文献情報
文献番号
201314024A
報告書区分
総括
研究課題名
N0口腔癌における選択的頸部郭清術とセンチネルリンパ節ナビゲーション手術の無作為化比較試験
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-がん臨床-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 泰久(愛知県がんセンター 頭頸部外科部)
研究分担者(所属機関)
- 吉本 世一(国立がん研究センター中央病院 頭頸部腫瘍科・形成外科)
- 松塚 崇(福島県立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 甲能 直幸(杏林大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 本間 明宏(北海道大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 塩谷 彰浩(防衛医科大学校 耳鼻咽喉科)
- 横山 純吉(順天堂大学 耳鼻咽喉科頭頸科)
- 大倉 康男(杏林大学 病理学)
- 小須田 茂(防衛医科大学校 放射線医学講座)
- 近松 一朗(群馬大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 小柏 靖直(杏林大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 吉崎 智一(金沢大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 上村 裕和(奈良県立医科大学 耳鼻咽喉科)
- 三浦 弘規(国際医療福祉大学三田病院 頭頸部腫瘍センター)
- 菅澤 正(埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部腫瘍科)
- 鈴木 幹男(琉球大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
- 宮崎 眞和(国立がん研究センター東病院 頭頸部腫瘍科・形成外科)
- 平野 滋(京都大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 尾瀬 功(愛知県がんセンター 疫学・予防部)
- 谷田部 恭(愛知県がんセンター 遺伝子病理診断部)
- 川北 大介(名古屋市立大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
- 塚原 清彰(東京医科大学八王子医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
- 鈴木 基之(大阪府立成人病センター 耳鼻咽喉科)
- 村上 善子(井立 善子)(愛知県がんセンター 遺伝子病理診断部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
頭頸部癌治療において、低侵襲と機能温存を目指す個別化医療の開発が求められている。予後因子である頸部リンパ節転移について頸部郭清術でそれを実現し、さらに新たな診断および治療法を開発することが目的である。
研究方法
1) 口腔癌に対する研究:
研究課題:「N0口腔癌における選択的頸部郭清術とセンチネルリンパ節ナビゲーション手術の無作為化比較試験」(UMIN000006510)
基盤研究として「口腔癌に対するセンチネルリンパ節ナビゲーション頸部郭清術の研究」を平成23年より実施し、今回追跡調査を終了した。その研究成果を受けセンチネルリンパ節(SN)ナビゲーション手術の無作為化比較試験を開始した。臨床的にリンパ節転移を認めない口腔癌症例について、ラジオアイソトープ(RI)を用いたSN生検法に基づくナビゲーション手術の予防的頸部郭清術が一律の選択的頸部郭清術に対して生存率は非劣性であるが、術後機能障害および合併症において優位性、すなわち低侵襲性を有することを検証する。対象はリンパ節転移を認めない口腔癌lateT1~T2症例で、主エンドポイントは3年全生存率である。目標症例数は274例、登録期間は4年間である。
2) 咽喉頭癌に対する研究:
研究課題:「咽喉頭癌に対する経口的切除術とインドシアニングリーン蛍光法センチネルリンパ節生検術による低侵襲手術の研究」(UMIN000009331)
これに先立って「インドシアニングリーン蛍光法とRIを用いた口腔咽喉頭癌SN生検術の実行可能性の検討」の研究を行った。RI法とインドシアニングリーン(ICG)法には高い一致率が認められ、ICG法によるSN同定が可能と判断された。この結果を受け、早期咽喉頭癌に対して、経口的切除法にICGによるSN生検法を併用する治療法の臨床試験を計画した。SN転移陽性例に対しては原則として解剖学的理由により二期的に頸部郭清術を行う。本試験では最新の診断と治療法の併用で最適かつ低侵襲な治療ができるものと期待される。一次的エンドポイントは後発頸部リンパ節転移率で、目標症例数は40例、登録期間は3年間で計画した。
3) センチネルリンパ節におけるリンパ管新生に関する研究
研究課題:「口腔癌のセンチネルリンパ節におけるリンパ管新生とリンパ節転移に関する検討」口腔癌でSNのリンパ管新生とリンパ節転移の関連について免疫組織学的に検討した。
研究課題:「N0口腔癌における選択的頸部郭清術とセンチネルリンパ節ナビゲーション手術の無作為化比較試験」(UMIN000006510)
基盤研究として「口腔癌に対するセンチネルリンパ節ナビゲーション頸部郭清術の研究」を平成23年より実施し、今回追跡調査を終了した。その研究成果を受けセンチネルリンパ節(SN)ナビゲーション手術の無作為化比較試験を開始した。臨床的にリンパ節転移を認めない口腔癌症例について、ラジオアイソトープ(RI)を用いたSN生検法に基づくナビゲーション手術の予防的頸部郭清術が一律の選択的頸部郭清術に対して生存率は非劣性であるが、術後機能障害および合併症において優位性、すなわち低侵襲性を有することを検証する。対象はリンパ節転移を認めない口腔癌lateT1~T2症例で、主エンドポイントは3年全生存率である。目標症例数は274例、登録期間は4年間である。
2) 咽喉頭癌に対する研究:
研究課題:「咽喉頭癌に対する経口的切除術とインドシアニングリーン蛍光法センチネルリンパ節生検術による低侵襲手術の研究」(UMIN000009331)
これに先立って「インドシアニングリーン蛍光法とRIを用いた口腔咽喉頭癌SN生検術の実行可能性の検討」の研究を行った。RI法とインドシアニングリーン(ICG)法には高い一致率が認められ、ICG法によるSN同定が可能と判断された。この結果を受け、早期咽喉頭癌に対して、経口的切除法にICGによるSN生検法を併用する治療法の臨床試験を計画した。SN転移陽性例に対しては原則として解剖学的理由により二期的に頸部郭清術を行う。本試験では最新の診断と治療法の併用で最適かつ低侵襲な治療ができるものと期待される。一次的エンドポイントは後発頸部リンパ節転移率で、目標症例数は40例、登録期間は3年間で計画した。
3) センチネルリンパ節におけるリンパ管新生に関する研究
研究課題:「口腔癌のセンチネルリンパ節におけるリンパ管新生とリンパ節転移に関する検討」口腔癌でSNのリンパ管新生とリンパ節転移の関連について免疫組織学的に検討した。
結果と考察
1) 本邦におけるSN生検術の普及、および標準化を目的とした多施設共同研究第2相試験を行った。術中迅速多切片凍結診断による一期的頸部郭清術を行った。2年粗生存率は94.4%であり、本方法での腫瘍学的安全性が確認されSN生検術の普及および標準化の可能性が強く示唆された。
第3相試験では2013年11月に中間登録症例数に達し、中間解析を行い、試験継続の妥当性について検討した。年齢、性、部位、T因子、術後合併症、切除術式で両群間に有意差を認めなかったが、出血量においては実験群が有意に低値であった。生存期間においては無作為割付の層別因子を考慮した層別化ログランク検定において、p値は許容値範囲内であった。また、SN偽陰性率とSN非同定率のいずれもその信頼区間の下限値は許容値範囲内であった。口腔癌の治療におけるSNナビゲーション領域頸部郭清術の有効性を明らかにする可能性が示された。
2) 従来のICG蛍光法に深部観察カプセルを用いることによって、咽喉頭癌の好発リンパ節転移領域である深頸リンパ節のSNを同定することが可能であった。これまでに5施設で倫理委員会の承認が得られ、2013年1月より症例登録を開始した。2013年末までの進捗率は18例、45%であった。引き続き症例を登録している。さらに頭頸部癌におけるICG法SN節生検の工夫としてICG-フチン酸混合法の基礎的検討を行い、臨床的展開を予定している。
咽喉頭癌に対する経口法は低侵襲機能温存手術が可能であり、潜在的リンパ節転移にもICG法によるSN生検法を行うことでリンパ節に対する最適かつ低侵襲の新たな治療法が確立できると期待される。さらにトレーサーにRIに変わりICGを用いることで、術中に咽喉頭腫瘍周囲にトレーサーを正確に注入することが可能である。さらに医療従事者および被験者の被爆が避けられ、安全な医療の観点からも有用である。
3) SNのリンパ管新生の研究より、転移成立前にリンパ管新生が起こることを支持する結果が得られた。
第3相試験では2013年11月に中間登録症例数に達し、中間解析を行い、試験継続の妥当性について検討した。年齢、性、部位、T因子、術後合併症、切除術式で両群間に有意差を認めなかったが、出血量においては実験群が有意に低値であった。生存期間においては無作為割付の層別因子を考慮した層別化ログランク検定において、p値は許容値範囲内であった。また、SN偽陰性率とSN非同定率のいずれもその信頼区間の下限値は許容値範囲内であった。口腔癌の治療におけるSNナビゲーション領域頸部郭清術の有効性を明らかにする可能性が示された。
2) 従来のICG蛍光法に深部観察カプセルを用いることによって、咽喉頭癌の好発リンパ節転移領域である深頸リンパ節のSNを同定することが可能であった。これまでに5施設で倫理委員会の承認が得られ、2013年1月より症例登録を開始した。2013年末までの進捗率は18例、45%であった。引き続き症例を登録している。さらに頭頸部癌におけるICG法SN節生検の工夫としてICG-フチン酸混合法の基礎的検討を行い、臨床的展開を予定している。
咽喉頭癌に対する経口法は低侵襲機能温存手術が可能であり、潜在的リンパ節転移にもICG法によるSN生検法を行うことでリンパ節に対する最適かつ低侵襲の新たな治療法が確立できると期待される。さらにトレーサーにRIに変わりICGを用いることで、術中に咽喉頭腫瘍周囲にトレーサーを正確に注入することが可能である。さらに医療従事者および被験者の被爆が避けられ、安全な医療の観点からも有用である。
3) SNのリンパ管新生の研究より、転移成立前にリンパ管新生が起こることを支持する結果が得られた。
結論
1) 臨床3相試験より口腔癌の治療におけるSNナビゲーション頸部郭清術が標準の選択的頸部郭清術に対して予後で非劣勢であり、術後機能的に優位であることを明らかにする。
2) 早期咽喉頭癌に対して、経口的切除法とICG蛍光法によるSN生検術の組み合わせによる低侵襲機能温存手術の確立を目指す。
2) 早期咽喉頭癌に対して、経口的切除法とICG蛍光法によるSN生検術の組み合わせによる低侵襲機能温存手術の確立を目指す。
公開日・更新日
公開日
2015-09-03
更新日
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