文献情報
文献番号
201312020A
報告書区分
総括
研究課題名
AADC欠損症に対する遺伝子治療の臨床研究
課題番号
H25-次世代-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 村松 慎一(自治医科大学 医学部)
- 小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
- 中嶋 剛(自治医科大学 医学部)
- 渡辺 英寿(自治医科大学 医学部)
- 竹内 護(自治医科大学 医学部)
- 加藤 光広(山形大学医学部付属病院)
- 小坂 仁(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
神経移行性の高いアデノ随伴ウイルス(AAV)2型ベクターを用いた小児神経系難治性疾患の遺伝子治療法確立を目的に、AADC欠損症の遺伝子治療臨床研究と、他の神経難病の遺伝子治療法開発研究を実施する。
(AADC欠損症対する遺伝子治療臨床研究)芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素欠損症:AADC欠損症は、AADC遺伝子変異からdopamine、serotonin合成が低下し発症する。乳児期から重度の運動障害、oculogyric crisis、ジストニア発作等を呈し、生涯臥床状態である。台湾で遺伝子治療が8例に実施された(Hwu WL 2012)。AAV-2型ベクターにAADC遺伝子を搭載し、患者の両側被殻に注入。臥床状態から立位可能になった患児もある。ベクターは、研究分担者らがParkinson病患者の遺伝子治療目的に開発したベクターで、日本でもParkinson病6例に臨床研究が行われ、運動症状を改善した。
(他の神経難病の遺伝子治療法開発)GLUT1欠損症は、神経系のグルコーストランスポーターGLUT1(SLC2A1)遺伝子欠失により、難治性てんかん、発達遅滞と小脳失調等を来す。ケトン食が一部有効だが、長期間の有効な治療法ではなく、根本的な治療法開発が待たれている。
これらの遺伝子治療研究で、症状改善の期待と共に、遺伝子治療が確立し、多様な疾患で開発指標となることが期待される。
(AADC欠損症対する遺伝子治療臨床研究)芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素欠損症:AADC欠損症は、AADC遺伝子変異からdopamine、serotonin合成が低下し発症する。乳児期から重度の運動障害、oculogyric crisis、ジストニア発作等を呈し、生涯臥床状態である。台湾で遺伝子治療が8例に実施された(Hwu WL 2012)。AAV-2型ベクターにAADC遺伝子を搭載し、患者の両側被殻に注入。臥床状態から立位可能になった患児もある。ベクターは、研究分担者らがParkinson病患者の遺伝子治療目的に開発したベクターで、日本でもParkinson病6例に臨床研究が行われ、運動症状を改善した。
(他の神経難病の遺伝子治療法開発)GLUT1欠損症は、神経系のグルコーストランスポーターGLUT1(SLC2A1)遺伝子欠失により、難治性てんかん、発達遅滞と小脳失調等を来す。ケトン食が一部有効だが、長期間の有効な治療法ではなく、根本的な治療法開発が待たれている。
これらの遺伝子治療研究で、症状改善の期待と共に、遺伝子治療が確立し、多様な疾患で開発指標となることが期待される。
研究方法
(対象)日本人AADC欠損症患者4名。新規患者があれば追加する。
(方法)遺伝子治療実施体制と評価法を確定し、実施計画書を作成。AADC遺伝子治療ベクターとして、2型AAV由来ベクターにAADC cDNA(1,443bp)を組み込んだAAV-hAADC-2を、タカラバイオ社と共同でGMPレベルで作製。マウス脳に注入し、Dopamine産生、遺伝子発現を確認する。GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法開発では、GLUT1遺伝子(SLC2A1)発現ベクターを細胞内に導入し、培養細胞レベルで治療効果判定する発現解析系を確立する。GLUT1 cDNAをAAVベクターに組み込む。培養細胞での評価と、GLUT1欠損マウスを用いて治療効果を解析する。
(倫理面への配慮)自治医科大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会、自治医科大学遺伝子組換え実験安全委員会の承認を得て、厚生科学審議会科学技術部会に実施申請し、認可を得る。保護者に十分に効果とリスクを説明し、文書でのインフォームドコンセントを得て実施する。遺伝子治療臨床研究に関する指針を遵守して実施する。
(方法)遺伝子治療実施体制と評価法を確定し、実施計画書を作成。AADC遺伝子治療ベクターとして、2型AAV由来ベクターにAADC cDNA(1,443bp)を組み込んだAAV-hAADC-2を、タカラバイオ社と共同でGMPレベルで作製。マウス脳に注入し、Dopamine産生、遺伝子発現を確認する。GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法開発では、GLUT1遺伝子(SLC2A1)発現ベクターを細胞内に導入し、培養細胞レベルで治療効果判定する発現解析系を確立する。GLUT1 cDNAをAAVベクターに組み込む。培養細胞での評価と、GLUT1欠損マウスを用いて治療効果を解析する。
(倫理面への配慮)自治医科大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会、自治医科大学遺伝子組換え実験安全委員会の承認を得て、厚生科学審議会科学技術部会に実施申請し、認可を得る。保護者に十分に効果とリスクを説明し、文書でのインフォームドコンセントを得て実施する。遺伝子治療臨床研究に関する指針を遵守して実施する。
結果と考察
(遺伝子治療実施体制の確立)治療後の管理、排泄物管理、ベクター排出のPCR確認、手術、ベクター管理体制などの体制を確認した。MRIとFMT-PET解析に基づきベクター注入部位決定、定位脳手術で、専用カニューレを使用し両側線状体(被殻)内に注入する。被殻への注入機器やカニューレも開発し、安全かつ効果的に実施出来る様に準備した。治療効果および有害事象の評価法を確定した。「AADC欠損症に対する遺伝子治療の臨床研究」実施計画書を作製し、自治医科大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会に申請し、審議の上、2014年2月14日付で遺伝子治療研究実施の承認を得た。
(AADC遺伝子導入したベクター作製)タカラバイオ社と共同でGMPレベルのAAV-hAADC-2が作製された。各種検定の結果、臨床使用可能なレベルであった。マウス脳にベクター注入し遺伝子発現とDopamine増加を検出し、蛋白が機能している事が確認された。
遺伝子治療実施体制も確立し、学内の倫理委員会の承認も得た。厚生科学審議会へ申請し承認が得られれば、治療開始可能である。
(GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法開発)GLUT1欠損症遺伝子治療法開発では、SLC2A1 cDNAを2型AAVベクターに組み込んだ (pAAV-SLC2A1-2)を作製中である。SLC2A1発現ベクターを培養細胞内に導入し、発現系を作製した。導入したGLUT1の細胞膜上の発現、糖取り込み能増加を確認した。よって、培養細胞での遺伝子治療効果判定系が確立した。GLUT1欠損マウスの入手準備中である。
これらの遺伝子治療法開発が順調に進行した場合、ベクター改良研究、他疾患の遺伝子治療法開発も進める。
(AADC遺伝子導入したベクター作製)タカラバイオ社と共同でGMPレベルのAAV-hAADC-2が作製された。各種検定の結果、臨床使用可能なレベルであった。マウス脳にベクター注入し遺伝子発現とDopamine増加を検出し、蛋白が機能している事が確認された。
遺伝子治療実施体制も確立し、学内の倫理委員会の承認も得た。厚生科学審議会へ申請し承認が得られれば、治療開始可能である。
(GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法開発)GLUT1欠損症遺伝子治療法開発では、SLC2A1 cDNAを2型AAVベクターに組み込んだ (pAAV-SLC2A1-2)を作製中である。SLC2A1発現ベクターを培養細胞内に導入し、発現系を作製した。導入したGLUT1の細胞膜上の発現、糖取り込み能増加を確認した。よって、培養細胞での遺伝子治療効果判定系が確立した。GLUT1欠損マウスの入手準備中である。
これらの遺伝子治療法開発が順調に進行した場合、ベクター改良研究、他疾患の遺伝子治療法開発も進める。
結論
日本人AADC欠損症患者への遺伝子治療臨床研究治療実施体制が出来た。タカラバイオ社にベクター作製委託し、GMPレベルのベクターが完成し、マウスでの治療効果が確認された。自治医科大学附属病院遺伝子治療臨床研究審査委員会の審議を受け、承認を得た。厚生科学審議会科学技術部会の承認を得て、患者4人に順次治療実施する。他の疾患での治療法開発研究として、GLUT1欠損症に対する遺伝子治療法を開発中である。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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