緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究

文献情報

文献番号
201314032A
報告書区分
総括
研究課題名
緩和医療に携わる医療従事者の育成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木澤 義之(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科 内科系講座 先端緩和医療学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 佐藤 哲観(弘前大学医学部附属病院麻酔科、緩和ケア診療室)
  • 小川 朝生(国立がん研究センター東病院精神腫瘍学開発部)
  • 山本 亮(佐久総合病院緩和ケア科)
  • 永山 淳(国家公務員共済組合連合会浜の町病院緩和医療科)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児総合診療科)
  • 坂下 明大(神戸大学医学部附属病院、腫瘍センター、緩和ケアチーム)
  • 宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 笹原 朋代(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援研究部 がん医療支援研究室)
  • 岩満 優美(北里大学大学院医療系研究科・医療心理学)
  • 伊勢 雄也(日本医科大学付属病院薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、わが国の緩和ケアの均てん化に資するため、1)全国のがん診療拠点病院等の緩和ケアチームが、限られた資源の中で効果的に活動するための運用モデルを作成すること、2)緩和ケアチームを構成する医療従事者、ならびに緩和ケアチームと協働して基本的な緩和ケアを実践するがん診療に携わる医師、看護師、メディカルスタッフの教育方法を開発し、その実施性と有用性を検証することである。
研究方法
(1)緩和ケアチームが、限られた資源の中で効果的に活動するための運用モデルの作成:緩和ケアチームに専従の医師がおらず、かつコンサルテーション数が150件を上回る病院を選定し『緩和ケアチームの活動を活性化するために行っている工夫とは』をテーマとしたフォーカスグループインタビューを実施し、インタビュー内容を質的に分析を行った。
(2)緩和ケアチームを構成する医療従事者の教育方法に関する研究:国立がん研究センターがん対策情報センターと協働して、全国のがん診療拠点病院等の緩和ケアチームを対象として、緩和ケアチーム研修会を開催し、その教育効果を平成20年度に本研究班で開発した活動評価指標を使用し、緩和ケアチームの活動状況を問う17項目と活動に対する自信を問う6項目、対象者背景10項目、研修会前、研修会直後に実施した。
(3)緩和ケアチームと協働して基本的な緩和ケアを実践するがん診療に携わる医師、看護師、メディカルスタッフの教育方法に関する研究 1)効果的ながん診療に携わる医師のための緩和ケア研修会の研修会の効果の評価研究:信頼性妥当性が検証された『PEACE-Q33』を用いて前後比較試験を行い、その結果を解析した。2)看護師のための緩和ケア教育プログラムであるEnd-of-Life Nursing Education Consortium- Japan (ELNEC-J)の教育効果を検証するために(1)Weighting-list Controlを用いた無作為化比較試験、(2)コホート研究を行った。3)がん診療に携わる小児科医に対する緩和ケア教育プログラムであり、小児血液がん学会が厚生労働省の委託事業の一環として実施している小児緩和ケア研修会Care for Life-threatening Illness in Childhood(CLIC)の教育効果の検証を行った。
(4)緩和医療の研究に携わる医師の育成に関する研究:緩和ケアに関心のある若手研究者とワークショップ形式で会議を行い、その内容を質的に分析した。
(5)専門緩和ケアに従事する医療従事者の育成に関する研究 専門的緩和ケアに従事する医療従事者の教育の基礎資料とするために、ホスピス・緩和ケア病棟における入院・入棟に関する全国調査を郵送法で実施した。
結果と考察
(1)内容分析から緩和ケアチームの効率的な運用に関しては「コミュニケーション」「専従看護師の重要性」「アクセスの容易さ」などの項目が抽出されてきた。工夫に関しては、「地域でのネットワーク」「カンファレンス」などの項目が抽出された。
(2)緩和ケアチーム研修会を開催し、その教育効果を研修会前後で比較した。研修前73名、研修直後70名から回答を得た。研修前と研修直後で比較の結果、緩和ケアチームの一員として活動することに自信がないと回答した割合は35%から14%に変化した。また、緩和ケアチームを構成する心理士の活動の手引きを作成し、全国のがん診療拠点病院等に配布した。
(3)1)研修会を受講により、緩和ケアの知識が上昇し、効果は2ヶ月間持続することが明らかとなった。2)またELNEC-Jの有効性を検証するためのRCTとコホート研究で、ELNEC-J CQの知識・態度に有意な介入結果が見られた(P<0.0001)3)小児緩和ケア研修会C(CLIC)を開催し、その教育効果の検証を行った。
(4)がん治療医が困難と感じている症状に対する対応や、EOL discussionなどが重要な研究テーマとして挙げられた。国際的に提案されている緩和ケアの研究のためのガイダンスであるMorecare frameworkの日本での適応可能性について検討し、適応可能であることを確認した。
(5)2014年1月―3月に、251施設に対して行われ、190施設から回答を得た。緩和ケア病棟の入院に必要な条件、患者の状態、病状、有料室の状況などが明らかとなった。
結論
本研究の実施により、1)限られた資源の中で効果的に活動するための緩和ケアチームの運用モデルに関する知見のプールが作成され、2)基本的緩和ケアの実施に必要な医師・看護師に対する緩和ケアの教育プログラムの開発を行いその知識に関する教育効果が検証された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201314032C

収支報告書

文献番号
201314032Z