文献情報
文献番号
201315020A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のスクリーニング手法の改善に関する疫学研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小倉 剛(大阪府結核予防会 )
研究分担者(所属機関)
- 内村 和広(公益財団法人結核予防会 結核研究所)
- 工藤 翔二(公益財団法人結核予防会 複十字病院)
- 太田 睦子(公益財団法人岩手県予防医学協会)
- 土屋 俊晶(公益財団法人新潟県保健衛生センター)
- 南 貴博(公益財団法人福岡県結核予防会)
- 岡山 明(公益財団法人結核予防会 第一健康相談所)
- 星野 斉之(田川 斉之)(公益財団法人結核予防会 第一健康相談所)
- 林 清二(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
- 福地 義之助(順天堂大学医学部 呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
COPDの大部分は、長期喫煙による肺の生活習慣病で、未受診のまま高齢に伴い重症化する。結核予防会と支部は、集団健診による早期発見をめざし、人間ドック受診者を対象にIPAGに準じた質問票による調査を行ってきたが、その効果は限定的であった。そこで簡易型肺機能測定機器;ハイ・チェッカーによるスクリーニングをめざし、検査手順、気流閉塞を規定するFEV1/FEV6%値、健診の場、確定診断などの面から具体的な検討を行うこととした。
研究方法
研究Ⅰでは、参加5施設(結核予防会第一健康相談所、岩手、新潟、大阪、福岡の4支部)での人間ドック受診者を対象に、IPAGに準じたCOPD質問票とハイ・チェッカー検査を併用して調査し、ドックの検査値と対比、検証することとした。まず、医療施設と違った集団健診の場でハイ・チェッカー検査が適正に行われるよう、健常人で予備試験を行い、検査手順の説明文(5項目)と検査手技に対する指導方法を標準化し、それを基に作成した統一プロトコールで研修会を行った。ハイ・チェッカー検査では、被検者の手技の適正度を3段階評価した。研究Ⅱでは、大阪府支部・堺診療所が出張して行う事業所の定期職場健診の受診者を対象に、同じ方法で質問票とハイ・チェッカーによる調査を行った。FEV1/FEV6 % が70%未満の気流閉塞例には、当日、確定診断の受診を勧奨し、同意者には国立病院機構・近畿中央胸部疾患病院へ紹介し、成績を調査した。これらの調査は全て参加者の同意を得て行い、成績はID番号で匿名化し、入力・解析は結核予防会第一健康相談所(研究Ⅰ)、同結核研究所(研究Ⅱ)で行った。
結果と考察
研究Ⅰは平成25年1月から調査を開始し、各施設で男女、年齢層、喫煙例別に割り付けた計4,019名から解析可能例が得られた。質問票のスコアによるCOPDハイリスク例のカットオフ値は17が適切で、その場合、感度、特異度は73.2%、64.2%と我々の過去の成績と同程度であった。気流閉塞を規定するFEV1/FEV6%値については、これまで70%~75%の範囲で検討されているが報告例は少なく未だ確定されていない。そこでスパイロメータでの気流閉塞例(1秒率<70%)に対する感度、特異度をFEV1/FEV6%ごとに調べると、FEV1/FEV6%が75%~76%で両者の曲線が交差し、それぞれ80%程度あり、FEV1/FEV6%による気流閉塞の規定は<75%が適切と考えられた。検査手技が「良好」と判定された群は全体の65%で、ドックのスパイロメータ検査値とより高い相関性が見られ、ハイ・チェッカーの感度は89.1%、特異度は87.7%と高値であった。検査手技の5項目評価では呼気の洩れが指摘されたことから、紙製のマウスピースの口側の断面を円形から楕円形に改良したところ、「良好」群の割合が増加した。
研究Ⅱでは平成24年7月から15事業所で25回の調査を行い、健診予定者の88.2%に当たる804名が受診した。質問票のハイリスク例のスコアのカットオフ値は研究Ⅰ同様17が適切で、その場合の頻度は33.6%、FEV1/FEV6%<70%での感度は71.4%。特異度は66.6%と過去の成績と同程度であったが、<73%、<75%では、ハイリスク例、特にodds比が低い若年層の非、過去喫煙例が増加し、質問票の感度は69.0%、58.9%に低下した。FEV1/FEV6%<70%の気流閉塞例31名に、当日、確定診断を勧奨した。他施設を受診した例は調査できなかったが、健診終了後5カ月を経た時点での受診者は7名(22.5%)で、うち5名がCOPDと確定診断された。病期は3名がⅠ期、2名がⅡ期で、すべて現喫煙例、COPD未診断例であった。
研究Ⅱでは平成24年7月から15事業所で25回の調査を行い、健診予定者の88.2%に当たる804名が受診した。質問票のハイリスク例のスコアのカットオフ値は研究Ⅰ同様17が適切で、その場合の頻度は33.6%、FEV1/FEV6%<70%での感度は71.4%。特異度は66.6%と過去の成績と同程度であったが、<73%、<75%では、ハイリスク例、特にodds比が低い若年層の非、過去喫煙例が増加し、質問票の感度は69.0%、58.9%に低下した。FEV1/FEV6%<70%の気流閉塞例31名に、当日、確定診断を勧奨した。他施設を受診した例は調査できなかったが、健診終了後5カ月を経た時点での受診者は7名(22.5%)で、うち5名がCOPDと確定診断された。病期は3名がⅠ期、2名がⅡ期で、すべて現喫煙例、COPD未診断例であった。
結論
両研究を総合すると、集団健診では、質問票に代えてハイ・チェッカー検査でCOPDをより効果的にスクリーニングしうる可能性が明らかとなった。基本的には、職場での集団健診は高い受診率を期待でき、一次スクリーニングとしての質問票は必要ないが、今後、集団健診でハイ・チェッカー検査が適正に行われるよう、ハイ・チェッカー検査の手順・仕方の指導や気流閉塞を規定するFEV1/FEV6%を定める必要があることも示された。さらに最終的にCOPDスクリーニングの成果を高めるには、COPDの啓発を図り、確定診断に関わる医療連携システムを構築する必要性も示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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