加齢による運動器への影響に関する研究-サルコペニアに関する包括的検討-

文献情報

文献番号
201310015A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢による運動器への影響に関する研究-サルコペニアに関する包括的検討-
課題番号
H25-長寿-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 細井 孝之(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 下方 浩史(名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科)
  • 橋本 有弘(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 江頭 正人(東京大学医学部附属病院)
  • 重本 和宏(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 金 憲経(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 村木 重之(東京大学大学院医学系研究科)
  • 宮地 元彦(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 石橋 英明(医療法人一心会 伊奈病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
18,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サルコペニア(以下SP)の概念は、筋量と筋力の低下で身体障害をもたらす症候群と定義され、歩行速度と筋量を診断や介入の基準とするなど、最近欧米で大きく変化した。これに対応して我が国でも日本人データでSPの運動器への影響を明らかにすることが求められている。そこで、これまでの研究を発展させ、SPの現状と機序を研究し、予防、診断、治療の包括的検証を実施し、マニュアルを作成する。
研究方法
診断の研究では、下腿最大周囲長により四肢筋量指数推定、四肢筋量指数の代替指標となりうるかを横断検討、バイオマーカーの生物学的意義と評価的評価の根拠を定めるためにマウス加齢性筋萎縮の解析とエネルギー代謝能の加齢変化を解析、骨格筋における液性因子または液性因子受容体を網羅的に検討、通院高齢患者のうち初回と1年後調査が可能であった64名を対象にSP頻度、各種測定値の変化量同士の関連について調査、伊奈町において無作為抽出の一般中高年者で運動機能と調査票の調査を行った。予防の研究では、地域住民対象にSPと6年後までのADL低下リスクについて検討、東京和歌山の3,040人コホートの蓄積データでSP実態を解明、地域在住高齢者10,331名でSP有症率と手段的ADLとの関連を検討、地域在住高齢者1,778人の中から、「体脂肪率の上昇+骨格筋量の減少」、「体脂肪率の上昇+筋力の衰え」、「体脂肪率の上昇+歩行速度の低下」をsarcopenic obesity と操作的に定義。治療の研究では、先行研究で筋量も増加させてSPも改善させている可能性が示唆されたアレンドロネートについてRCT計画、ビタミンKがガンマカルボキシラーゼ(GGCX)の補酵素として働く際の作用を検討、不死化ヒト筋細胞を用いて、骨粗鬆症治療薬アレンドロネートの、ヒト筋細胞に対する直接作用を解析。
マニュアルに関して作成法を検討した。
結果と考察
診断の研究では、40~89歳535名の参加者で下腿最大周囲長は四肢筋量指数と男で高相関、女で中相関し、下腿最大周囲長によるSP推定の感度・特異度は男0.91と0.90、女0.82と0.71、カットオフ値は男34.1cm、女32.8cmであった。詳細は知財関係でまだ公表することができない.単一筋線維レベル解析結果を報告。交感神経β受容体刺激により、骨格筋においてVDRの発現が上昇することを明らかにした。また、ビタミンD刺激によりGDNFが上昇することが明らかになった。SP頻度は初回57%、1年後46%、初回SPで1年後に非SP頻度は18%、筋量の減少と体重, BMI, 握力の低下、老年症候群増加に相関。ロコモのチェック法や指標は陽性率が異なるもののすべて運動機能との関連が高く、EWGSOPアルゴリズムによるSP判定率は8.4%と低かった。予防の研究では、血中遊離テストステロンレベルはSP発症予測に有用でAR-CAGリピート数が少ない場合と比して同リピート数が多いと血中の遊離テストステロンレベルは筋量をより反映した。筋力、筋量とも50代から60代で急激に低下、筋力は80歳以上で若年者の半分まで低下も、筋量は70%程度にとどまり、筋力低下は筋量のみで説明できなかった。また、下肢筋力は運動機能や、QOL、要介護のいずれとも関連した 。地域在住高齢者のSPの有症率は11.6%で、女が男より高く、高齢になるほど高かった。SPは手段的ADL低下と有意に関連。sarcopenic obesity有症率は男性9.9%、女性13.5%と女性で高かった。男性sarcopenic obesity高齢者は、血清アルブミン値は低く、転倒率は有意に高かった。女性sarcopenic obesity高齢者は、高血圧、高脂血症、膝OA、転倒率が有意に高い特徴を示した。治療の研究では、EWGSOPアルゴリズムでSP合併とされた骨粗鬆症患者にアレンドロネートとアルファカルシドール併用あるいはアルファカルシドールの無作為比較対照試験を開始。GGCX遺伝子の機能的一塩基多型によって異なる可能性が示唆。アレンドロネートは、ヒト未分化筋細胞の増殖、遊走および筋分化を阻害した。しかし、最終分化した筋管細胞の生存および分化形質の発現には、影響を与えなかった。マニュアル作成は分担テーマ決定し進行中。
結論
SPの診断予防治療に関する多領域研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201310015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
24,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,337,329円
人件費・謝金 6,150,751円
旅費 1,343,970円
その他 3,629,983円
間接経費 5,538,000円
合計 24,000,033円

備考

備考
利息が生じたため。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-