医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の開発

文献情報

文献番号
201313050A
報告書区分
総括
研究課題名
医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の開発
課題番号
H24-3次がん-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
別所 和久(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 孝典(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 武井 典子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 石川 正夫(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 中山 健夫(京都大学 医学研究科)
  • 堀 信介(京都大学 医学研究科)
  • 高橋 克(京都大学 医学研究科)
  • 家森 正志(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年度診療報酬改定において、がん患者等の周術期の口腔機能を管理する観点から、「周術期口腔機能管理料」が新設された。一方、申請者らは、某病院の関連施設において歯科医師・歯科衛生士が摂食・嚥下機能訓練を含むオーラルケアを多職種と連携・実践することで、肺炎による入院患者数・在院日数が半減し、医療費を73%削減できることを確認した。そこで、肺炎予防の効果が認められた「オーラルケア・マネジメント法」を基に、それぞれの職種の専門性を考慮した具体的な方法をマニュアル化して、近隣の施設でその普遍性を実証することが急務である。また、有効なオーラルケア法を確立するためには、細菌学的な評価も重要となるが、含嗽ができない場合に行われる従来のスワブによる採取法は、採取者や圧によりバラツキが生じ、客観的な指標とするには課題がある。これを解決するための新たな採取法を含む検査法を開発する必要がある。以上の特色を生かして、本研究の目的は、がん患者等の有効なオーラルケア・マネジメント法を確立し、がん患者等のQOLの飛躍的向上に寄与することである。
研究方法
オーラルケア・マネジメントの評価法の検討
(1)オーラルケア・マネジメントの有効性を確認するための口腔内微生物・機能の客観的検査法の開発
 過去の研究から、申請者らは以下の客観的な検査法を開発して評価を行なっている。
④ 液湿潤度の測定 ②総菌数の測定 ③唾液吐出液から濁度とアンモニアの測定 
④カンジダ菌の測定 ⑤口腔機能の嚥下機能に関する検査 ⑥咀嚼能力に関する検査
(2)近隣のオーラルケアを行っていない施設における口腔および全身の状態の調査・比較
 某病院の関連施設(特別養護老人ホームA、50床)において摂食・嚥下訓練を含むオーラルケアを医科・歯科・介護スタッフと連携して実践し、肺炎による入院患者数・在院日数が半減し、医療費を73%削減できることを確認してきた。さらに、近隣にも特別養護老人ホームB(80床)があり、現在はオーラルケアを積極的に実践していない。そこで、特別養護老人ホームAおよびBの(2)の客観的な検査結果と肺炎による入院患者数・在院日数・医療費を比較検討する。
オーラルケア・マネジメント介入・有効性の確認
(1)未実施の施設にオーラルケア・マネジメントを介入・有効性の再確認
 特別養護老人ホームBに「オーラルケア・マネジメント」を(1)のマニュアルに基づき、介入してその有効性を確認する。
結果と考察
平成24年度作成した周術期口腔機能管理マニュアルに基づいて、京都大学医学部附属病院において、医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケアに取り組んだ。H24年4月から平成25年10月までに、がん等の手術患者に対して、複数の診療科で合計1061例のオーラルケアを実施した。また、化学療法施行患者に対しては、合計559例、放射線療法施行患者に対しては、106例のオーラルケアを実施した。口腔清掃状態・口腔機能の客観的検査法の確立に取り組んだ。口腔清掃状態の指標としての口腔内総菌数は、微生物数測定装置を用いて測定した。オーラルケアを実施した患者のうち61名に対し、初回オーラルケア介入前後で測定したところ、口腔内総菌数は介入前1.84±2.03 X107cfu/mlであったものが、介入後には1.80±1.52 X106cfu/mlとなり、個々の症例間でのばらつきは大きいものの、統計学的には有意に総菌数は減少していた。口腔清掃状態の客観的な指標となりうる可能性を示唆した。また口腔機能の指標としての客観的な評価法のひとつとして口腔乾燥状態は、口腔水分計を用いて測定した。上記のオーラルケアを実施した患者のうち28名対し、初回オーラルケア介入前後で測定したところ、介入前は27.3±1.96であったものが、介入後には27.7±1.89となり、機能的オーラルケアの導入段階であったため、統計学的には有意差は認めなかったが、口腔乾燥状態の改善傾向を示した。続いて、積極的な医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケアを開始したH24年4月前2年間と開始後から現在までの在院日数、術後合併症(CD分類)を比較検討した。口腔清掃との因果関係が指摘されている食道がんに関して検討したところ、症例数が未だ十分でないため統計学的には有意差は認めなかったが、介入前30.5±21.6日であったものが、介入後25.8±15.0日と短縮を認め、またCD分類3以上の合併症も介入前53例中6例(11.3%)であったものが、介入後36例中2例(5.6%)と減少していた。
結論
周術期口腔機能管理マニュアルに基づいた医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の有効性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201313050B
報告書区分
総合
研究課題名
医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の開発
課題番号
H24-3次がん-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
別所 和久(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 孝典(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 武井 典子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 石川 正夫(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 中山 健夫(京都大学 医学研究科)
  • 堀 信介(京都大学 医学研究科)
  • 高橋 克(京都大学 医学研究科)
  • 家森 正志(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年度診療報酬改定において、がん患者等の周術期の口腔機能を管理する観点から、「周術期口腔機能管理料」が新設された。一方、申請者らは、某病院の関連施設において歯科医師・歯科衛生士が摂食・嚥下機能訓練を含むオーラルケアを多職種と連携・実践することで、肺炎による入院患者数・在院日数が半減し、医療費を73%削減できることを確認した。そこで、肺炎予防の効果が認められた「オーラルケア・マネジメント法」を基に、それぞれの職種の専門性を考慮した具体的な方法をマニュアル化して、その普遍性を実証することが急務である。また、有効なオーラルケア法を確立するためには、新たな検査法を開発する必要がある。以上の特色を生かして、本研究の目的は、がん患者等の有効なオーラルケア・マネジメント法を確立し、がん患者等のQOLの飛躍的向上に寄与することである。
研究方法
有効なオーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発と評価法の検討
(1)摂食・嚥下訓練を含むオーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発
①医師・歯科医師・看護師・歯科衛生士・栄養士・介護スタッフ等に分け、その役割と具体的な方法をマニュアル化する。
②口腔清掃法は、「高齢者オーラケア分類表」の介護度と口腔状態から9つのカテゴリーに分類してオーラルケア用具と具体的な方法をマニュアル化する。
 ③機能的なオーラルケア法は、口腔機能を口のまわり(口唇・頬)、入口(咀嚼機能)、奥(嚥下機能)、口腔全体の環境(唾液湿潤度等)の4つのカテゴリーに分類して客観的な検査を実施して、摂食・嚥下機能訓練も含めて口腔機能向上方法をマニュアル化する。
(2)オーラルケア・マネジメントの有効性を確認するための口腔内微生物・機能の客観的検査法の開発
オーラルケア・マネジメント介入・有効性の確認
(1)オーラルケア・マネジメントを介入・有効性の再確認
 「オーラルケア・マネジメント」を(1)のマニュアルに基づき、介入してその有効性を確認する。
結果と考察
平成24年度は、当初の研究計画に沿い、有効なオーラルケア・マネジメントの開発とその応用による周術期口腔機能管理マニュアルの作成に取り組んだ。マニュアル作成に際しては、京大病院歯科口腔外科スタッフに加え、化学療法部、放射線治療科、呼吸器内科、薬剤部、看護部、医療事務職員など、さまざまな職種の協力を得、特に全身麻酔下での手術患者、化学療法・放射線治療・緩和治療を受ける患者を対象の中心とした。このマニュアルに関しては、平成25年2月中旬には出版した。マニュアルには、各がん治療種別に項目を設け、評価後に行う口腔疾患の治療、器質的オーラルケア(口腔清掃、口腔疾患の症状緩和・予防など)、機能的オーラルケア(摂食機能訓練、構音機能訓練、開口訓練など)に関し、それらの必要性、手法、効果の評価法などに至るまで盛り込んでいる。
平成24年度作成した周術期口腔機能管理マニュアルに基づいて、京都大学医学部附属病院において、医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケアに取り組んだ。H24年4月から平成25年10月までに、がん等の手術患者に対して、複数の診療科で合計1061例のオーラルケアを実施した。また、化学療法施行患者に対しては、合計559例、放射線療法施行患者に対しては、106例のオーラルケアを実施した。口腔清掃状態・口腔機能の客観的検査法の確立に取り組んだ。オーラルケアを実施した患者のうち61名に対し、初回オーラルケア介入前後で測定したところ、口腔内総菌数は介入前1.84±2.03 X107cfu/mlであったものが、介入後には1.80±1.52 X106cfu/mlとなり、統計学的には有意に総菌数は減少していた。口腔清掃状態の客観的な指標となりうる可能性を示唆した。続いて、積極的な医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケアを開始したH24年4月前2年間と開始後から現在までの在院日数、術後合併症(CD分類)を比較検討した。食道がんに関して検討したところ、介入前30.5±21.6日であったものが、介入後25.8±15.0日と短縮を認め、またCD分類3以上の合併症も介入前53例中6例(11.3%)であったものが、介入後36例中2例(5.6%)と減少していた。
結論
医科・歯科・介護スタッフが連携してオーラルケアを行ない全身への影響を評価し、病院や施設においてオーラルケアを毎日提供するためのマネジメント法を確立することができた。そのマニュアルに基づいた医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の有効性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本年度は、対象患者を悪性腫瘍患者と同様に分子標的薬にて加療される関節リウマチ患者に拡大し、関節リウマチの重症度と口腔衛生状態の関係について検討した。関節リウマチはDAS(Disease Activity Score)、口腔衛生状態はPCR(Plaque Control Record)を調査した。6か月後の評価において、口腔衛生管理開始前と比較し、DASは平均で-0.44±0.85(n=23)、PCRは-6.76±19.5%(n=19)、であり、それぞれ平均値では改善を認めた。
臨床的観点からの成果
平成24-26年の約2年間に、周術期口腔機能管理としてオーラルケアの依頼のあった件数は、合計3058例であった。依頼数は、消化管外科の依頼数が最も多かった。今回、平成29年の約1年間の当科に依頼のあった周術期口腔機能管理を含めたオーラルケアの総数を、電子カルテより依頼元診療科の総数をもとに検討した。その件数は、合計2613例であった。腎臓内科や循環器内科等周術期口腔機能管理以外で依頼のあった診療科も複数存在し、オーラルケアが必要とされる症例は多数存在することが示唆された。
ガイドライン等の開発
有効なオーラルケア・マネジメントの開発とその応用による周術期口腔機能管理マニュアルの作成に取り組んだ。マニュアル作成に際しては、京大病院歯科口腔外科スタッフに加え、化学療法部、放射線治療科、呼吸器内科、薬剤部、看護部、医療事務職員など、さまざまな職種の協力を得、特に全身麻酔下での手術患者、化学療法・放射線治療・緩和治療を受ける患者を対象の中心とした。このマニュアルに関しては、平成25年2月中旬に出版した。
その他行政的観点からの成果
周術期口腔機能管理マニュアルには、各がん治療種別に項目を設け、評価後に行う口腔疾患の治療、器質的オーラルケア(口腔清掃、口腔疾患の症状緩和・予防など)、機能的オーラルケア(摂食機能訓練、構音機能訓練、開口訓練など)に関し、それらの必要性、手法、効果の評価法などに至るまで盛り込んだ。口腔内のことに今まで注目していなかった歯科系以外の医療従事者が、初めて口腔機能管理に取り組む際にでも活用できるよう、視覚に訴える平易なマニュアルとした。
その他のインパクト
口腔清掃状態・口腔機能の客観的検査法の確立に取り組んだ。初回オーラルケア介入前後で測定したところ、口腔内総菌数は介入前1.84±2.03 X107cfu/mlであったものが、介入後には1.80±1.52 X106cfu/mlとなり、統計学的には有意に総菌数は減少していた。口腔清掃状態の客観的な指標となりうる可能性を示唆した。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
1. 別所和久
これからはじめる周術期口腔機能管理マニュアル
これからはじめる周術期口腔機能管理マニュアル , 1-136  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2018-06-04

収支報告書

文献番号
201313050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,200,000円
(2)補助金確定額
9,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,026,179円
人件費・謝金 4,651,560円
旅費 322,460円
その他 76,806円
間接経費 2,123,000円
合計 9,200,005円

備考

備考
交付金に利息が5円生じたため。

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-