文献情報
文献番号
201315013A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓脂肪蓄積を簡便に推定できる評価モデル式の開発とそのリスク評価に関する縦断研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松下 由実(国立国際医療研究センター 臨床研究支援部)
研究分担者(所属機関)
- 中川 徹(日立製作所 日立健康管理センタ)
- 山本 修一郎(日立製作所 日立健康管理センタ)
- 溝上 哲也(国立国際医療研究センター 疫学予防研究部)
- 野田 光彦(国立国際医療研究センター 糖尿病研究部 )
- 高橋 義彦(岩手医科大学 糖尿病・代謝内科学分野)
- 西 信雄(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
- 大庭 志野(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究代表者らが開発中である内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、効率的、経済的で簡便に測れる評価モデル式を身体計測値、バイオマーカー、生活習慣要因から検討し、推定能力の高いものにする。また、その式が循環器疾患リスクを予測できるかどうかについて追跡調査により明らかにすることを目的とする。
研究方法
職域人間ドック受診者のうち、腹部CT検査が導入された平成16年度以降を分析対象とした。さらに、平成20年度以降の受診者には同意を得た上で研究用の追加採血を行った。人間ドックでは、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、空腹時血糖、ウエスト周囲長等のメタボリックシンドローム診断に必要な項目に加え、インスリンや高感度CRPを受診者全員に測定している。腹部CTによる内臓脂肪面積の計測は希望者に行っているが、人間ドック受診者17,000人の約3分の1にあたる6,000人が毎年、腹部CTを受診しており、男女比は6:1であった。心電図も測定した。
方法
1.採血およびアディポサイトカインの測定(同意書の得られた人のみ)
人間ドック受付時に研究用採血についての説明・依頼文書と同意書を渡し、書面で同意を得た。同意の得られた人から静脈血5mlを採取し、同施設にて7343名のアディポネクチンを測定した。残検体は健診施設内の冷凍庫(-80℃)に一時保管し、3ヶ月ごとに国立国際医療研究センターへ低温で輸送し、凍結保管(-80℃)した。
2.既存データ(平成16年度~平成24年度)のデータベース化
1)人間ドックデータ(腹部CT、肺部CTを含む)をデータベース化した。
2)各疾病のICD-10コード化を行った。
3)心電図データのミネソタコード化を行った。
4)糖尿病・高血圧・高脂血症・脳心血管疾患発症の把握
糖尿病、高血圧、高脂血症、脳心血管疾患の発症、既往歴、治療の有無は人間ドック成績、調査票および欠勤時の診断書より把握した。
3.データの解析
内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、効率的、経済的で簡便に測れる評価モデル式を身体計測値、バイオマーカー、生活習慣要因から再検討し、妥当性の検討を横断解析で行った。さらに心血管疾患イベントをエンドポイントとした縦断解析を行い、作成した評価モデル式の妥当性を確認した。
方法
1.採血およびアディポサイトカインの測定(同意書の得られた人のみ)
人間ドック受付時に研究用採血についての説明・依頼文書と同意書を渡し、書面で同意を得た。同意の得られた人から静脈血5mlを採取し、同施設にて7343名のアディポネクチンを測定した。残検体は健診施設内の冷凍庫(-80℃)に一時保管し、3ヶ月ごとに国立国際医療研究センターへ低温で輸送し、凍結保管(-80℃)した。
2.既存データ(平成16年度~平成24年度)のデータベース化
1)人間ドックデータ(腹部CT、肺部CTを含む)をデータベース化した。
2)各疾病のICD-10コード化を行った。
3)心電図データのミネソタコード化を行った。
4)糖尿病・高血圧・高脂血症・脳心血管疾患発症の把握
糖尿病、高血圧、高脂血症、脳心血管疾患の発症、既往歴、治療の有無は人間ドック成績、調査票および欠勤時の診断書より把握した。
3.データの解析
内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、効率的、経済的で簡便に測れる評価モデル式を身体計測値、バイオマーカー、生活習慣要因から再検討し、妥当性の検討を横断解析で行った。さらに心血管疾患イベントをエンドポイントとした縦断解析を行い、作成した評価モデル式の妥当性を確認した。
結果と考察
縦断解析により、内臓脂肪蓄積が多いほど、メタボリックシンドロームのリスクが高まることが明らかになった。内臓脂肪面積の3年間の増加量を50 cm2未満に抑制することにより、メタボリックシンドロームのリスク重積の解消につながる可能性が示唆された。
ウエスト周囲長の年代別の変化は、内臓脂肪面積の年代別変化を特に男性においては正確に反映していないことが明らかになった。メタボリックシンドローム診断のためのウエストカットオフは、年齢別に定める必要があることが示唆された。
また、脂肪細胞から放出されるホルモン(アディポネクチン)は、内臓脂肪面積とは独立してメタボリックシンドロームに影響を及ぼしていることが明らかとなった。
既存の肥満指標(内臓脂肪面積、ウエスト周囲長、BMI)と我々が作成した新しい体格指標(BSI; Body Shape Index)を用い、どの体格指標が心筋梗塞および心電図異常を予測うる能力が最も高いかを10,811人を対象としてROC曲線を描き、検討した。ROC曲線の曲線下面積を比較したところ、男女ともBSIが最も大きかった。男性では、BSIは内臓脂肪面積、ウエスト周囲長、BMIよりも有意にROCの曲線下面積が大きくなっており、女性では、BSIは内臓脂肪面積とほぼ同等で、ウエスト周囲長、BMIよりは有意に大きかった。
さらにBSIを用い、虚血性心疾患の発症のハザード比を求めた(追跡期間:8年)。女性は発症数が低かったため、解析できず、男性のみ(2632名)解析を行った。BSIで2分位に分け、BSIが低いグループを基準としたハザード比は、1.3であった。
ウエスト周囲長の年代別の変化は、内臓脂肪面積の年代別変化を特に男性においては正確に反映していないことが明らかになった。メタボリックシンドローム診断のためのウエストカットオフは、年齢別に定める必要があることが示唆された。
また、脂肪細胞から放出されるホルモン(アディポネクチン)は、内臓脂肪面積とは独立してメタボリックシンドロームに影響を及ぼしていることが明らかとなった。
既存の肥満指標(内臓脂肪面積、ウエスト周囲長、BMI)と我々が作成した新しい体格指標(BSI; Body Shape Index)を用い、どの体格指標が心筋梗塞および心電図異常を予測うる能力が最も高いかを10,811人を対象としてROC曲線を描き、検討した。ROC曲線の曲線下面積を比較したところ、男女ともBSIが最も大きかった。男性では、BSIは内臓脂肪面積、ウエスト周囲長、BMIよりも有意にROCの曲線下面積が大きくなっており、女性では、BSIは内臓脂肪面積とほぼ同等で、ウエスト周囲長、BMIよりは有意に大きかった。
さらにBSIを用い、虚血性心疾患の発症のハザード比を求めた(追跡期間:8年)。女性は発症数が低かったため、解析できず、男性のみ(2632名)解析を行った。BSIで2分位に分け、BSIが低いグループを基準としたハザード比は、1.3であった。
結論
CTで測定した内臓脂肪面積に比べて男性ではより鋭敏に、女性では同等に心筋梗塞と心電図異常を検出でき、なおかつ効果的、経済的で簡便に測れる評価モデル式の作成に成功した。虚血性心疾患発症をエンドポイントとした縦断解析では、男性ではBSIが高くなるとオッズ比の上昇がみられ、妥当性が認められた。
今後は、研究代表者らが開発した内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、経済的で簡便に測れる評価モデル式(BSI)が循環器疾患発症を予測できるかどうかについて、さらに追跡期間を延ばし、発症率の低い女性についても検討する。
今後は、研究代表者らが開発した内臓脂肪の蓄積をより鋭敏に反映する効果的、経済的で簡便に測れる評価モデル式(BSI)が循環器疾患発症を予測できるかどうかについて、さらに追跡期間を延ばし、発症率の低い女性についても検討する。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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