男性では食品摂取の多様性が少なく、女性では関連がみられなかった。山口県A市の分析結果より、収入が100万円未満の場合、食品摂取の多様性が低くなるが、車やバイク等の移動手段の有無が食品多様性のより強い要因であることが示唆された。
結論
成人については、既存データより世帯収入が低い場合、食物摂取が穀類(主食)に偏ること、その中間因子として食品選択上、価格を重視する意識が介在していることが明らかとなった。また、日本で初めて世帯の社会経済的要因と子どもの食生活、食料品店への近接性や経済状態と高齢者の食生活といった課題に対して、複数日の食事調査を含む実証的データを収集できた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315026Z