介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究

文献情報

文献番号
201310014A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究
課題番号
H25-長寿-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾島  俊之(浜松医科大学医学部)
  • 羽田  明(千葉大学大学院環境医学講座)
  • 小坂 健(東北大学大学院歯学研究科)
  • 竹田 徳則(星城大学リハビリテーション学部)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所:社会保障応用分析研究部)
  • 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院・公共経営研究科・経済研究科)
  • 相田 潤(東北大学大学院歯学研究科)
  • 藤野 善久(産業医科大学・医学部)
  • 白井 こころ(琉球大学・法文学部)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院・医学系研究科)
  • 等々力 英美(琉球大学大学院医学研究科)
  • 斉藤 雅茂(日本福祉大学・社会福祉学部)
  • 山本  龍生(神奈川歯科大学・社会歯科学系)
  • 坪谷 透(東北大学大学院歯学研究科)
  • 山谷 麻由美(吉原 麻由美)(長崎県立大学看護栄養学部)
  • 菖蒲川 由郷(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 三澤 仁平(立教大学・社会学部)
  • 山田 実(京都大学大学院医学研究科)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所:国際関係部)
  • 鄭 丞媛(ジョン スンウォン)(独立行政法人国立長寿医療研究センター・老年社会科学研究部)
  • 鈴木 孝太(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 鈴木 佳代(日本福祉大学・健康社会研究センター)
  • 伊藤 美智予(日本福祉大学・健康社会研究センター)
  • 引地 博之(日本福祉大学・健康社会研究センター)
  • 岡田 栄作(日本福祉大学・健康社会研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
17,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,介護保険者が地域別の健康状態や社会資源等をアセスメントし根拠に基づくニーズ把握や課題設定をして,戦略的な地域づくりによる介護予防を推進し,その効果を検証できるツールやシステム開発と機能拡充を図ることである.
研究方法
3年間で,1)大規模調査の実施,2)既存データを用いた科学的な根拠づくり,3)Good Practice収集,4)モニタリングと事業効果の評価などを行い,5)政策マネジメント支援ツールやシステムの機能強化を図ることとし,初(H25)年度には,A.大規模調査の実施と地域診断・地域格差と関連要要因の研究,B.フィールド研究,C.要介護リスク等と関連する要因の研究の3つに大別できる研究に取り組んだ.
結果と考察
A.大規模調査の実施と地域診断・地域格差と関連要因の検討:JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトの2013調査として,全国12道県25保険者30市町村の協力を得て195,290票を配布し138,293票を回収した(回収率70.8%).また新たにインターネット上で閲覧できる地域診断書などを作成し公開した.さらに既存の2010-11年度調査データを用いて地域間格差などを分析した結果,例えばIADL低下者割合は市区町村間で11.6%〜30.7%と約3倍の差,残存歯が0本の無歯顎者の義歯不使用率は市町村間で22.9%~46.7%のばらつきが存在した。年齢構成などを考慮してもなお一部の健康指標で有意な地域差が認められ,生活習慣や社会経済状態,社会的サポート,ソーシャル・キャピタル関連指標,歴史的要因などとの関連が示された.B.フィールド研究:地域診断結果を調査フィールドである市町村や住民などにフィードバックした結果,課題意識が共有されるなどの効果が示唆された.Good Practiceの候補となり得る「憩いのサロン」「健康交流の家」「見守りボランティア」「健康都市づくり」などに取り組む市町村との共同研究を行った結果,それらに介護予防効果がある可能性が示唆された.C.要介護リスク等と関連する要因の研究:横断分析では,運動をしていない者と比較してスポーツ組織で運動している者では転倒歴のオッズ比が0.66倍(0.47-0.94)少ないのに対し,個人で運動している者では有意差を認めなかったなど,スポーツ組織参加には運動生理学的な経路とは異なる影響があることが示唆された.加えて住宅の種類が、公営・公団・公社の賃貸住宅である者では、民間の賃貸住宅である者と比べ,多変量調整オッズ比でうつ傾向 0.882,転倒 0.871など有意にリスクが低かった。コホート研究では,社会参加は死亡や要介護リスクを抑制することを示唆する結果が得られ,より厳密な因果推論のための手法Propensity score(PS)を用いて検証しても社会参加なし群では,1.33(95%信頼区間:1.17-1.52)倍死亡または要介護発生が多く,社会的サポート提供ありの者で認知症発症が少なかった.さらに最長職が販売・サービス業、技能・労務職、農林・漁業職などであった者では、専門・技術職の者に比較して有意に口腔の健康状態と歯科保健行動が不良であったり,子供の頃の経済的豊かさが高齢期のIADL低下と関連を示すなど,ライフコースも重要であることを示す結果も得られた.パネルデータ分析でcause of causeとして要介護リスクであると報告されている「うつ」のリスクを検討した結果,例えば男性で「友人と頻繁に会うこと」(OR0.66:0.47-0.91)「趣味あり(0.59:0.40-0.86),さらに社会組織で役割を持っていることもうつ発症確率と関連していた.
結論
平成25年度には,A.大規模調査を実施し地域診断システムの機能を拡充し,地域間格差の実態と関連要因を明らかにした.B.フィールド研究では,地域診断結果の市町村・住民へのフィードバックやまちづくり型介護予防のGood Practiceを集め効果を検証できた.C.要介護リスク等と関連する要因の研究では,社会参加やライフコース,公営住宅の重要性や要介護リスクであるうつのリスク要因などを明らかにできた.

公開日・更新日

公開日
2014-08-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201310014Z