文献情報
文献番号
201313033A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国でのがん予防、がん検診、がん治療向上のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-3次がん-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 英夫(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
- 井上 真奈美(東京大学大学院 医学系研究科 健康と人間の安全保障(AXA) 寄附講座)
- 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
- 松田 智大(国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部)
- 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部)
- 椙村 春彦 (浜松医科大学 医学部 腫瘍病理学講座 )
- 河原 ノリエ(東京大学先端科学技術研究センター 「総合癌研究国際戦略推進」寄付研究部門 )
- 戸塚 ゆ加里 (国立がん研究センター研究所 発がんシステム研究分野)
- 片野田 耕太(国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部 )
- 林 櫻松(リン インソン)(愛知医科大学 医学部 公衆衛生学)
- 伊藤 ゆり(大阪府立成人病センター がん予防情報センター がん疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん患者数が急増する東アジア諸国でのがん予防、検診、治療の向上を目指し、これに資するエビデンスを、主として①地域がん登録資料等を用いた記述疫学データ、②コホートの統合解析データ、③日中間の分子病理学的解析、④政府関係資料等、から創出することを目的とした。
研究方法
日本の21県の2003年~07年のがん罹患者120万人のデータと、日本の6県の2000年~02年診断のがん患者の生存率データを入手し、超高齢者がん罹患率および肺腺がんと子宮頸がん生存率を計測し、これを共同研究機関である国立台湾大学が算出した台湾全土のデータと比較検討した。また、1990年~2005年の大阪府立がん登録資料と大阪の人口動態死亡統計から、前立腺がんの罹患、死亡率のトレンドを詳細に分析した。アジアの既存コホートの統合解析(約110万人)は、今年度は肉類の摂取量とBMIに着目し、解析した。また、中国の下部食道・噴門部胃がん多発地域から、患者と健常人の生体試料を国内に移送し、アダクトーム解析を、引き続き行った。昨年度実施した日中韓三国の政府関係資料等に基く各国の喫煙対策の現状比較に続き、今年度は台湾について同様の方法で調査した。
結果と考察
日本と台湾のがん登録を用いた比較疫学研究を実施し、日本で低位にあった子宮頚がん5年相対生存率は、臨床進行度が進んだステージの者で、その差がより大きく開くことを示した。日本の地域がん登録資料を用いた成績として、①ゲフィチニブが導入される前後の2000‐02年と2003‐05年の肺腺がん生存率を比較すると、女性において生存率の改善が見られ、②年齢別全がん罹患率のピークは男90‐94歳、女95‐99歳であり、③1990年以後の前立腺がん罹患率は急増したものの、死亡率の有意な減少傾向はみられなかったことを示した。アジアでのコホート研究の統合解析をさらに進め、本年度は肉摂取およびBMIとがんを含む主要死因との関連について、安全閾値を示した。中国で多発する食道がん・胃がんの分子病理学的および疫学的研究を、中国から日本に生体試料を持ち込む形で進めた。台湾での喫煙対策状況を文献等により把握したところ、台湾は日本を含む東アジアで最も喫煙対策が進んでいた。また、中国黒龍江省ハルビン市郊外でのがん予防活動を立ち上げた。
結論
がん予防については、特に肉摂取とBMIの影響について、アジア人に特化した安全閾値を得ることができた。また、喫煙対策に資する情報を得た。検診については、PSAによる問題点について検討し、治療については、女性肺腺がんと子宮頸癌について、特徴的なモニタリング所見を得た。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
-