要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善ならびに食生活の質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201310016A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善ならびに食生活の質の向上に関する研究
課題番号
H25-長寿-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 河相 安彦(日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座)
  • 弘中 祥司(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔衛生学分野 )
  • 田中 弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科)
  • 渡邊 裕(国立長寿医療研究センター口腔医療開発室)
  • 恒石美登里(社団法人日本歯科医師会・日本歯科総合研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
21,392,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の要介護高齢者を対象として行われる口腔機能向上サービスの課題を、先行研究結果から、課題1:評価法の整備が不十分、課題2:効果的なプログラム提示が不十分、の2点を把握した。加齢に伴い生じる身体機能低下として「虚弱」の概念が新たに取り上げられ、その主要因として低栄養を背景とするサルコペニアが注目され、さらに認知症も口腔機能低下因子として指摘されている。我々は以上の概念を取り入れた「包括的口腔機能低下モデル」を考案した。これは口腔機能低下を、高齢者の日常生活、運動器等も包含した包括的な視点(生活環境、老化、疾患など)からとらえ、「食生活の自立の崩れ」に至る様々な問題が顕在化する前段階からのモデルである。本モデルを基軸として、前述した2課題に対する解決策を提示することを目的に、虚弱(フレイル)から要支援・介護高齢者口腔に関する評価法の考案(研究1)、複合プログラム(口腔・栄養・運動)の効果的な提供方法に関する研究(研究2)を実施した。
研究方法
研究1については、地域在住高齢者(要支援・要介護高齢者含む)、施設入所高齢者、約3500人(地域在住高齢者約2000人、要介護高齢者約1500人)を対象に、基礎情報、身体計測(体組成測定:BIA法含む)、体力測定、認知機能、栄養状態、食事環境、口腔機能等について調査を行った。一方、研究2については、介護予防のための運動、口腔、栄養の複合プログラムの考案および効果検証を目的として行った。①二次予防対象者124名を対象に、口腔機能向上、栄養改善,運動器の機能向上の各サービス(単独群)およびそれらサービスの複合(複合群)の7群に無作為に割付け検討を行った。複合プログラムの介入により改善を認めた項目は、口腔内細菌数、オーラルディアドコキネシス、シニア向け食欲調査票、体重、BMI、体脂肪率、栄養摂取量(たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維総量、ビタミンB6、ビタミンC、カルシウム、鉄、亜鉛、セレン)、日本語版便秘評価尺度であった。②通所介護事業所利用高齢者124名を対象とし、無作為に単独・複合群に割付け検討を行った。
結果と考察
筋肉量が筋力に影響を与え、筋力が運動能力に影響を与え、運動能力が生活機能に影響を与える過程が明らかになった。9、要介護高齢者(地域単位)の約半数に誤嚥が疑われ、さらにその1/4(全体の約1割)に不顕性誤嚥が疑われた。10、要介護高齢者の誤嚥のリスク因子として、口唇閉鎖不良、舌運動不良、リンシングの不良、不顕性誤嚥のリスク因子として、認知症重症度が示唆された。11、AD高齢者では、低栄養のリスク因子は栄養状態によって異なり、ADL低下、認知症重度化、臼歯部咬合不全、嚥下機能低下が確認された。12、FASTに対応した口腔に関するセルフケア機能や摂食・嚥下機能の推移について試案を作成し、妥当性の検討を今後行う必要がある。13、CNAQ-J、SNAQ-Jは日本人高齢者の食欲を評価する調査票として採用できると判断された。14、咀嚼機能虚弱モデル(FOMA分類)は、咀嚼困難感顕在化前の咀嚼機能低下を評価できた。研究2については、単独群では有意に悪化した項目が認められたが、2つ以上のプログラムを提供した複合群には有意な低下が認められた項目はなかった。群間の比較で有意な違いが認められたのは、SF-8™、WHO-5、食品摂取の多様性スコア、RSSTであった。また、介護度、Barthel Index、Vitality Index、SF-8、WHO-5に関して、単独群よりも複合サービス群の方が維持・改善効果が認められた。
結論
以上の結果から、年齢、介護度、性差などに注目し、口腔関連の自己評価と客観評価の整合性について確認され、また介入調査によって、介護予防のための複合プログラムの有効性が示唆された

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201310016Z