臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験 

文献情報

文献番号
201314005A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験 
課題番号
H23-がん臨床-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 伸(栃木県立がんセンター 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
  • 塩澤 学(神奈川県立がんセンター消化器外科)
  • 絹笠祐介(静岡県立静岡がんセンター 大腸外科)
  • 山口高史((独)京都医療センター 大腸・骨盤外科)
  • 伴登宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 齋藤典男((独)国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科)
  • 小森康司(愛知県がんセンター 中央病院 消化器外科部)
  • 金光幸秀((独)国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科 下部消化管外科)
  • 大田貢由(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 赤在義浩(岡山済生会総合病院 外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の患者を対象として,国際標準手術であるmesorectal excisionの臨床的有用性を,国内標準手術である自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術を対照として比較評価する.
研究方法
 JCOG大腸がん外科研究グループ48施設のうち本研究計画が各施設の倫理審査の承認が得られた34施設による多施設共同試験である.
 術前画像診断および術中開腹所見にて,あきらかな速報転移を認めない臨床病期IIまたはIIIの下部進行癌と診断された症例をmesorectal excisionを行った後,自律神経温存側方郭清を行う群と行わない群に,術中ランダム割付し,それぞれの手術終了時に手術の妥当性評価の目的で,術中写真撮影を行う
 Primary endpointを無再発生存期間,Secondary endpointを生存期間, 局所無再発生存期間,有害事象発生割合,重篤な有害事象発生割合,手術時間,出血量,性機能障害発生割合(性機能調査票使用),排尿機能障害発生割合(術後残尿測定)とし,登録期間7年,追跡期間5年,予定登録数700例.
結果と考察
 性機能障害発生割合は,側方郭清群79.3%(23/29),ME群68.0%(17/25)と有意差はなかった.多変量解析では年齢が有意に関連する因子であった.排尿障害発生割合は,側方郭清群59.0%(207/351),ME群57.7%(202/350)と有意差はなかった.単変量ならびに多変量解析では,腫瘍部位と出血が有意に関連する因子であった.
 側方郭清により障害されると考えられていた性機能,排尿機能は,自律神経温存側方郭清により,側方非郭清と同等の機能温存が可能であることが示された.
結論
 Secondary endpointである性機能、排尿機能において両群に有意差は認められなかった.ME群の非劣性が証明されるためには,Primary endpointである無再発生存期間が劣っていないことが実証されなければならない.

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201314005B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験 
課題番号
H23-がん臨床-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 伸(栃木県立がんセンター 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤典男((独)国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科)
  • 藤井正一(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 大田貢由(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 伴登宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 絹笠祐介(静岡県立静岡がんセンター 大腸外科)
  • 金光幸秀((独)国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科 下部消化管外科)
  • 小森康司(愛知県がんセンター 中央病院 消化器外科部)
  • 山口高史((独)京都医療センター 大腸・骨盤外科)
  • 大植雅之(大阪府立成人病センター 消化器外科)
  • 赤在義浩(岡山済生会総合病院 外科)
  • 塩澤 学(神奈川県立がんセンター消化器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の患者を対象として,国際標準手術であるmesorectal excisionの臨床的有用性を,国内標準手術である自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術を対照として比較評価する.
研究方法
 JCOG大腸がん外科研究グループ48施設のうち本研究計画が各施設の倫理審査の承認が得られた34施設による多施設共同試験である.
 術前画像診断および術中開腹所見にて,あきらかな速報転移を認めない臨床病期IIまたはIIIの下部進行癌と診断された症例をmesorectal excisionを行った後,自律神経温存側方郭清を行う群と行わない群に,術中ランダム割付し,それぞれの手術終了時に手術の妥当性評価の目的で,術中写真撮影を行う.
 Primary endpointを無再発生存期間,Secondary endpointを生存期間, 局所無再発生存期間,有害事象発生割合,重篤な有害事象発生割合,手術時間,出血量,性機能障害発生割合(性機能調査票使用),排尿機能障害発生割合(術後残尿測定)とし,登録期間7年,追跡期間5年,予定登録数700例.
結果と考察
 登録は2003年6月より開始し,登録開始から7年2か月経過した2010年8月2日に701例目の登録があり,登録を終了した.
 側方郭清群に351例,ME群に350例登録された.性別,年齢,臨床病期,病理学的病期,占居部位に両群間に差はなかった.側方転移は,側方郭清群に26例(7.4%)に認められた.手術時間中央値は,側方郭清群360分、ME群236分で有意に側方郭清群が長かった.出血時間中央値は,側方郭清群576ml、ME群336mlで有意に側方郭清群に多かった.術後早期合併症のGrade 3, 4合併症は,側方郭清群76例(21.7%),ME群56例(16.1%)で有意差はないものの側方郭清群に多く認められた.縫合不全は,側方郭清群31例(8.9%),ME群37例(10.6%)で差は認められなかった.
 性機能障害発生割合は,側方郭清群79.3%(23/29),ME群68.0%(17/25)と有意差はなかった.多変量解析では年齢が有意に関連する因子であった.排尿障害発生割合は,側方郭清群59.0%(207/351),ME群57.7%(202/350)と有意差はなかった.単変量ならびに多変量解析では,腫瘍部位と出血が有意に関連する因子であった.
 ME群に比し側方郭清群で手術時間が長く,出血量が多く,grade 3,4合併症頻度も有意差はないものの,側方郭清群に多く認められたが,側方郭清により障害されると考えられていた性機能,排尿機能は,自律神経温存側方郭清により,側方郭清非郭清と同等の機能温存が可能であることが示された.
結論
 Secondary endpointである有害事象発生割合,手術時間,出血量においてME群の優越性がしめされたが,性機能、排尿機能は両群に有意差は認められなかった.ME群の非劣性が証明されるためには,Primary endpointである無再発生存期間が劣っていないことが実証されなければならない.

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201314005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の患者を対象として,国際標準手術であるmesorectal excision(ME群)の臨床的有用性を,国内標準手術である自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術(側方郭清群)を対照として比較する臨床試験.最終解析の結果,mesorectal excisionの自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術に対する非劣性が証明されず,我が国の標準治療は依然として自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術であることが示された.
臨床的観点からの成果
mesorectal excisionの自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術に対する非劣性が証明されず,我が国の標準治療は依然として自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術であることが示されたが,
1.ME群に比し側方郭清群で有意に手術時間が長く,出血量が多かったこと
2.術後早期合併症も有意差はないものの,側方郭清群に多く認められたこと
3.全適格例では非劣性が示されていること
から,この研究のサブセット解析ならびのその他の研究から側方郭清の適応を絞り込む必要がある.
ガイドライン等の開発
本試験の最終解析の結果により,あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の標準手術が,自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術となった.この内容は大腸癌治療ガイドライン2018年版のCQ (Clinical Question)として採用された.
その他行政的観点からの成果
自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術が標準術式となったため、適応の厳格化という課題があるものの,本術式を広く国内外に普及させることで直腸癌治療成績の向上が期待でき,国民医療,福祉に大きな貢献が可能となった.
その他のインパクト
DDW2014(米国消化器病週間)に演者として招待され,本試験の概要ならびに手術時間,出血量,術後合併症,排尿障害,性機能障害につき講演した.ASCO2016の発表は, 複数の雑誌で取り上げられた.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
Lancet Oncology, Annals of Surgery, European Journal of Surgical Oncology (2 papers)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第75回臨床外科学会、第79回臨床外科学会、第118回外科学会
学会発表(国際学会等)
7件
ASCO2011, ECC2013, DDW2014, ASCRS2015, ASCO2016, ASCO2018
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujita S, Akasu T, Mizusawa J et al.
Postoperative morbidity and mortality after mesorectal excision with and without lateral lymph node dissection for clinical stage II or stage III lower rectal cancer (JCOG0212): results from a multicentre, randomised controlled, non-inferiority trial
Lancet Oncology , 13 (6) , 616-621  (2012)
10.1016/S1470- 2045(12)70158-4
原著論文2
Saito S, Fujita S, Mizusawa J,et al.
Male sexual dysfunction after rectal cancer surgery: Results of a randomized trial comparing mesorectal excision with and without lateral lymph node dissection for patients with lower rectal cancer: Japan Clinical Oncology Group Study JCOG0212.
European Journal of Surgical Oncology , 42 (12) , 1851-1858  (2016)
10.1016/j.ejso.2016.07.010.
原著論文3
Fujita S, Mizusawa J, Kanemitsu Y, et al.
Mesorectal Excision With or Without Lateral Lymph Node Dissection for Clinical Stage II/III Lower Rectal Cancer (JCOG0212): A Multicenter, Randomized Controlled, Noninferiority Trial.
Annals of Surgery , 266 (2) , 201-207  (2017)
10.1097/SLA.0000000000002212.
原著論文4
Ito M, Kobayashi A, Fujita S. et al.
Urinary dysfunction after rectal cancer surgery: Results from a randomized trial comparing mesorectal excision with and without lateral lymph node dissection for clinical stage II or III lower rectal cancer
European Journal of Surgical Oncology , 44 (4) , 463-468  (2018)
10.1016/j.ejso.2018.01.015

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201314005Z