ATL克服に向けた研究の現状調査と進捗状況把握にもとづく効率的な研究体制の構築に関する研究 

文献情報

文献番号
201314019A
報告書区分
総括
研究課題名
ATL克服に向けた研究の現状調査と進捗状況把握にもとづく効率的な研究体制の構築に関する研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(東京大学 大学病院 新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一成(国立感染症研究所)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学医学部)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院)
  • 上平 憲(長崎市立市民病院)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院)
  • 岩永 正子(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者岩永正子の所属機関変更 平成25年9月1日付けで異動のため 旧)帝京大学 新)東京慈恵会医科大学

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1とそれによって発症するATLについて、国内及び海外における研究進捗情報を収集し、感染予防、発症予防、新規治療法開発、の観点から、「HTLV-1関連疾患研究領域」での研究事業の、研究推進の現状と問題点を把握して評価し、それを元に、「医療行政」と「関連疾患研究」の適正な推進に向けた提言を行う事を目指す。
研究方法
(1)国内におけるATL及びHTLV-1関連領域の研究の現状把握:①「HTLV-1関連疾患研究領域」および関連の厚生労働科学研究費による研究事業による研究の現状把握を目的とした関連班会議へのオブザーバー派遣による評価書の作成、②「ATLシンポジウム」開催と当該領域研究会の共催および情報把握
(2)国際的な当該領域の研究の現状把握:A.国際学会等への参加による情報収集と交流、B.国際シンポジウム等の開催による情報収集と交流。
(3)「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究事業全体を対象とした合同成果発表会の開催
(4)他省庁の研究補助金による研究課題に関する現状調査と評価
(5)「HTLV-1対策推進協議会」と班員との情報交換
(6)年3回の班会議による情報交換と議論
結果と考察
1. 国内における当該領域の研究の現状把握:
(1) 厚生労働科学研究費研究事業の現状把握と評価を行った。
 (A)「HTLV-1関連疾患研究領域」全体の現状を調査し、研究課題の領域的な分布のマッピング、各研究課題の研究費の配分、研究期間の設定、等を取りまとめた。
 (B) 各研究事業の研究進捗状況の評価:①各研究事業の班会議へのオブザーバー派遣による進捗状況評価を行った(のべ23回)。「進捗状況について」と「今後の展望について」の2つの視点から評価した。一部今後の改善を求める指摘もあったが、大多数は「ほぼ順調に進展している」と評価された。年度末の研究成果合同発表会の発表では、別途評価シートを作製し評価項目に沿って進捗状況を評価した。
(2) 国内の研究進捗状況を把握するため「第2回ATLシンポジウム」を「第6回HTLV-1研究会」と併催の形で開催した。4名の若手研究者による最新の成果が発表され、世界をリードする研究が進展している事が伺われた。
2. 国際的な現状把握:①国際的な現状把握と情報交換および交流を目的に、「第3回国際シンポジウム」を「第6回HTLV-1研究会」と併催の形で開催した。海外3名、国内3名の研究者が研究成果を発表した。②国際学会等での情報収集:分担研究者3名が、当領域の国際学会である第16回国際ヒトレトロウイルス学会に参加して情報収集を行った。 我が国における臨床研究の重要性と国際的意義が確認されたが、基礎研究に関しては、我が国のみならず、欧米の研究グループも活発に研究を進めており、我が国でも更なる活性化が期待された。
3. 合同成果発表会の開催:当研究領域の25研究課題と関連研究事業の1課題を合わせて、全体で26の研究事業について、研究代表者が本年度の研究進捗状況を発表し、議論を行った。評価シートを用いて評価し、終了後の当研究班の班会議で評価と総括を行った。全体としては研究が順調に進捗していると評価されたが、一部の班では改善の余地があるとされた。研究事業のマッピングでは、ATLの発症機構と治療研究に多くの研究班がある事、基礎ウイルス学と関連疾患(HAMおよびぶどう膜炎)領域での研究事業が少ない事が指摘された。
4. 文部科学省科学研究費補助金による研究課題に関する現状と評価:採択状況、研究テーマ、研究期間等の調査と分析を行った。文部省科学研究費助成金による研究課題は、個人研究であるため規模が小さい事、基礎研究の課題が多い事、テーマの継続性にかける面があることが示された。
5. 「HTLV-1対策推進協議会」と班員との情報交換:平成25年度は、第5回(平成25年9月25日)および第6回(平成26年3月13日)の2回の協議会が開催された。
本研究班の班会議の席で、協議会での議論を議事録等に基づいて紹介し、情報の共有を図ると共に、議論を行った。
6. 年3回の班会議とメール会議による情報交換と議論:平成25年度は、合計3回(平成25年6月8日、11月9日、2月8日)の班会議を開催した。
7. 提言のとりまとめ:3年間の活動を背景に、今後のATL研究及び「HTLV-1関連疾患研究領域」の取り組むべき課題等につき提言をまとめた。
結論
当研究領域全体の研究の進捗状況が把握された。今後取り組むべき課題が明確になるとともに、研究課題の適正な配置と継続的な研究体制の維持が課題であるとの認識が得られた。本領域の研究と臨床における我が国の役割の重要性が改めて認識された。これらをもとに、「提言」を取りまとめた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201314019B
報告書区分
総合
研究課題名
ATL克服に向けた研究の現状調査と進捗状況把握にもとづく効率的な研究体制の構築に関する研究 
課題番号
H23-がん臨床-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(東京大学 大学病院 新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一成(国立感染症研究所)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学医学部)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院)
  • 上平 憲(長崎市立市民病院)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院)
  • 岩永 正子(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者岩永正子の所属機関変更 平成25年9月1日付けで異動のため 旧)帝京大学 新)東京慈恵会医科大学

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1とそれによって発症するATLについて、国内及び海外における研究進捗情報を収集し、感染予防、発症予防、新規治療法開発、の観点から、「HTLV-1関連疾患研究領域」での研究事業の、研究推進の現状と問題点を把握して評価し、それを元に、「医療行政」と「関連疾患研究」の適正な推進に向けた提言を行う事を目指す。
研究方法
(1) 国内におけるATL及びHTLV-1関連領域の研究の現状把握:
 1.「HTLV-1関連疾患研究領域」および関連の厚生労働科学研究費による研究事業の現状把握を目的とした関連班会議へのオブザーバー派遣による評価書の作成(H24,25)
 2.「ATLシンポジウム」開催と当該領域研究会の共催および情報把握(H24, 25)
(2) 国際的な当該領域の研究の現状把握:
 1. 国際学会等への参加による情報収集と交流
 2. 国際シンポジウム等の開催による情報収集と交流
(3)「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究事業全体を対象とした合同成果発表会の開催(H23は「HTLV-1/ATL研究成果発表会」)
(4) 他省庁の研究補助金による研究課題に関する現状調査と評価(H23-25)
(5)「HTLV-1対策推進協議会」と班員との情報交換(H23-25)
(6) 年3回の班会議による情報交換と議論(H23-25)
結果と考察
(1) 国内の研究の現状把握:① 毎年度ごとに厚生労働科学研究費研究事業の現状把握と評価を行った。
 1.「HTLV-1関連疾患研究領域」全体の現状を調査し、研究課題の領域的な分布のマッピング、各研究課題の研究費の配分、研究期間の設定、等を取りまとめた。
 2. 各研究事業の研究進捗状況の評価(H24,25):1) 各研究事業の班会議へオブザーバーを派遣し「進捗状況について」と「今後の展望について」の2つの視点から評価した(のべ43回(H24)、のべ23回(H25))。一部今後の改善を求める指摘もあったが、大多数は「ほぼ順調に進展している」と評価された。H25年度末の研究成果合同発表会の発表では、別途評価シートを作成し評価項目に沿って進捗状況を評価した。2) 国内の研究進捗状況を把握するため、「ATLシンポジウム」を2回(H24,25)、「第5回及び6回HTLV-1研究会」と併催の形で開催した。それぞれ8名および4名の若手研究者から最新の成果が発表され、世界をリードする研究が進展している事が伺われた。
(2) 国際的な現状把握:
 1. 現状把握と情報交換および交流を目的に、「国際シンポジウム(3回)」を「第4~6回HTLV-1研究会」と併催の形で開催した。のべ海外14名、国内11名の研究者が研究成果を発表した。
 2. 国際学会等での情報収集:3年間で3名の班員が、当領域に関連の国際学会に参加して情報収集を行った。 我が国における臨床研究の重要性と国際的意義が確認されたが、基礎研究に関しては、我が国のみならず、欧米の研究グループも活発に研究を進めており、我が国でも更なる活性化が期待された。
(3) 合同成果発表会の開催:各年度に当研究領域の研究課題と関連研究事業の1課題を合わせて、研究代表者が当該年度の研究進捗状況を発表し、議論を行った。H25は評価シートを用いて評価し、終了後の本研究班の班会議で評価と総括を行った。全体としては研究が順調に進捗していると評価されたが、一部の班では改善の余地があるとされた。研究事業のマッピングでは、ATLの発症機構と治療研究に多くの研究班がある事、基礎ウイルス学と関連疾患(HAMおよびぶどう膜炎)領域での研究事業が少ない事が指摘された。
(4) 文部科学省科学研究費補助金による研究課題に関する現状と評価:各年度の採択状況、研究テーマ、研究期間等の調査と分析を行った。研究課題は、個人研究である事、基礎研究の課題が多い事、テーマの継続性に欠ける面があることが示された。
(5)「HTLV-1対策推進協議会」と班員との情報交換:各年度で、開催された協議会での議論を本研究班の班会議の席で、議事録等に基づいて紹介し、情報の共有を図ると共に、議論を行った。
(6) 年3回の班会議とメール会議による情報交換と議論:各年度に2~3回の班会議を開催した。
(7) 提言のとりまとめ:最終年度(H25)に、3年間の活動を背景に、成果と残された課題および明らかになった課題を取りまとめ、今後のATL研究及び「HTLV-1関連疾患研究領域」の取り組むべき課題等について提言をまとめた。
結論
本研究領域全体の研究の進捗状況と国際的な位置付けが明らかになった。今後取り組むべき課題が明確になるとともに、研究課題の適正な配置と継続的な研究体制の維持が課題であるとの認識が得られた。これを元に、最終年度に「提言」を取りまとめた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201314019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「HTLV-1関連疾患研究領域」で採択された全ての研究事業の研究代表者が、年度末に当研究課題が組織した「合同成果発表会」に参加し、研究事業の進捗状況を発表したことは、研究の進捗状況の相互の確認に有益であり、さらに、異なった研究領域の研究者の情報交換と交流の場となった。その結果、相互理解の促進のみならず幅広い共同研究体制構築の基盤となった。また、各研究班の班会議へ参加して進捗状況を把握・評価して、最終年度に、当該領域の研究推進体制の【提言】をまとめ、当該領域の研究の今後の方向性を明確にした。
臨床的観点からの成果
国内外の研究者によるシンポジウムを開催し、HTLV-1の疫学、母子感染予防、疾患の新規治療開発研究の現状を把握する機会を提供した。HTLV-1と関連疾患は、既存の学会(ウイルス学会、血液学会、癌学会、神経学会等)においては、いずれもマイノリティである上に、他領域の臨床と研究の情報を把握する機会が無かった。従って、「HTLV-1研究会」の共催と上記のシンポジウム開催は、当該領域の臨床情報の把握と研究推進に大きく貢献した。
ガイドライン等の開発
ガイドラインは作成しなかったが、最終年度に「HTLV-1関連疾患研究領域」の研究推進に資する【提言】をまとめて報告書に記載した。これは、「HTLV-1総合対策」の5つの重点施策(感染予防対策、相談支援、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進)の全てに関わる包括的な提言であり、今後、政府の「HTLV-1総合対策」推進に資するものと考える。
その他行政的観点からの成果
政府の「HTLV-1総合対策」にうたわれた「推進体制」の3つの柱の一つとして規定された、「HTLV-1・ATL・HAMに関連する研究班の総括的な班会議」として、「関連疾患研究領域」全体像を把握し研究班の配置やここの研究班の進捗状況を評価した。年度末の合同成果発表会と班員が各研究班の班会議に参加して直接進捗状況を把握出来たことはユニークな活動である。この様な機能を持つ班の存在は、総合対策推進に大きく貢献した。
その他のインパクト
各年に「HTLV-1研究会」を共催し、国際シンポジウムと「ATLシンポジウム」を主催した。2013年度の「HTLV-1研究会」では「公開シンポジウム「知って下さい HTLV-1を」ー聞いて!活かして!キャリア・患者の本音」を開催し、患者・キャリア当事者の主張を伺い、研究者との交流を図った。これらを通じて、患者・キャリア、各領域の臨床家および研究者との交流が活性化された。更に、各分野の専門家が日本各地の感染の実情や予防体制の実態把握ができ、情報が共有された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
本研究班は医療行政と関連疾患研究の推進に向けた提言を行うことを目的としているため、直接の研究成果として該当するものはない。活動基盤となる関連の論文を挙げた。
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugaya M, Hamada T, Iwatsuki K et al.
Guidelines for the management of cutaneous lymphomas (2011): a consensus statement by the Japanese Skin Cancer Society - Lymphoma Study Group
J Dermatol , 40 (1) , 2-14  (2013)
doi: 10.1111/j.1346-8138.2012.01639.x
原著論文2
Iwatsuki K, Hamada T et al.
Current therapy of choice for cutaneous lymphomas: complementary to the JDA/JSCS guidelines
J Dermatol , 41 (1) , 43-49  (2014)
doi: 10.1111/1346-8138.12346

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2016-06-17

収支報告書

文献番号
201314019Z