文献情報
文献番号
201314006A
報告書区分
総括
研究課題名
切除不能局所進行膵がんに対する標準的化学放射線療法の確立に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古瀬 純司(杏林大学 医学部 腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
- 石井 浩(がん研究会有明病院 消化器内科)
- 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
- 福冨 晃(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
- 宮川 宏之(札幌厚生病院 第2消化器科)
- 行澤 斉悟(栃木県立がんセンター 腫瘍内科)
- 佐田 尚宏(自治医科大学 消化器・一般外科)
- 山口 研成(埼玉県立がんセンター 消化器内科)
- 山口 武人(千葉県がんセンター 消化器内科)
- 池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
- 大川 伸一(神奈川県立がんセンター 消化器内科)
- 田中 克明(横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター)
- 木田 光広(北里大学東病院 消化器内科)
- 水野 伸匡(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科)
- 細川 歩(富山大学医学部附属病院 第3内科)
- 片山 和宏(大阪府立成人病センター 肝胆膵内科)
- 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター 肝胆膵外科)
- 柳本 泰明(関西医科大学枚方病院 肝胆膵外科)
- 井口 東郎(国立病院機構四国がんセンター 臨床研究センター)
- 古川 正幸(国立病院機構九州がんセンター 消化器肝胆膵内科)
- 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科)
- 伊藤 芳紀(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
- 中村 聡明(京都府立医科大学 放射線診断治療学講座)
- 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科学)
- 佐野 圭二(帝京大学医学部 外科学講座)
- 清水 京子(東京女子医科大学 消化器内科)
- 峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科)
- 東 健(神戸大学大学院医学研究科 消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
局所進行膵癌に対しては化学療法あるいは化学放射線療法が行われるが、標準治療は未だ確立していない。本研究では切除不能局所進行膵癌に対する標準治療の確立を目的に、S-1併用放射線療法に先行した導入ゲムシタビン(GEM)化学療法の有無によるランダム化第II相試験を実施した。平成25年度は症例登録の終了を目標とした。
研究方法
本研究では、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)肝胆膵グループにおいて、当初からS-1併用化学放射線療法を行う群と導入GEM化学療法後S-1併用化学放射線療法を行う群のランダム化第II相試験(JCOG1106試験)を実施した。
1)目的と試験デザイン
上記二つの治療法の有効性と安全性を評価し、より有望な化学放射線療法を選択する。主要評価項目は全生存期間(OS)である。
2)対象症例
適格規準は、病理学的に腺癌が確認され、画像診断により遠隔転移がなく、局所進展のため切除不能と診断される膵癌患者であり、原発巣と転移リンパ節が呼吸性移動を含めて10cm×10cm以内の照射野に含められ、十分な主要臓器機能を有する例とした。
3)治療法
A群(S-1放射線療法):放射線療法は1回1.8Gy、28回照射、計50.4Gyを照射する。S-1は80mg/m2を照射日のみ朝夕に分けて内服する。
B群(導入GEM+S-1放射線療法):GEMは標準用法用量により3サイクル実施する。その後、A群と同様の化学放射線療法を開始する。
A,B群共通:S-1併用化学放射線療法終了後、維持療法としてGEM化学療法を行う。
4)予定症例数
予定症例数100例、登録期間2年、追跡期間1年。
5)放射線治療の品質保証活動
本研究では、放射線治療医による放射線治療の品質保証活動(QA/QC)を施行し、治療の質の担保に努める。
(倫理面への配慮)
本研究への参加患者の安全性確保については、適格条件やプロトコール治療の中止変更規準を厳しく設け、試験参加による不利益を最小化する。また、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言などの国際的倫理原則を遵守する。
1)目的と試験デザイン
上記二つの治療法の有効性と安全性を評価し、より有望な化学放射線療法を選択する。主要評価項目は全生存期間(OS)である。
2)対象症例
適格規準は、病理学的に腺癌が確認され、画像診断により遠隔転移がなく、局所進展のため切除不能と診断される膵癌患者であり、原発巣と転移リンパ節が呼吸性移動を含めて10cm×10cm以内の照射野に含められ、十分な主要臓器機能を有する例とした。
3)治療法
A群(S-1放射線療法):放射線療法は1回1.8Gy、28回照射、計50.4Gyを照射する。S-1は80mg/m2を照射日のみ朝夕に分けて内服する。
B群(導入GEM+S-1放射線療法):GEMは標準用法用量により3サイクル実施する。その後、A群と同様の化学放射線療法を開始する。
A,B群共通:S-1併用化学放射線療法終了後、維持療法としてGEM化学療法を行う。
4)予定症例数
予定症例数100例、登録期間2年、追跡期間1年。
5)放射線治療の品質保証活動
本研究では、放射線治療医による放射線治療の品質保証活動(QA/QC)を施行し、治療の質の担保に努める。
(倫理面への配慮)
本研究への参加患者の安全性確保については、適格条件やプロトコール治療の中止変更規準を厳しく設け、試験参加による不利益を最小化する。また、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言などの国際的倫理原則を遵守する。
結果と考察
【研究結果】
1) 臨床試験の進捗状況
平成24年度末まで62例が登録されており、平成25年度は9月までに40例が登録され、計102例にて登録を終了した。内訳は、A群53例、B群49例であり、年齢中央値66歳、男性46例、女性56例であった。
2)安全性評価
重篤な有害事象報告として、プロトコール治療中および最終プロトコール治療日から30日以内の死亡が2例(間質性肺炎1例、原病死1例)、重篤な有害事象報告が3例(たこつぼ心筋症および間質性肺炎1例、AST/ALT上昇1例、肺臓炎1例)報告されている。これまでのところ試験の中断を要する重篤な有害事象は報告されていない。
3)有効性評価
2013年11月8日付の調査では、解析対象102例におけるOS中央値18.4ヵ月、1年生存割合69.4%と、良好な経過が得られている。
4)放射線治療の品質保証活動
これまで52例に対して放射線治療規定の遵守について評価し、50例でプロトコール規定に従って治療が行われていたことを確認した。逸脱の2例は、1例が2門照射(プロトコールは3門以上)、1例が腎臓の線量制限オーバーV18:38%(プロトコールはV18<35%)であったが、臨床上問題ない程度の逸脱であった。
5)病理診断の中央判定
全登録102例中1例が治療前に腹膜播種が確認され、事後不適格例となったことから、101例が病理診断の中央判定の対象となった。現在まで、78例の標本が提出され、2013年10月13日第1回病理中央診断判定会議が行われた。35例が検討され、これまでのところ、各施設の診断と不一致例は認めていない。
【考察】
切除不能局所進行膵癌に対しては、わが国ではGEMが標準的治療法として認識され、またS-1併用放射線療法の第II相試験でもOS中央値16.2ヵ月と良好な治療成績が得られている。
局所進行膵癌では、治療開始後早期に遠隔転移などの増悪を認める例が一定頻度でみられ、GEM化学療法を先行させた後、増悪がない患者に絞って化学放射線療法を行う治療法がリスク/ベネフィットバランスから有望と期待されている。本試験により化学療法を先行させることの有用性が確認されれば、化学放射線療法の適切な選択に基づいた標準治療が確立できるものと期待される。
1) 臨床試験の進捗状況
平成24年度末まで62例が登録されており、平成25年度は9月までに40例が登録され、計102例にて登録を終了した。内訳は、A群53例、B群49例であり、年齢中央値66歳、男性46例、女性56例であった。
2)安全性評価
重篤な有害事象報告として、プロトコール治療中および最終プロトコール治療日から30日以内の死亡が2例(間質性肺炎1例、原病死1例)、重篤な有害事象報告が3例(たこつぼ心筋症および間質性肺炎1例、AST/ALT上昇1例、肺臓炎1例)報告されている。これまでのところ試験の中断を要する重篤な有害事象は報告されていない。
3)有効性評価
2013年11月8日付の調査では、解析対象102例におけるOS中央値18.4ヵ月、1年生存割合69.4%と、良好な経過が得られている。
4)放射線治療の品質保証活動
これまで52例に対して放射線治療規定の遵守について評価し、50例でプロトコール規定に従って治療が行われていたことを確認した。逸脱の2例は、1例が2門照射(プロトコールは3門以上)、1例が腎臓の線量制限オーバーV18:38%(プロトコールはV18<35%)であったが、臨床上問題ない程度の逸脱であった。
5)病理診断の中央判定
全登録102例中1例が治療前に腹膜播種が確認され、事後不適格例となったことから、101例が病理診断の中央判定の対象となった。現在まで、78例の標本が提出され、2013年10月13日第1回病理中央診断判定会議が行われた。35例が検討され、これまでのところ、各施設の診断と不一致例は認めていない。
【考察】
切除不能局所進行膵癌に対しては、わが国ではGEMが標準的治療法として認識され、またS-1併用放射線療法の第II相試験でもOS中央値16.2ヵ月と良好な治療成績が得られている。
局所進行膵癌では、治療開始後早期に遠隔転移などの増悪を認める例が一定頻度でみられ、GEM化学療法を先行させた後、増悪がない患者に絞って化学放射線療法を行う治療法がリスク/ベネフィットバランスから有望と期待されている。本試験により化学療法を先行させることの有用性が確認されれば、化学放射線療法の適切な選択に基づいた標準治療が確立できるものと期待される。
結論
局所進行膵癌に対する標準治療確立に向けて、第一ステップとして最良の化学放射線療法を選択するため、S-1併用化学放射線療法と導入GEM化学療法後S-1併用化学放射線療法とのランダム化第II相試験(JCOG1106試験)を実施した。2013年9月、予定の登録が終了し、現在追跡調査中である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
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