文献情報
文献番号
201310007A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防プログラム開発に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 自立支援開発研究部)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
- 下方 浩史(名古屋学芸大学大学院)
- 伊藤 健吾(国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター)
- 朴 眩泰(パク ヒョンテ)(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
- 久保田 進子(名古屋芸術大学音楽学部音楽文化創造学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)を有する高齢者は、認知機能が正常な高齢者と比較して認知症を発症する危険性が高いが、正常の機能へ回復する例も多く、MCI高齢者を早期に発見し、認知機能の向上に効果的な介護予防プログラムの提供が求められる。認知症予防を目的とした介入方法としては、とくに有酸素運動の実施とアルツハイマー病発症予防との関連について多くの知見が得られている。MCI高齢者に対する運動の効果を検証したランダム化比較試験の結果もいくつか報告され、限定的ではあるが認知機能に対する効果を認めている。運動とともに認知トレーニングは認知機能の向上に有益なプログラムであるが、学習課題やゲーム機を利用したプログラムが、すべての高齢者になじむとは考えにくい。また、これらの認知トレーニングは、課題が単調であり継続した取り組みが難しいところに問題がある。トレーニング後にも趣味として継続できる学習プログラムの開発が必要と考えられる。
本研究の目的は、介護予防のための積極的な取り組みの必要性が高いMCIを有する高齢者を早期に発見するための因子の検討、および介入効果指標の検討を一つの研究課題とした。もう一つの課題は、MCI高齢者を対象として、運動、学習、運動と学習の複合プログラムを実施し、それらの効果を比較することで、より効果的な認知機能低下予防のためのプログラムを明らかにすることとした。
本研究の目的は、介護予防のための積極的な取り組みの必要性が高いMCIを有する高齢者を早期に発見するための因子の検討、および介入効果指標の検討を一つの研究課題とした。もう一つの課題は、MCI高齢者を対象として、運動、学習、運動と学習の複合プログラムを実施し、それらの効果を比較することで、より効果的な認知機能低下予防のためのプログラムを明らかにすることとした。
研究方法
1)軽度認知障害のスクリーニングおよび介入効果指標の探索
国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)第1次調査から第6次調査までに参加した65歳以上の地域在住高齢者1,894人(男性915人、女性979人)を対象として、軽度認知機能障害の発症促進因子、抑制因子を運動、栄養、体格などを中心に網羅的に検討した。
効果指標の検討としては、高齢者のMRI画像375例の脳室周囲高信号域と部皮質下白質病変を視覚的に分類し、運動機能、認知機能の関連性に関して検討した。また、介入研究に参加したMCI高齢者20名を対象として、介入前後の脳活性の変化を非侵襲的かつ明確に測定・検証するため、NIRSにより得られた時系列データのノイズ除外法や、一般化線形モデルやランダムフィールド理論を用いた解析による評価指標の探索を実施した。
2)介護予防プログラムの効果判定
平成23年度に実施した5,104名のデータベースからMCI高齢者を抽出した。同意が得られ全ての検査を受けた者のなかから運動を実施するにあたり医学的問題を抱えているものは除外し、最終的に308名の対象者がランダム化比較試験に参加した。
介入の前後にあたる介入前評価 (事前評価)と介入開始から5か月後経過した時点での評価(中間評価:一部の調査項目のみ実施)を行った。認知機能評価は全般的な認知機能評価としてMini Mental State examination (MMSE)を用い、身体活動の評価は、歩数計を用いて対象者の身体活動を計測した。運動群の介入は、週1回 (1回90分間) の教室を計20回実施した。介入の内容は、ストレッチ・筋力トレーニングを含む教本に従った体操、有酸素運動、記憶や干渉課題などの認知課題を組み合わせた運動、行動変容技法による運動の習慣化とした。対照群には、認知症に関係するテーマ以外の健康講座(60分間)を中間評価までに1回実施した。
国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)第1次調査から第6次調査までに参加した65歳以上の地域在住高齢者1,894人(男性915人、女性979人)を対象として、軽度認知機能障害の発症促進因子、抑制因子を運動、栄養、体格などを中心に網羅的に検討した。
効果指標の検討としては、高齢者のMRI画像375例の脳室周囲高信号域と部皮質下白質病変を視覚的に分類し、運動機能、認知機能の関連性に関して検討した。また、介入研究に参加したMCI高齢者20名を対象として、介入前後の脳活性の変化を非侵襲的かつ明確に測定・検証するため、NIRSにより得られた時系列データのノイズ除外法や、一般化線形モデルやランダムフィールド理論を用いた解析による評価指標の探索を実施した。
2)介護予防プログラムの効果判定
平成23年度に実施した5,104名のデータベースからMCI高齢者を抽出した。同意が得られ全ての検査を受けた者のなかから運動を実施するにあたり医学的問題を抱えているものは除外し、最終的に308名の対象者がランダム化比較試験に参加した。
介入の前後にあたる介入前評価 (事前評価)と介入開始から5か月後経過した時点での評価(中間評価:一部の調査項目のみ実施)を行った。認知機能評価は全般的な認知機能評価としてMini Mental State examination (MMSE)を用い、身体活動の評価は、歩数計を用いて対象者の身体活動を計測した。運動群の介入は、週1回 (1回90分間) の教室を計20回実施した。介入の内容は、ストレッチ・筋力トレーニングを含む教本に従った体操、有酸素運動、記憶や干渉課題などの認知課題を組み合わせた運動、行動変容技法による運動の習慣化とした。対照群には、認知症に関係するテーマ以外の健康講座(60分間)を中間評価までに1回実施した。
結果と考察
MCIスクリーニングのためには、教育歴、鬱、体力検査が認知機能低下と関連したため、これらの側面をスクリーニング指標に含める必要があると考えられた。介入効果指標の検討では、MRIによって観察された白質病変と認知機能、運動機能、脳萎縮との関連が認められ、介入効果を検討するにあたって、白質病変を調整因子として用いる必要性が示唆された。また、NIRSを用いた負荷試験によって介入効果を把握できる可能性が示された。
運動による介入効果については、中間結果ではあるもののMMSEにおいて有意な運動介入効果が見られた(事前評価:運動群26.7±1.8, 対照群26.9±1.8, 中間評価:運動群26.5±2.2, 対照群25.1±2.6, p < 0.001)。また、身体活動量向上において運動介入の効果を認めた。
運動による介入効果については、中間結果ではあるもののMMSEにおいて有意な運動介入効果が見られた(事前評価:運動群26.7±1.8, 対照群26.9±1.8, 中間評価:運動群26.5±2.2, 対照群25.1±2.6, p < 0.001)。また、身体活動量向上において運動介入の効果を認めた。
結論
認知症を予防するための効果的なスクリーニング方法、事前事後の評価方法が明確となり、運動介入の認知機能に対する効果が示された。今後は大規模スクリーニング調査を実施し、地域からMCI高齢者を抽出して、運動と学習プログラムの効果検証と比較検討を行なっていく。
公開日・更新日
公開日
2014-08-26
更新日
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