BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究

文献情報

文献番号
201311008A
報告書区分
総括
研究課題名
BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究
課題番号
H25-認知症-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
数井 裕光(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 稔久(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 池田 学(国立大学法人熊本大学大学院 神経精神医学科)
  • 森 悦朗(国立大学法人東北大学大学院 行動神経学)
  • 谷向 知(国立大学法人愛媛大学大学院 老年精神医学)
  • 横山 和正(社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団 兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター 神経内科学)
  • 足立 浩祥(大阪大学医学部附属病院・睡眠医療センター)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年医学)
  • 山本 泰司(国立大学法人神戸大学大学院 老年精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
8,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者に認められる行動心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)は認知症とその家族の生活の質を脅かす重要な症状である。一度出現したBPSDを在宅療養生活の中で対処することは困難なことが多い。またこれまでのBPSD治療法、対応法は個々人の経験に基づいた非論理的な考えで構築されていた。そこで本研究の第一の目的は、BPSDの予防法の開発とした。第二の目的はBPSDの発現機序を解明し、その知見に基づいたBPSD治療法を開発することとした。
研究方法
第一の目的に対しては班員および協力者が所属する大阪、熊本、愛媛、東北の4大学と西播磨総合リハビリテーションセンター、財団新居浜病院の認知症専門医療機関、計6施設に、最近の5年間に新患患者として受診し、BPSDをNeuropsychiatric Inventory(NPI)で評価された患者のNPI、診断、Clinical Dementia Rating (CDR)データなどを収集した。そしてこのデータを用いて、①BPSD出現予測マップの作成、②軽度認知障害(MCI)患者のBPSDの検討、③睡眠障害と他のBPSDとの関係の検討を行った。第二の目的に対しては、BPSDは脳障害による欠損症状と残存機能による周囲刺激に対する反応との相互作用によって生じるという考えに基づき、④アルツハイマー病(AD)の妄想、⑤血管性認知症(VaD)の無為、うつ、⑥レビ-小体病(DLB)の幻視、誤認、⑦前頭側頭葉変性症(FTLD)の脱抑制、食行動異常に対して、神経基盤、関連する認知障害や他のBPSD、生活環境などから発現機序を検討し、対応法、治療法を開発した。さらに⑧未診断で介護施設に入所した認知症患者を問診と観察から鑑別診断できるツールを現在報告されているツールの中から選択した。

結果と考察
第一の目的に関しては、6つの認知症専門機関から2447例分のBPSDデータが収集できた。内訳はAD 1301例、DLB 269例、VaD 191例、FTLD 124例で、①疾患別に、どのようなBPSDがどのくらいの頻度、重症度、介護負担度で出現するかを認知症の重症度別に整理し、さらに有効なケアサービスを明示したBPSD出現予測マップを作成した。ケアサービスの明示とは、例えば妄想を軽減させるには、デイケア、短期施設入所が有効であるというようなものである。このBPSD出現予測マップはADに関しては症例数も多く、非常に信頼性が高いと考えられるが、その他の疾患に関しては元々の頻度が少ないこともありやや症例数が少なかった。さらにこの2447例のデータを用いて以下のことを明らかにした。②MCIデータは、後に認知症に進展したか否かの情報も同時に収集したが、MCI 292例中、半数の症例に無為を認め、かつ無為が顕著であった症例は後に認知症に進展する確率が高かった。③DLBではCDR0.5の時期から睡眠障害を約半数の患者に認めた。またMCI患者でも睡眠障害は高頻度であった。さらに全ての疾患で睡眠障害は他の多くのBPSDと関連していた。これらの結果より、MCIの段階からのBPSD予防と睡眠障害治療によるBPSD治療法の開発が必要と考えられた。
 第二の目的に関しては、以下の4つの治療法を開発した。④ADの嫉妬妄想には配偶者と患者の運動機能や生活範囲などの格差とドパミンが関連しているので薬剤調整と対応法指導、⑤VaDの無為、うつには前頭葉障害が関連するため定期的な外来作業療法、⑥DLBの幻視、誤認は視覚認知障害に伴う解放現象が原因であるため薬剤調整と対応法指導、⑦FTLDの脱抑制・食行動異常には、前頭葉障害による被影響性の亢進が誘因であるためルーチン化療法である。また⑧に対しては、現在、考案されているツールを総説した結果、物忘れスピード問診票を選択した。
結論
BPSD出現予測マップを作成した。またBPSDの予防法開発につながる知見を得、さらに機序に基づいたBPSD対応法を構築できた。次年度にはBPSD出現予測マップ、機序に基づいたBPSD対応法、物忘れスピード問診票の有用性を検証し、ブラッシュアップする予定である。またBPSD予防法の確立を行う。

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201311008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,900,000円
(2)補助金確定額
10,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,873,884円
人件費・謝金 2,645,038円
旅費 1,877,705円
その他 988,436円
間接経費 2,515,000円
合計 10,900,063円

備考

備考
利息 63円が発生したため

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-