消化器内視鏡検査等による新しいがん検診の開発と有効性評価に関する研究 

文献情報

文献番号
201313032A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器内視鏡検査等による新しいがん検診の開発と有効性評価に関する研究 
課題番号
H23-3次がん-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)
  • 西野 克寛(仙北市病院事業市立角館総合病院 病院長)
  • 石田 文生(昭和大学 医学部)
  • 山野 泰穂(秋田赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の便潜血検査(FOBT)による大腸がん検診はその有効性が確立している。しかしわが国のがん死亡の12%以上を占める大腸がん死亡率の著明な減少のためには現在のFOBT単独による検診の次世代のより有効性の大きい検診法を検討することが重要課題でありFOBTに大腸内視鏡検査(TCS)を加えた検診法が候補として挙げられる。FOBTに1回のTCSを加えた検診の死亡率減少効果を明らかにするために、FOBTによる検診群を対照としたランダム化比較試験(RCT)を行う。またTCS検診を行う場合、実態が不明な偶発症等の不利益をモニターし将来の対策型検診としての検討のためにTCS検診のリスクについても調査する。
研究方法
本研究ではFOBTにTCSを組み入れたプログラムの有効性を検証する為に大腸がん死亡率の減少効果のランダム化比較試験(RCT)を実施する。大仙市及び仙北市住民で研究参加に応諾した40~74歳の男女約10,000人を対象にFOBTにTCSを併用する介入群とTCSを併用しない対照群を無作為割付により設定する。プライマリ・エンドポイントを大腸がん死亡率、セカンダリ・エンドポイントを大腸がんに対する感度・特異度、累積進行がん罹患率、累積浸潤がん罹患率とし、介入群、対照群で比較する。研究対象者のリクルート5年目の本年度(平成25年度)は対象地域を従前より実施している仙北市全地域及び前年度拡大した大仙市全地域として実施する。昨年度までで把握している大仙市全域で実施した際の問題点等を検討・整理し体制準備を行った。
結果と考察
市の住民基本健診受診者を中心に年間を通じてリクルートを行った。参加者は平成25年度末時点で6,586名となった。データモニタリングの結果2群へのランダム割付は順調に行われていた。従前の仙北市民へのフォーカスインタビューに基づいた受診行動調査による知見を元に本年度は、大腸がん撲滅キャンペーンの実施(仙北市)市長・研究班分担研究者(斎藤)・地元医師会会長対談を題材にした資材作成と全戸配布(大仙市)研究促進ボランティア活動(仙北市)職域及び市職員への直接のアプローチ(仙北市)資材送付・電話によるコールリコール(両市)等々の参加促進活動等を行った。リクルート5年目となる平成25年度は、仙北市全域(40-74歳以上人口約15,000人)大仙市全域(同約43,000人)にて参加者のリクルートFOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。また、検診TCSについては全例市立角館総合病院にて実施した。精検については大仙市医師会の支援・協力の下、15施設の精検協力施設にて希望者の精検を受け付ける体制とした。研究班『運営会議』にてリクルート状況の抜本的対策の為の各種検討を行った結果、未だ参加率の低い大仙市民の最大の参加阻害要因である検診TCS実施機関の地理的要因解消の為、大仙市北部に隣接し、分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院での検診TCS実施を検討する事が決定した。実施可能性検討の為のワーキンググループを2度行い(11月29日12月24日)、設備、キャパシティ、受診者の事務的処理、データ処理、医師・看護師・事務のスタッフ体制、費用、倫理審査、周知方法、市と病院の契約等々について詳細を検討し公的研究費の継続があれば実施可能である事を確認した。近年sigmoidoscopyの有効性に関する複数のランダム化比較試験(RCT)によりその死亡率減少及び罹患率減少のエビデンスが明確に提示されている。しかし、これらの試験では便潜血検査(FOBT)への内視鏡の上乗せ効果の有無/程度は不明である。またsigmoidoscopyは深部大腸がんは標的にできないため、最終的には全大腸内視鏡検査(TCS)による検診が引き続き、目標とすべき検診法であり、その評価は最重要課題である。この様な状況で本研究の重要性は高く研究が順調に遂行されることが期待されている。
結論
リクルート5年目となる平成25年度は、仙北市大仙市にて参加者のリクルートFOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。また検診TCSについては全例市立角館総合病院にて実施した。平成25年度末時点の累計参加者は6,586名となり、参加者全員がFOBT検診を受診し介入群においてはモニタリング時点で93.4%が検診TCSを受診した。TCSの盲腸挿入率は99.7%と非常に高く苦痛の頻度は低くさらに偶発症も重篤なものはなかった。研究の組織運営を含め研究の進捗に支障は認めなかった。リクルート状況の抜本的対策の為、大仙市北部に隣接し分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院での検診TCS実施を検討し公的研究費の継続を前提として実施可能と確認した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201313032B
報告書区分
総合
研究課題名
消化器内視鏡検査等による新しいがん検診の開発と有効性評価に関する研究 
課題番号
H23-3次がん-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)
  • 西野 克寛(仙北市病院事業市立角館総合病院 病院長)
  • 石田 文生(昭和大学 医学部)
  • 山野 泰穂(秋田赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の便潜血検査(FOBT)による大腸がん検診はその有効性が確立している。しかしわが国のがん死亡の12%以上を占める大腸がん死亡率の著明な減少のためには現在のFOBT単独による検診の次世代のより有効性の大きい検診法を検討することが重要課題でありFOBTに大腸内視鏡検査(TCS)を加えた検診法が候補として挙げられる。FOBTに1回のTCSを加えた検診の死亡率減少効果を明らかにするために、FOBTによる検診群を対照としたランダム化比較試験(RCT)を行う。またTCS検診を行う場合、実態が不明な偶発症等の不利益をモニターし将来の対策型検診としての検討のためにTCS検診のリスクについても調査する。
研究方法
本研究ではFOBTにTCSを組み入れたプログラムの有効性を検証する為に大腸がん死亡率の減少効果のランダム化比較試験(RCT)を実施する。大仙市及び仙北市住民で研究参加に応諾した40~74歳の男女約10,000人を対象に、FOBTにTCSを併用する介入群とTCSを併用しない対照群を無作為割付により設定する。プライマリ・エンドポイントを大腸がん死亡率セセカンダリ・エンドポイントを大腸がんに対する感度特異度累積進行がん罹患率、累積浸潤がん罹患率とし介入群、対照群で比較する。対象者のリクルート3~5年目では仙北市に加え平成23年度から大仙市にも体制構築し拡大した。次年度では前年度までで把握している問題点等を検討整理しリクルートをした。
結果と考察
予定に従いリクルートを行った。参加者は平成25年度末時点で6,586名となった。データモニタリングの結果、2群へのランダム割付は順調に行われていた。従前の仙北市民へのフォーカスインタビューに基づいた受診行動調査による知見を元に大腸がん撲滅キャンペーンの実施(仙北市)市長・研究班分担研究者(斎藤)・地元医師会会長対談を題材にした資材作成と全戸配布(大仙市)研究促進ボランティア活動(仙北市)職域及び市職員への直接アプローチ(仙北市)資材送付・電話によるコールリコール(両市)等々の参加促進活動を行った。リクルート3年目となる平成23年度は従前の仙北市全3地域(40-74歳以上人口約15,000人)に加え、試験的に大仙市の一部(2地域)(同約9,400人)において参加者リクルートFOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加対策等を実施した。リクルート4年目となる平成24年度は大仙市全8地域(同約43,000人)へ募集を拡大、参加者リクルート、検診等を実施した。リクルート5年目となる平成25年度は引き続き仙北市、大仙市全域にて参加者のリクルート、検診等を実施した。尚、上記期間において検診TCSは全例市立角館総合病院にて実施した。また平成25年度は研究班『運営会議』の決定に従い分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院での検診TCS実施可能性を検討する為のワーキンググループを行った。設備キャパソティー、受診者の事務的処理データ処理医師・看護師・事務のスタッフ体制費用倫理審査周知方法、市と病院の契約、等検討した結果公的研究費の継続があれば実施可能である事を確認した。近年sigmoidoscopyの有効性に関する複数のランダム化比較試験(RCT)によりその死亡率減少及び罹患率減少のエビデンスが明確に提示されている。しかしこれらの試験では便潜血検査(FOBT)への内視鏡の上乗せ効果の有無/程度は不明である。またsigmoidoscopyは深部大腸がんを標的にできないため最終的には全大腸内視鏡検査(TCS)による検診が引き続き目標とすべき検診法でありその評価は最重要課題である。この様な状況で本研究の重要性は高く研究が順調に遂行されることが期待されている。
結論
リクルート3~5年目となる平成23,24,25年度は仙北市全3地域(40-74歳以上人口約15,000人)に加え体制整備の上で大仙市全8地域(同約43,000人)にリクルート対象地域を順次拡大し参加者のリクルート、FOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。また検診TCSについては全例市立角館総合病院で実施した。平成25年度末時点の累計参加者は6,586名となり参加者全員がFOBT検診を受診し介入群においてはモニタリング時点で93.4%が検診TCSを受診した。TCSの盲腸挿入率は99.7%と非常に高く苦痛の頻度は低く偶発症も重篤なものはなく研究の組織運営を含め研究の進捗に支障は認めなかった。リクルート状況の抜本的対策の為大仙市北部に隣接し分担研究者山野の所属する秋田赤十字病院での検診TCS実施を検討し公的研究費の継続を前提として実施可能である事を確認した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)全大腸内視鏡検査(TCS)による大腸がん検診の有効性評価RCTを目標参加者数1万名と設定して実施し、9,747名の参加を得た。検診・精検・治療のデータを回収し、死亡・罹患等各エンドポイントデータ取得の為の追跡調査を実施した。
(2)死亡率を第一EPとした我が国初の、また同意取得後に割付を行う世界初の大腸がん検診RCTである。近年、TCS検診の有効性に関するコホート研究が報告されたが、RCTによる根拠が必要であり、本研究の国際的重要性はますます高くなっている。
臨床的観点からの成果
(1)一般住民対象の検診TCSを3,946件実施し、検診時の偶発症、苦痛等のモニタリングを行い、安全性、許容性を確認した。また、精度管理上、TCSの質が高いことが示され、対策型検診としてのTCS 検診の実行可能性が示唆された。
(2) 検診TCSの質が臨床上の診断検査としてのTCSと同等であり、また、海外に比べて、偶発症の発生率は著明に低く、盲腸挿入率が高く、より高い質のTCS検診の実行可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
本研究班内でガイドライン等の作成は行わない。しかし、本研究でこれまで得られた検診TCSの知見は臨床上の診断検査としてのTCSを含め、その精度管理のガイドライン作成の重要な知見となる。将来的には第一エンドポイントの死亡率減少はもちろん、リクルート完了時点で解析可能な第二エンドポイントの感度など、がん検診有効性評価のガイドラインの重要な知見となる。
その他行政的観点からの成果
がん対策推進基本計画では「がんの年齢調整死亡率を減少させることを目標とする」、「検診有効性等の評価のための大規模疫学研究を戦略的に推進する」とされている。現状、厚労行政に資する直接的な成果はまだないが、男女がん死因のそれぞれ12,15 %を占める大腸がんの検診のエビデンスが本研究により得られ、TCS併用検診が対策型検診として導入できれば、将来の大腸がん、ひいてはがん死亡率および罹患率低減に大きく貢献しうる。
その他のインパクト
研究への参加促進のために、研究地域において大腸がんや研究への意識調査を行い、重要な知見が得られ、大腸がん検診に関する自治体用の受診勧奨リーフレット等を通じて全国的に活用されている。研究を端緒に研究地域自治体が『大腸がん撲滅キャンペーン』の企画、広報誌による周知、大規模イベントの開催を行い、それらを通じ、がん撲滅推進ボランティア組織による地域に密着した草の根活動に発展した。市民対象の研修会・講演会を計40回以上実施しこれらを支援した。キャンペーンの認知度は77%に達した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2018-06-20

収支報告書

文献番号
201313032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,400,000円
(2)補助金確定額
21,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 132,704円
人件費・謝金 0円
旅費 1,227,330円
その他 15,101,966円
間接経費 4,938,000円
合計 21,400,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-